■寺の展示場:チャッタルプル 2006.11.21 update

今でこそIT産業で知られるようになったインドですが、インドを歩いて最も目に付くのは寺院やモスクなどの宗教施設の数の多さなのではないかと思います。ヒンドゥー教、イスラーム教、キリスト教、スィク教、仏教、ジャイナ教など、ありとあらゆる宗教の心の拠り所がひとつの街の中で共存しています。巨大な塔を持つ寺院から、木の下に置かれた小さな祠まで、あちらを向いてもこちらを向いても何がしかの信仰スポットがあります。近代的な大都市にも、道路がないような田舎の村にも、必ず寺院やモスクが存在します。インド中、果ては世界中から参拝者を集める有名な古刹もたくさんある一方、氏神のような特定のコミュニティーの神様を祀る祠もあります。

このように、インドには無数の寺院があり、有名な寺院は観光地にもなっているのですが、一般の観光客にあまり知られていない上に、見る者を圧倒する迫力のある寺院群がデリーの南郊にあります。チャッタルプルという地区です。ここにあるシャクティピートと呼ばれる寺院群は、奇抜な形の寺院が立ち並ぶ「寺の展示場」となっており、一見の価値があります。

チャッタルプルの歴史はそれほど古くありません。かつて、バーバー・サント・ナーグパールという聖者がいました。1925年に南インドのカルナータカ州に生まれたナーグパールは、幼年時代に両親を失った後、サードゥと呼ばれる遊行者に引き取られ、インド全国を行脚しました。やがてデリーに移り住んだナーグパールは、1970年代から、当時ただの森林地帯であった南郊のチャッタルプルに寺院街を建設し始めました。

チャッタルプルに建てられた各寺院は、インド各地の様々な寺院様式に基づいて建てられました。その結果、チャッタルプルはインド各地の寺院を一ヶ所に集めたような寺院コンプレックスとなりました。それと同時に、地域の子供たちが通うための小学校、専門学校、大学なども建設されました。ナーグパールは1998年に死去しましたが、彼が築き上げたシャクティピートは今でも多くの信者によって支えられています。

チャッタルプルには、見る者を圧倒するような建築の寺院がいくつも並んでいます。巨大なドームを冠した、まるで宮殿のような外観のシュリー・ナーゲーシュワル寺院は、ナーグパールが祀られている寺院です。南インド様式のラト・グリハと呼ばれる寺院の裏には、超巨大な扉があり、そこにはこれまた超巨大な錠が掛けられています。この扉の中には、超巨大な山車が収容されているようです。

ラト・グリハの前面には、高さ約18mのトリシュール(三叉檄)が立っています。トリシュールとは、破壊神シヴァの持つ武器です。最も圧倒的なのは、高さ約30mのハヌマーン像。ハヌマーンとは、インド二大叙事詩のひとつ「ラーマーヤナ」に出て来る猿の将軍であり、主人公ラーム王子の忠実な部下です。孫悟空のモデルとなったとも言われており、インドで最も人気のある神様の1人です。ハヌマーン像の向かい側にあるラクシュミー・ヴィダーヤク寺院も圧倒的な規模を誇る寺院です。この他にもユニークな形をしたいくつもの寺院が境内内にそびえ立っており、まるで寺院博覧会のようです。

また、この寺院コンプレックス内には博物館があり、ナーグパールの遺品や、生前に住んでいた部屋などがそのままの形で展示されています。晩年のナーグパールは闘病生活を送っていたようで、いくつもの医療機器が展示されていたのが印象的でした。

チャッタルプルは、デリー有数の観光地であるクトゥブ・ミーナールのすぐ近くにあります。時間があったら、是非足を伸ばしていただきたいスポットです。きっと、インド=貧困というイメージが覆るでしょう。

画像右上:シュリー・ナーゲーシュワル寺院
画像左上:ラト・グリハの裏側
画像右中:トリシュールとラト・グリハ
画像左下:ハヌマーン像
画像右下ラクシュミー・ヴィナーヤク寺院


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