■スーパーマーケット、静かなる普及 2005.10.17 update

デリーのマーケットや住宅街には、「ジェネラル・ストア」と呼ばれる小さな店があります。狭い店舗の割には、食材、洗剤、石鹸、お菓子、飲料などなどの生活必需品を幅広く取り扱っている他、電話屋も兼ねていることがよくあります(インドに公衆電話はまだほとんどありません)。店の主人が店先にどっかと座っており、欲しいものを告げると、小間使いの少年などに指示を与えて、奥の棚などから商品を取り出させてくれます。ジェネラル・ストアが近所の住民の憩いの場となることは必然で、数回通えば店の主人ともすぐに仲良くなれます。

野菜や果物などは、近所のマーケットに行けば簡単に手に入ります。住宅街を巡回して野菜や果物を売り歩く人も多いので、生鮮食品の調達に困ることはほとんどありません。キロ売りになっているところが日本と違う点ですが、慣れれば言葉が通じなくても、店の人と値段交渉できるようになるでしょう。肉は多少手に入る場所が限られていますが、必ず近くのどこかに肉屋があるはずです。目の前で鶏や山羊をぶった切って行くので、その迫力に負けてついヴェジタリアンになってしまう人もいたりしますが、肉を食べるということは生き物の命を奪うということなので、それを思い知るいい機会だと思います。

南デリーにはINAマーケットという一風変わった市場があります。ここは輸入食材を含む各種食材の一大集結地であり、デリー市民の台所と呼ばれています。醤油や海苔なども手に入りますが、その出所については不明な点が多いのがいかにもインドらしいところであります。一説によると、外国からの支援物資の横流しや、盗品だと言われています。INAマーケットでは鶏肉や魚も手に入りますが、あまり衛生的ではありません。

ひと昔前までは、これらがデリーの食料調達事情の全てでした。もちろんこれだけではとても日本人は生活できないので、日本から大量に食料を持って来たり、定期的にシンガポールなどに買い出しにいくのが、通常の駐在員の生活でした。しかし、デリーの食材供給事情は近年徐々に改善されつつあります。その先鞭をつけているのが、スーパーマーケットの出現です。

デリーで最も老舗のスーパーマーケットは、バサント・ロークにあるモダン・バザールです。モダン・バザールでは、国産食材、輸入食材、肉、パンなどが売られています。昨年(2004年)の8月に火事で全焼してしまいましたが、数ヶ月前に不死鳥のように復活しました。外国人が多く住むヴァサント・ヴィハールに近いため、外国人客が目立ちますが、西洋風の食生活をしているのか、リッチそうなインド人の買い物客もたくさん来ます。狭いスペースにたくさんの商品が所狭しと並べられているので、混雑しているときに買い物するのが大変なのが玉に瑕です。

2002年12月には、待望の日本食材店がデリーにオープンしました。大和屋という名前で、オーナーも日本人です。大和屋では、日本直輸入の日本食材の他、日本産、ネパール産、インド産の日本米、冷凍の肉類や魚類も売られています。当然のことながら、最初は日本人駐在員がターゲットでしたが、韓国人や中国人を始めとした外国人の常連客も増え、今では寿司などの日本食に興味を持つインド人も頻繁にやって来るようになりました。大和屋は、デリー在住邦人の憩いの場となっています。

グルガーオンのサハーラーモールに入っているビッグ・バザールについては、各国いまどき報告「モール戦国時代! グルガーオンのモールロード(1)」にてご紹介いたしました。ビッグ・バザールはスーパーマーケットというよりもデパートで、食料品から衣料品から調理器具から電化製品まで、ありとあらゆる商品が売られています。

ところで、インドでも最近は上流階級層を中心に健康ブームです。そのブームに乗る形で、健康志向のインド人のためのスーパーマーケットもデリーにオープンしました。グリーン・パーク・マーケットのナームダリーズ・フレッシュです。有機野菜や果物が冷蔵ショーケースに陳列されており、さながら日本のスーパーマーケットのようです。インドではなかなか手に入らない輸入果物も置かれており、新たな食材スポットとなっています。

あまりスーパーマーケットとは関係ありませんが、インドにもようやく自動販売機が出現し始めました。インドは人件費が安いので、機械に頼るよりも人にやらせた方が経済的です。また、インドの紙幣や硬貨はボロボロだったり種類が豊富過ぎたりして、自販機には向いていません。これらの理由から今まで自販機が普及しなかったと思われますが、遂に道端で自販機を目にするようになって来ました。その主な商品はコンドーム。人口爆発やエイズの感染はインドでも深刻な問題になっており、この自販機はその解決策のひとつのようです。しかし、コンドームだけでは恥ずかしがって人が寄り付かないため、スナック類など他の商品も一緒に売られています。

次第に変化しつつあるデリーの食料調達事情。しかし、このままスーパーマーケットやコンビニエンスストアが爆発的に乱立すると、今まで庶民の生活を支えて来たジェネラル・ストアや野菜屋、果物屋たちはどうなってしまうのでしょうか? 日本の例から考えても、その将来は決して明るくありません。外国人の生活は便利になる一方ですが、庶民の生活を全く無視した急速な発展に懸念が積もる今日この頃です。

画像右上:近隣住民の憩いの場、「ジェネラル・ストア」
画像左上:ビッグ・バザールの果物売り場
画像右中:2002年12月オープンの日本食材店「大和屋」の店内
画像左下:健康志向のインド人のためのスーパーマーケット「ナームダリーズ・フレッシュ」
画像右下:コンドーム自販機。スナック類など他の商品も一緒に売られています。

【短信】デリーは、1ヶ月間続くお祭り&結婚式シーズンに突入いたしました。だいぶ過ごしやすくなり、束の間の秋を満喫しております。(10/5)


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