■標高4,000mのレジャーランド、ロータン峠 2007.8.21 update

インドは灼熱の国と言うイメージがあります。確かに4月〜6月の酷暑期には40℃を越える暑さになります。しかし、いつでもどこでもインドは暑いかというとそうでもありません。インドは広大で様々な気候があり、しかも季節があるところがほとんどです。デリーにも季節があり、冬はかなり凍えます。とは言っても、雹(ひょう)が降ることは時々ありますが、デリーに雪が降ることはありません。

平野部に住むインド人にとって、雪は一種の憧れのようです。インド映画では、男優と女優が雪の上で踊るシーンがよく出て来ますが、それがさらに憧れに拍車をかけるようです。しかし、実際に雪を目にしたことのある人はそんなにいないようです。そう言えば、ヒンディー語では雪も氷も「バルフ」と言います。つまり、雪と氷を区別していません。言語の語彙からも、インド人にとって雪がどれだけ珍しいものなのかがはかり知れます。そんなインド人たちが初めて雪を目にするのが、ヒマーラヤ山脈の避暑地なのです。

有名避暑地におけるインド人避暑客のはしゃぎようを見ていると、どうも彼らは暑さから逃れるために避暑地に来ていると言うよりも、寒さを楽しみに来ているような気がします。インドでは冷房はまだまだ高級品です。平野部が熱波にさらされている季節に無料で(もちろん避暑地までの交通費や宿泊費はかかりますが・・・)天然の冷房とも言うべき寒さを体験できるというのは、不思議なことでもあり、お得なことでもあるようです。彼らは往々にして必要以上に厚手のセーターを着込んだり、ニットの帽子をかぶったりして避暑地をうろついていますが、それも寒い地域のファッションを楽しんでいるように見えます。

ただ、いくら標高が高い避暑地と言っても、酷暑期に雪が降るほど寒いわけではありません。雪を求める避暑客は、残雪のあるさらに標高の高い場所へピクニックに繰り出します。現在、北インドで最大の「雪のレジャーランド」と言ったら、先月の記事で少し触れたロータン峠(標高3,978m)でしょう。

北インドの人気避暑地マナーリーのすぐ近くにあるロータン峠には、酷暑期でも雪が残っています。元々ただの峠なのですが、昨今のインド人避暑客急増によって、雪を最大限に楽しむためのレジャーランドと化しています。地元の商才ある人々がここぞとばかりに店を並べ、避暑客相手に独創性溢れる商売を行っています。

その中で最も目立ったのは、オーバーコート、長靴、手袋などの防寒具をレンタルする店。どうやら標高4,000mの場所がどれほど寒いのか、雪と言うものがどういうものか、よく分かっていないインド人がたくさん来るため、防寒具レンタルが繁盛するようです。ひどいときにはTシャツ1枚、ハーフパンツ、草履履きという格好でロータン峠まで来てしまって、防寒具レンタル屋に駆け込まないといけない人もいるようです。

記念写真屋も流行っていました。雪の壁を掘り抜いて2人用の玉座のようなものを作ったり、かまくらを作ったりして、雪のある場所に来た記念写真を撮ります。ハネムーン客や家族連れが主なターゲットのようです。スキー用品レンタル屋もありました。しかし、スキーで滑るために貸し出しているのかと思ったらそうではありません。なんとスキーをしているように見せかける写真を撮るための、記念撮影用道具なのです。スキー板の長さは半分しかありません。

その他、雪の上でジェットスキーを走らせて遊んでいる人がいたり、気球があったり、パラグライダーが飛んでいたりと、まるでリゾート・ビーチのような光景です。ただ雪の上を散歩して楽しんでいる人が一番多かったと思います。雪ひとつでこんないろんな商売を思い付き、雪ひとつでこんなにはしゃぎ回れるインド人を見ていると、微笑ましい気持ちになります。

画像上右・左:ロータン峠
画像中:ジェットスキーを走らせて遊んでいる人
画像下左:ロータン峠の駐車場
画像下右:避暑客でごった返すマナーリーのハディンバー女神寺院


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