■インドならでは、4,000m級の峠を越えるツーリング 2007.7.17 update

世界で最も急速に成長する自動車市場を擁するインドでは、自家用車を持つ家族の数が急増しています。デリーのような都市部の住宅地では、既に住民の間で熾烈な駐車場争いが起こっています。自動車を止める場所を巡って殺人事件が起こるほどです。年々、幹線におけるラッシュアワーの混雑ぶりはひどくなっています。

一方、北インドの山間部に点在する有名避暑地でもハイシーズンの混雑に加速がかかっています。特に都市部の裕福なインド人たちがマイカーに乗って家族連れでやって来るため、デリーの渋滞がそのまま避暑地に引っ越しをしたかのようになります。今年の酷暑期は北インドを熱波が襲ったため、避暑地への人口移動はさらに激化したようです。

自家用車の普及と同時に、インドでは二輪車への再評価も起こっています。以前、インドではバイクやスクーターと言えば、四輪車を買う余裕のない人が乗る乗り物というイメージが強かったのですが、大型スピードバイクを前面に押し出した映画の大ヒットなどの影響により、「バイクはかっこいい乗り物」という価値観が生まれて来ました。それに伴い、インド人バイカーの間でツーリングが人気のレジャーとなって来ました。

豊かでダイナミックな自然を持つインドは非常に魅力的なツーリング・コースで溢れています。特にヒマーラヤ山脈の中を走り抜けるコースは、世界で最も爽快で、面白く、そして困難なものだと言えます。標高2,000m、3,000mは当たり前、中には4,000m、5,000mの峠を越えなければならないルートもあります。ただし、それらの峠は1年の大半を雪で閉ざされてしまうため、夏の短い時期のみの限定コースとなっています。それゆえに、さらに冒険者たちを惹きつけます。

今年は、ヒマーチャル・プラデーシュ州の州都で、北インド随一の人気避暑地シムラーから東回りに回り、キンナウル地方、スピティ谷を通り抜けて、やはり人気避暑地のマナーリーへ抜けるツーリング・ルートに挑戦しました(*)。このルートの目玉は、標高4,551mのクンザム峠。サトラジ河、スピティ河、チャンドラ河、ビャース河と、ヒマーラヤ山脈西部を流れる大河流域のそれぞれ異なった風景を鑑賞できるのも魅力です。文化的にも、チベット仏教とヒンドゥー教の文化が混淆した非常に面白い地域となっています。

キンナウル地方は、チベットと国境を接した微妙な地域で、15年前まで外国人の立ち入りは禁止されていました。頻繁に氾濫を起こして来たサトラジ河によって形成された峡谷は岩がちで険しく、雄大な光景となっています。さらに、雪を抱いたキンナウル・カイラーシュ山が谷を監視するかのように聳え立っています。キンナウル地方の見所は、このキンナウル・カイラーシュ山を展望できる村々が中心となります。

スピティ河流域のスピティ谷は、「最後のチベット」とも呼ばれる、チベット文化を最もよく残した地域です。やはりチベット国境に接しています。村以外に緑はほとんどなく、荒々しい山々が連なった光景は、日本では全く見られないものです。谷底でも標高3,000m前後と全体的に標高が高く、空が近いためか、空が真っ青なのが印象的です。ゴンパと呼ばれるチベット仏教寺院を巡るのがスピティ谷観光の目玉です。

クンザム峠はスピティ谷とラーハウル谷の分水嶺となっています。峠は雪山に囲まれた楽園のように静かで美しい場所でした。クンザム峠を越えるとチャンドラ河流域のラーハウル谷となります。しばらく大氷雪地帯が続き、次第に風景に緑が戻って来ます。草木の緑と雪山の白が交じり合った光景はスイスの風景をさらにダイナミックにしたようなもので、スピティ谷とはまた違った美しさがあります。

ラーハウル谷からロータン峠(標高3,978m)を越えると、そこはビャース河流域のクッルー谷となります。夏でも雪が残るロータン峠は、雪に馴染みのないインド人たちが雪遊びをするために集う一大レジャーランドとなっており、大混雑しています。ロータン峠からマナーリー(標高2,050m)までは距離にすれば50kmほどですが、標高を2,000mも下げる細い山道となっており、しかも大渋滞しているため、時間がかかります。マナーリーまで来ることができれば、あとは国道がデリーまで通じているので、簡単に帰ることができます。

実は、マナーリーからは、ラダック地方のレーへ行くさらに困難なルートもあります。こちらは標高5,353mのタグラン峠をはじめ、4,000m〜5,000m級の峠をいくつも越えなければならない、地球上で最も困難なルートです。元々欧米人バックパッカーたちの間で、レンタルバイクを使って走破する人気コースでしたが、最近ではインド人の間でも大人気です。今度はこちらに挑戦してみようと思っています。

註(*):国内最大のシェアを誇るヒーローホンダ製のカリズマ(225cc)を駆っての挑戦でした。

画像上右:チベットと国境を接したキンナウル地方の入り口
画像上左:サトラジ河とキンナウル・カイラーシュ山
画像中:「最後のチベット」とも呼ばれる、スピティ谷
画像下左:スピティ谷とラーハウル谷の分水嶺となっている、クンザム峠
画像下右:チャンドラ河流域のラーハウル谷


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