■インドで映画デビューも夢ではない? 撮影現場体験記 2006.2.20 update

インドは世界一の映画大国と言われています。映画制作本数は毎年800〜900本に達しており、毎週、毎週新しい映画が公開されます。衛星ケーブルTVが各家庭に普及したことにより、TVドラマ業界も日本のように激しい視聴率争いを繰り広げるようになっています。TV-CMの質もなかなか高く、言葉が分からなくてもついつい笑ってしまうような面白いコマーシャルが少なくありません。映画、ドラマ、TV-CMなどの撮影の中心地はマハーラーシュトラ州の州都ムンバイー(旧名ボンベイ)。ムンバイーに住んでいると、ロケや有名俳優との遭遇はそれほど珍しいことではないようです。

残念ながら僕はインドの映画に出演したことはありませんが、インドのTV-CMになら2年ほど前に出演しました。そのときの体験談を書こうと思います。日本とも関係のある、とある家電企業のTV-CMのために日本人の若者が必要だったようで、スカウトマンがデリーに日本人を探しに来ていました。たまたま僕に声が掛かったので応募してみたところ、採用されたといういきさつです。撮影はムンバイーの撮影所フィルム・シティーでありました。1泊2日の日程で、報酬は1万ルピー(約2万5千円)、往復の航空券や食事代などは向こう持ちでした。

まずは飛行機でムンバイー入りしました。デリーで出会ったスカウトマンが空港まで出迎えに来ていて、空港近くのホテルに1泊しました。次の日、同じスカウトマンがホテルまでやって来て、彼のスクーターでフィルム・シティーまで行きました。フィルム・シティーは、ところどころに映画のセットが建っているものの、ほとんどただのジャングルでした。夜には豹が出るとも聞きました。TV-CMの撮影は見晴らしのいい丘の上で行われました。僕が到着したときにはほとんど準備ができておらず、だらだらとセットが組まれ、ダンサーたちがのんびりと準備をしていました。僕の出番は最後の方だったので、ずっと様子を見ていました。

インドの撮影現場というと、とんでもない混沌を予想していましたが、案外みんなテキパキと仕事をしていました。とは言っても全体を把握しているのは監督とコレオグラファー(振り付け師)のみで、下っ端の人たちはただ与えられた仕事をこなしているという感じでした。出演するダンサーたちですら、台本をよく理解していない有様でした。そのTV-CMのあらすじはこうです。

・・・北インドのパンジャーブ州のお祭りの日、インド人たちがカラフルな服装で着飾って踊りを踊っていると、突然見知らぬ男が登場して超絶の踊りを踊り出す。驚くインド人たち。その男はさらに激しい踊りを踊るが、顔は見えない。踊って、踊って、踊りまくった後、やっと顔を見せたと思ったら、それは日本人であった・・・僕の出番は顔を見せる最後の瞬間だけで、後の踊りは代役が踊ってくれました。

やっと撮影が開始されました。コレオグラファーの振り付けに従って、男女十数人のダンサーたちが群舞を繰り広げます。数テイク撮ってはカメラで確認して、監督のOKが出るまで同じシーンを撮り直していました。コレオグラファーはさすがに踊りがうまく、身体のいろいろな部分がよく動きますが、肝心のダンサーたちはそれほどうまくありません。聞くところによるとダンス学校の生徒のようです。たまにステージで踊ったりするようです。これだったらコレオグラファーが自分で踊りを踊ればいいのではないかと思いましたが、コレオグラファーの仕事はあくまで振り付けをするだけなのでしょう。

昼時にはケータリングの料理も出て、監督、スポンサー、コレオグラファー、ダンサーや裏方たちが一緒になって食事をしていました。ビュッフェ形式で、味は絶品でした。やっと僕の出番が来ました。僕が演じなければならなかったのは、「後ろ向きで飛び上がって振り返るシーン」と、「カメラに向かってお辞儀をするシーン」の2つでした。どうもインド人の間では、日本人=お辞儀というイメージが定着しているようで、映画の中で日本人が出てくるといつもペコペコお辞儀をしています。

お辞儀をするシーンは数テイクで完了しましたが、飛び上がって振り返るのはなかなかOKが出ませんでした。「インド中の人々の視線を釘付けにするような表情を!」と要望されましたが、いったいどんな表情をすればいいのか・・・ますます混乱してしまいました。自分に演技力がないことを悟った1日でした。

僕の撮影が終了した時点で、もう日が沈もうとしていました。まだ取り残したシーンがいくつかあるようで、監督もカメラマンもみんな走り回って撮影をしていました。始まりはノロノロしているのに、終わりに近づくと焦り出すのはインド人の特徴のひとつです。何とか日が沈むまでに撮影を終え、撮影参加者たちは順番に今日1日の給料を手渡されていました。みんな日当労働者のようです。チラリと覗き見してみたところ、職種によって給料にかなりのばらつきがありました。1万ルピーももらっているのは僕しかおらず、多くの人たちはわずか数百ルピーの給料でした。

映画などで外国人が必要になると、スカウトマンたちはムンバイーのインド門あたりで外国人旅行者のスカウトをすると聞いたことがあります。多くの場合白人が必要とされますが、時々、日本人にも出番が回ってくるようです。ただし、インドの撮影には多くのトラブルが付き物なので、必ずしもいい思い出だけではないとも聞きます。

画像右上:のんびりと準備中のダンサーたち
画像左上:監督、撮影中
画像右中:コレオグラファーが振り付け中
画像左下:ケータリング、ビュッフェ形式で味は絶品でした。
画像右下:ダンサーの女の子たち


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