■音楽事情 2003.5.19 update

先日テレビでギリシアの音楽大賞『アリオン』が放映されました。このアリオンという音楽祭は昨年から始まったばかりで、第1回目は、受賞者が会場に来ていなかったり、マイクのトラブル、司会進行の段取りが悪かったりして、他の風刺番組で失敗をことごとく笑いの種とされてしまいました。しかし今年は2回目!段取りもよくなり、受賞者の参加率も昨年より数段高くなりました。しかし、ギリシアの生放送です。もちろん問題が全くなくなることはありません。みんな人間ですから…

さて、内容の方ですが、1つの問題として、ギリシアの音楽はカテゴリーで分けるのが非常に難しいということです。その理由は、ギリシアで活躍するほとんどの歌手は、ポップスと、伝統的なギリシア音楽(日本で言う演歌のようなもの)にまたがるような歌を歌い、どちらのカテゴリーでも能力を発揮しているからです。出演者の一人がカテゴリーの作り方について『今回のカテゴリーはアメリカの音楽祭のものを使っているけれども、次回からはアメリカの真似をするのはやめて、私たち独自のものを作りたい』と強調していました。つまりギリシアの音楽事情というのは世界のそれとは違うという事です。ギリシアは世界の事情には流されずに、ギリシアの音楽を中心に活動しているということなのでしょう。

今回の番組は6時間半にも及ぶ長い放送となり、全てが終わったのが夜中の2時半でした。その中で20部門ぐらいの賞の発表と、歌手のステージ、司会者によるダンスステージなどなど、内容も充実していました。全てについて言及するのは大変なので、幾人かの歌手について話します。

今回の主人公は何といっても全部で6部門の賞を取ったアンドニス・レモスでしょう。レモスは私の好きな歌手の一人で、彼のCDはいくつか買いました。彼の特徴は、なんと言っても歌唱力があり、大人の恋の歌を歌う歌手です。昨年のアリオンで歌った『エラ ナ メ テリオーシス(僕を終わらせに来てくれ)(直訳)』は、今だによく町やテレビで耳にします。彼の歌は、聞きなれない日本人にはただの演歌のように聞こえるかもしれませんが、これがギリシアの最高の音楽形態なのです!レモスは今年も会場で歌を歌いましたが、やっぱりとてもすばらしかったです。彼は一人で歌うだけではなく、世界で活躍したギリシア人歌手、ナナ・ムスクーリと一緒に歌いました。

このナナ・ムスクーリの出演は1つの目玉で、彼女の音楽活動についての経歴のビデオや、ギリシア文化大臣エヴァンゲロス・ヴェニゼロスによる功労賞授与式、そして、レモスとサキス・ルヴァス(後述)と3人でのステージがありました。会場に来ていたギリシア人が総立ちで一緒に歌っていた姿を見ると、ナナ・ムスクーリのギリシアにおける人気の深さがよくわかりました。

さて、このナナ・ムスクーリと一緒に歌ったもう一人の歌手、サキス・ルヴァスは、ギリシアのポップミュージックの最前線に位置し、彼の音楽は“演歌”に別れを告げています。歌って、踊って、肉体美を見せる、「セクシーシンガー」ですが、私は彼の事を『ギリシアのトシちゃん』というふうに呼んでいます。本当に10年前のトシちゃんという感じで、いつも真っ白い歯をキラリとさせています。

他の目立った歌手といえば、キプロス出身の男性歌手、ミハリス・ハジヤニスでしょう。彼は、4部門で受賞しました。彼の歌はバラードが中心で、独特の優しい響きを持つ声が、ギリシア人の心をぐらぐら揺さぶるのでしょう。『クリフト・フィリ(隠れたキス)』というアルバムに入っている曲で賞を取りましたが、今後も活躍が期待されるギリシアのホープです。

彼のほかにもギリシアで活躍するキプロス人歌手は何人かいます。その中でもアンナ・ ヴィシは女性歌手の頂点に位置しています。彼女の張りのある声と、爽快な音楽は、たくさんのファンを惹き付けていて、昨年のアリオンではいくつも受賞しました。今年は1部門だけの受賞となってしまいましたが、『ターシス アフトクトニーアス(自殺の傾向)』は、ギリシアの音楽界に新しい形を見せているのではないかと思います。

他の歌手として、デスピナ・ヴァンディ(今年のベスト女性歌手に選ばれた)、ナターサ・セオゾリーズ(1部門で受賞)、エレフセリア・アルヴァニターキや、ヨルゴス・チャリーキス(昨年の新人賞)、ヤニス・プルータルホスなど、ギリシアの音楽は他国に負けない盛り上がりを見せています。この、ニューミュージックと“演歌”が見事にミックスしたギリシア音楽が、いつか日本にも届くようになればいいですね。

画像上:大通りに面した場所に掲出されている、アンドニス・レモスのCDの屋外広告。
画像下:アンナ・ヴィシのコンサート会場。彼女のコンサートは、去年のクリスマスからずっと続いています。


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