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パネピスティミウ通りにある、アテネ大学の記念講堂の前には、たくさんの人達が集まっていました。今日は、アテネ大学哲学科の卒業式。それぞれがフォーマルな格好で、自分達の人生の一ページを刻む時を待っていました。天気は快晴、雲ひとつ無い青い空は、卒業生の新しい旅立ちを飾るのに絶好の日でした。
哲学科の学生は他の学科に比べると生徒の数が多く、この日の卒業式は、午前の部と午後の部に分かれ、私は午後の部に参加することになりました。集合時間の12時には、玄関の前に人がたくさん集まっていて、『まだ、午前の部が終わってないのだろうか』と思って、中に入るのを躊躇していたのですが、友人ニコスが隣りを通って中に入ろうとしていたのを見つけ、彼の後について中に入りました。中に入っても、誰も卒業生かどうかをチェックする事もなく、講堂の奥にガウンの置いてある部屋があり、そこでガウンと帽子を選びました。
その部屋で、久しぶりに友人ヨルゴスに会い、『とうとう卒業だね』と簡単な会話をしました。彼は、手に何か茶色いファイルを持っていて、それは何と尋ねると、『今日は、僕がみんなの前で卒業の宣誓を読むんだよ。僕が今日の卒業生の中で一番の成績だったみたい』と自信に満ちた顔で話してくれました。彼は勉強好きで、真面目で、良い成績を取っていたので、当然の結果だったかも知れません。彼はこの後大学院へ進む予定だと話してくれました。
ガウンに着替えた私は、セレモニー開始までふらふら講堂の中を見学していました。さすがに、ギリシアの学問のトップに位置するアテネ大学の記念講堂なので、プラトン、アリストテレスの胸像だけでなく、ギリシア正教大司教や初代大統領カポディストリアの肖像画なども飾ってありました。ギリシアの偉大な歴史のページに残る人達に見守られ、今日は緊張するかな、と思っていたのですが、周りの学生達の緊張がはっきりと読み取れる顔と行動と、スムーズに行かない進行が、非常に私をリラックスさせてくれました。セレモニーの10分前、いくつかの説明がありました。『入場して席につく時は、しっかり列を作って、右に座る人、左に座る人、順順に歩いて下さい。それと、式の後集合写真をとりますが、決して帽子を上に投げたりしないで下さい。私達は文明人なので、他国の人の真似などしないで下さい』との注意。『文明人』という言葉に、思わず笑ってしまいました。
12時30分、入場の時間となった。学生は、『あれ、もう入場するの?』と戸惑いながらも、とりあえず前の人についていき、ばらばらとそれぞれの席に着きました。そして、ざわざわした講堂の中で式が始まりました。最初に卒業の宣誓をヨルゴスが読み、学生は全員起立し、手を挙げ宣誓をしました。その後、アテネ大学の会長と副学長の話を聞き、卒業証書授与となりました。卒業証書はアルファベット順で受け渡される事になりました。その時、大きな不安が頭の中に浮かびました。『もし、名前を呼ばれなかったらどうしよう…』。卒業証書をもらった人は、隣りの部屋で集合写真をとるため移動しました。一人、二人、と名前が呼ばれていき、もうすぐ自分の苗字の『O』だ。
不安は必要ありませんでした。司会の人は、私の方をちらりと見て、名前を読み上げました。大きな安堵感から、自然に笑顔となり、卒業証書をもらい、会長と副学長と握手をしました。『おめでとう、よくがんばったね』という言葉は、5年間のギリシア学生生活の最後を締めくくるのに、最高の言葉でした。
全員の名前が呼ばれ、集合写真をとり終えると、それぞれが家族や友人と言葉を交わしたり、写真を撮ったりしていました。人生の一つの重要な駅に停まった私達は、これからの未来へまた運転を再開することになります。講堂を出ると、まぶしいぐらいの太陽が私達を迎えてくれました。新しい未来へと再出発です。
画像上:パネピスティミウ通りの、アテネ大学記念講堂
画像中:副学長の話を聞く卒業生達
画像下:卒業生の集合写真
【短信】明日の便で日本に帰ることになりました。これが、最後の原稿になりますが、一年間、本当にありがとうございした。(2/16)
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