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インドの世界遺産というと、とかくタージマハルが有名ですが、インドには他にも多くの世界遺産があります。その中で、つい最近世界遺産に認定された遺跡に、マディヤ・プラデーシュ州のビームベートカーがあります。
州都ボーパールの南東47kmの地点に位置するビームベートカーは、どこまでも続く森林と平野の中に突き出た小高い丘です。「ビームベートカー」とは、「ビームの腰掛け」という意味。ビームとは、叙事詩「マハーバーラタ」に出て来る巨人のことで、その名の通り、腰掛けのようなテーブル状の岩を中心に多くの奇岩が密集しています。なぜここが世界遺産に認定されたかというと、1万年前の壁画が無数に残っているからです。
世界最高峰の山々が連なるヒマーラヤ山脈が、かつて海底にあったことは有名ですが、ここビームベートカーも大昔は海底だったようで、その影響でいろいろな奇岩が出来たようです。ちょっとした洞穴になっていたり、うまい具合にシェルターのような形になっている岩が多く、そのために原始人たちの集住の場となったと言われています。少なくとも1万年前にはここは「大都市」になっていたと考えられます。やがて原始人たちは岩肌に絵を描き始めます。
ビームベートカーに残る壁画には大きく分けて、白い絵と赤い絵があります。白い絵は1万年前の絵で、赤い絵は5,000年前のもののようです。白い絵と赤い絵は特に分けて描かれておらず、ごちゃまぜになっています。白い絵の上に赤い絵を描いてしまっているところもありました。また、紀元後に描かれたと思われるより写実的な絵や、現代になって描かれたと思われる落書きもありました。なぜ壁画が描かれたかは謎ですが、ビームベートカーは1万年来の落書き場だと言えるでしょう。ただ、もちろん世界遺産に認定された現在では落書きは厳禁です。
その主題は圧倒的に狩猟のものが多く、象、鹿、孔雀、牛、虎、ライオン、馬、ブタなどの動物が描かれています。特に圧巻なのは「ズーロック(動物園の岩)」と通称される一角。その名の通り、シェルター状の岩肌に無数の動物の絵が描かれています。その他、人間や植物の絵や幾何学的な文様もありました。ビームベートカーには合計150以上の壁画が発見されています。
ビームベートカーの壁画の中で最も有名なのは、「原始人の王」と呼ばれる壁画です。原始時代に王権が確立していたかは疑問ですが、装飾された馬に跨り、部下らしき人々を従え、槍を構えて狩りをする姿は、原始時代の芸術品と言っていいでしょう。赤い絵なので、5,000年前のものということになります。
実は、インドではビームベートカーだけでなく、いろいろな場所で原始時代の壁画が発見されています。特に、ラージャスターン州東部からマディヤ・プラデーシュ州西部にかけての地域に壁画が多いらしく、それらを「壁画ベルト」と称して新たな観光資源、または新たな世界遺産候補にしようとする動きもあります。
原始時代の壁画というと、ラスコーやアルタミラが世界的に有名ですが、近いうちにインドは「壁画大国」として世界に名を馳せるようになるかもしれません。
画像右上:ビームベートカー
画像左上:洞穴
画像右中:ズーロック(動物園の岩)
画像左下:部下らしき人々を従えて馬に跨り、槍を構えて狩りをする「原始人の王」
画像右下:画風が違うため、後世のものと思われる
【短信】インドでは、春(実際には夏)を迎える祭りホーリーが終わり、気温がグングン上昇しています。(3/8) |