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東京に住んでいた私は、修学旅行で初めて京都を訪れたときに、東京とは味の成分が違うという噂のカップラーメンや、関西地区だけに売っているという缶ジュース、ポッキーなどの定番お菓子の地方限定味というものをたくさん買いました。北海道なら夕張メロンや明太子味のお菓子、大阪ならたこ焼き味といった、あの、地方色を出したお菓子です。
そんな限定お菓子、遅ればせながらトルコでもブームが始まりました。日本のように地方ごとで販売が限定されているわけではないですが、この半年から一年で、白チーズとオリーブオイルが中心の「地中海風」、トマトと唐辛子が主体の「東南トルコ風」、黄チーズやトウモロコシの「黒海風」、おやつの定番「トルコ胡麻パン風」などの「トルコオリジナルお菓子」の種類は格段に増えました。
この「トルコ限定お菓子ブーム」、最初に、反アメリカ主義の人(イスラームと反アメリカ主義は決して同一のものではありませんが、そういう解釈をしている人がトルコ国内にも多いことも事実です)をターゲットに、イスラーム政党のバックアップするお菓子会社が販売した「コーラ・トゥルカ」がブームに火をつけました。アメリカ製品であるコカ・コーラやペプシ・コーラなどを口にしたくない人のために、もともとトルコにはクリスタル・コーラという製品がありましたが、このコーラ・トゥルカは、おしゃれなデザインとモダンなコマーシャルで既存の「代用コーラ」のイメージを一新しました。アメリカから有名俳優を起用し、その商品を飲んだ人がみなトルコ語をしゃべりトルコ人化してゆく、というコマーシャルがとても話題になり、現在のバージョンでは人気の外国人サッカー選手、ヴァン・ホイドゥンクがトルコ人化する、という台本のものになっています。
このコマーシャルシリーズのヒットを後追いするように、「ドリトス ア・ラ・トゥルカ」というトルティーヤチップスのトルコ限定バージョンのコマーシャルに、トルコで一番人気のコメディアンが出演。この商品はすでに発売されていましたが、このコマーシャルによって生産が追いつかなくなってコマーシャルを一時放映中止ということにまでなりました。
そんなトルコオリジナル味のお菓子ブームと同時に、このところ街中で非常に目に付くのが、「シミット・サライ」というファーストフード店です。直訳すると「胡麻パンの城」。このシミットと呼ばれる胡麻パンは、トルコに旅行に来たことのある方なら誰でも目にしたことのある、胡麻のびっしり付いたドーナツ状の固いパンのことです。頭の上に載せた盆に山と積んで流し売りをするのが普通で、日本円にして30円ほどという値段の安さも魅力です。やはり流し売りをしている熱い紅茶、チャイと一緒にシミット、というのはトルコの庶民にとって欠かせないおやつですが、このメニューを中心にすえたファーストフード店が「シミット・サライ」というわけです。
私は個人的には、「道端に座ってとか家に持って帰って、または歩きながらじゃなく、お店ですわって食べるシミットなんて、流行するものか」と思っていたのですが、ふたを開けてみると大繁盛。イスタンブルの大通りに何軒も支店がオープンしたのです。果ては、「財布が寂しいときのお友達」であったはずのシミットを提供する「シミット・サライ」は、たった一年で、イスタンブルの中心にあるタクシム広場に6階建てのビルを持つまでに成長しました。アメリカ文化の象徴であるとされるマクドナルドやバーガーキング、ケンタッキーフライドチキンなどのファーストフード店は、このシミット・サライの攻勢にすっかり身を小さくしています。
外資系のファーストフード店がテロの標的になる可能性が高いという点を除いても、シミット・サライの伸びには目を見張るものがあります。ここ最近のトルコのテロは、トルコ軍のイラク連合軍への参加やEU加盟に向けての法改正を受けて、このような外資系企業を標的にしているものが増えていると見られています。知人や家族をテロで失った経験を持つ人も多いトルコの人々は、テロという手段に激しい憤りを感じていますが、アメリカのやり方に疑問を持っている人が多いのもまた事実です。またEU加盟を悲願としてきたあまり、極端な西欧崇拝主義の人も多いトルコの中で、その「西欧にあこがれる」心がどこかで限界に来てしまったのではないかと感じます。心の底にあるアメリカへのそんな思い、そして「ヨーロッパ、ヨーロッパって言うけれど、俺たちだって結構捨てたもんじゃないぞ」という気持ちが、人々に「トルコオリジナルの商品」を手に取らせているのかもしれません。
画像上:白チーズとオリーブオイルの“地中海味”ポテトチップ
画像下:コマーシャルによって生産が追いつかなくなった、黄チーズとトウモロコシのポテトチップ「ドリトス ア・ラ・トゥルカ」
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