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日本人なら誰でも気付くギリシャの特徴の一つが、のら猫の多さである。彼らはたいていまるまると太っており、誰かが積極的にえさを与えていることがわかる。のら猫の存在をいまいましく思っている人はいるだろうけれど、私の見るところ、都会や村に多少ののら猫が住み着いているのは、ごく自然なこととみなされているようだ。だから、保健所がのら猫を捕獲して安楽死させるということは今のところ行われていない。「のら猫にえさをやるな」と書かれた張り紙を見たことがない。食堂の屋外テーブルに座った客が猫に残飯を与えるのも許容されている。
観光地、例えばエーゲ海の島々には、無数の猫がいて、風景の一部をなしている。彼らが飼い猫なのかのら猫なのかはあまりはっきりしない。腹が減るとえさを食べに飼い主のところに戻るというタイプの飼い方をされている猫がかなりいると思われる。私の家の近所にも、私が勝手に「猫ハウス」と呼んでいる一軒家があって、家人が庭に出す餌を目当てに不特定多数の猫たちが出たり入ったりしている。日本でこういうことをすると地域の大問題になると思うが、どうも不問にされているようだ。
のら猫同様に、のら犬も多い。たいていは締まりなく道端に寝そべっているだけで害はないけれど、そうでないこともある。私はもともと犬嫌いではないが、数年前にがぶりとやられたことがあり、それ以来、犬に走り寄られるとちょっと怖い。それにしても、大の男が犬にかまれるなんて、何ともみっともない話である。夜ひとりで公園を歩いている時に、2匹の犬が突然走り寄ってきて、私がその1匹に気を取られているすきに、もう1匹が私の太ももに歯形をつけた。翌日病院に行って相談すると、ギリシャには狂犬病はないから安心だが、とりあえず一発やっとくか、という感じで、おしりに注射を打たれた。今私が住んでいる地域にも、のら犬は結構いる。バウバウ吠えながら住宅街を猛スピードで駆け抜ける野犬の群れに出会うこともある。
アテネ五輪組織委員会が野犬収容所を作るために10ヘクタールの松林を農業省に割り当てたという記事を新聞で読んだ。10ヘクタールというと結構広そうだが、この松林に収容できるのはせいぜい1000匹だそうだ。単純計算で1匹に100平方mが割り当てられることになり、確かにそのくらいは必要なのかもしれないけれど、アテネだけで2万匹ののら犬がいるという話だから、アテネからのら犬を一掃するつもりなら焼け石に水である。委員会としては、オリンピック開催地としてみっともなくない程度に、選手・観光客たちの目に付く場所からのら犬たちを追い払おうという意図のようだ。
ギリシャののら犬で印象的なのは、彼らのあまりに無防備な寝相である。人通りの激しい繁華な通りの端で、手足としっぽを投げ出して熟睡している。仰向けになって腹部をさらしているやつさえいる。これは、身の安全を信じきった飼い犬の姿である。彼らはアテネの市民たちによって飼われており、それは今まで大きな問題になってこなかった。しかし、オリンピックがこの町にやってくることで彼らは準「飼い犬」の地位を追われ、駆除される対象にまでおちぶれようとしている。
委員会の計画が意図通り進むかどうかはまだわからないし、オリンピック後も野犬収容所の運営を続ける計画なのかどうかもわからない。しかし、アテネの景観を構成する重要な一要素が変化しつつある、とは言えると思う。
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