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先月からマンションの管理人さんが代わった。と言っても、専業の人が常駐しているわけではなく、毎年1月に住人の中から選ぶ。居住者集会に参加したことがないので、どういう風に選んでいるのかわからない。報酬があるのかどうかもわからないが、けっこう面倒な役回りである。
住人と管理人さんの最も基本的な接点は、毎月の共益費の受け渡しである。マンションによって事情は違うだろうが、私のところではこんな風に進む。まず、月初めに管理人さんは、マンションの管理会社が戸別に計算した共益費の一覧表をマンションの入り口近くに貼り出し、共益費の納入日を告知する。そして、共益費の通知を各部屋のドアの下に差し込んで回る。ギリシャ人は銀行振込をあまり信用していないので、こんな風にやっているところが今でも一般的じゃないかと思う。
人にはそれぞれ都合もあるので、2日間から3日間ぐらいは共益費の支払いを受け付けなくてはならない。これらの日の夜、管理人さんは2時間ぐらいどこにも出かけられないし、ぱらぱらと人が来るので、落ち着いて新聞も読めない。さらには、指定日に払いに来ない連中が必ずいるので、数日間も宙ぶらりんの状態に置かれる。もし私が管理人に選ばれたら、この拘束感に加えて、部屋を毎日きれいにしておかなくてはいけないことに相当な重圧を感じることだろう。
今回、管理人さんに選ばれたのは、私の隣に住む一人暮らしの中年女性である。彼女がこの件をどう感じているかはよくわからない。しかし、仕方なくやっているという感じではない。これまでの管理人さんも皆そうだった。ギリシャでは人を招いたり招かれたりする機会が多いので、常に室内は清潔に保たれていて来客にも慣れている、ということなのかもしれない。
管理人さんの仕事は他にもいろいろある。マンションの集中暖房が壊れたら業者を呼んで修理させなくてはいけないし、共有スペースの掃除人の働きぶりにも目を光らせなければならない。上の階から水が漏ってくるなどという住民の苦情に対応する場合もあるらしい。まったく頭の下がる話である。
実は、今週の水・木に私は共益費を支払わなければならなかったのだが、うっかり忘れてしまった。木曜日の夜はちゃんと自宅にいて、お金も用意してあったのに、受付時間が「午後9時から11時」と指定されていたため、いろいろ雑事をこなしているうちに気付いたら深夜になっていた。さっき廊下で出会ったときに、今日は家にいらっしゃいますか、と尋ねたら、まあ隣同士だからそのうちまた会うでしょ、という返事であった。おばちゃん、本当に申し訳ない。
ところで、この「午後9時から」というのはいかにもギリシャらしい時間設定である。日本でなら非常識だが、シエスタ(お昼寝)の習慣が残っているため、これでいい。この時間帯にギリシャ人は最も元気になる。映画に出かけたり、友人宅を訪問したり、レストランで食事したりするのが、この時間帯である。それゆえになおさら、このような大切なひと時が共益費の受け渡しのために費やされてしまっていいのかと私には惜しまれるのだが、本当は論理が逆なのかもしれない。私は日頃からギリシャ人が人との触れ合いを大切にすることに感心している。もしかすると一期一会を実践するような覚悟で管理人さんは共益費の受け取りに臨んでいるのかもしれない。まさか、とは思うけれども。
画像上:電柱などに "ENOIKIAZETAI" という赤い字の帯が貼ってあったら、「空家あり」の印。余白に書いてある大家さんの電話番号に直接電話して交渉する。
画像中:共益費の一覧表。階によって負担率の異なるエレベーターの使用料など、費目別に細かく書いてある。
画像下:エレベーターの箱にドアがなく、外側のドアも手動で開閉。「14歳以下の子供は一人で使用するな」との注意書きがある。
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