|
ビクトリアから17km西に位置するゴールド・ストリーム・パークは「鮭の川上り」で有名な州立公園。毎年10月半ばから12月にかけ、約2万匹の鮭が、生まれた場所であるゴールド・ストリーム川をめざして上ってくる。
ここでは3種類の鮭を目にすることができる。コーホー、チャム、チヌックサーモンである。3〜4才の成熟した鮭たちが、どのような記憶回路をたどり、何千キロも海を泳ぎ生誕地へ戻ってくるのか、学術的にはまだ完全に解明されていない。
流れの速い川に何度も押し戻されながら必死に川を上り、ごつごつした岩で身体をすりむき、目的地にようやく到着した鮭は、傷だらけで焦燥しきっている。それでも最後の力をふり絞り、メスは身体をくねらせ尾ヒレを使って川底にくぼみを作り産卵する。オスはその傍で、まるでメスを護衛するかのように、じっと産卵を待つ。時にはオスのライバル同士が、メスをめぐって熾烈な戦いを展開することも。鮭のほとんどは一夫一婦制だが、チャムサーモンは、1匹のメスの卵に複数のオスが射精する場合があるそうだ。
卵が受精されると、メスは産卵した場所からわずかに離れたところで、再び身体を使って川底を掘る。しかも、川の流れを計算に入れ、上流側を掘るのである。すると細かい砂利がうまい具合に卵の上を覆い、保護してくれる。新たな生命の誕生を託した鮭たちは、やがて死を迎える。自然の摂理とはいえ、壮絶な一生である。
11月半ばにゴールド・ストリーム川を訪れたときは、すでに産卵を終えて息絶えた鮭が川のあちこちに重なるように横たわり、まさに壮観だった。まだ川上りの最中の鮭も何匹か見かけた。先住民(インディアン)は漁を許可されているので、長い槍を持って川沿いを歩いている人たちがいた。聞いてみると、スモーク・サーモンにするため、まだ生きている鮭を捕まえるそうだ。
死んで白っぽくなった大量の鮭から放出される腐った匂いが、あたりに充満し、思わず顔をしかめるほど。この時期は学校から見学に訪れる生徒も多く、公園のスタッフが死んだ鮭を前に説明していた。川べりでは、多くのカモメたちが鮭のご馳走にありついていた。公園内では、鮭目当ての熊も頻繁に出没するという。ボールド・イーグル(白頭鷲)も生息するので、12月末までには、死んだ鮭の姿はすっかり消えているだろう。まさしく見事な自然の食物連鎖である。
388ヘクタールのゴールド・ストリーム・パークは、19世紀半ばは文字通り“ゴールドラッシュ”で砂金採掘が行われていた。今でも当時使ったトンネルや通路が残されている。公園内は樹齢600年になる巨大なダグラスファー(モミの木)をはじめ、赤スギやBC州の保護樹木であるヤマモモなどがうっそうと生い茂り、苔に覆われた木々の間に散歩道が作られ、ハイキングに最適な場所としても知られている。
-文中の画像-
画像上:川上りする鮭の種類
画像中:死んだ鮭たち
画像下:苔に覆われた木々はまるでジャングル
 
画像左:見学に来た小学生に説明するスタッフ
画像中:カモメたちのグルメ・ディナー
画像右:トンネルになった水路
|