■注文に困ったら・・・ターリー●インドの定食 2005.8.15 update

インドと言えばカレー。カレーと言えばインド。日本人の脳裏では、インドとカレーが切っても切れない密接な関係を持っているようです。一般の日本人から「インド人は本当に毎日カレーを食べているの?」という素朴な疑問を投げかけられることも少なくありません。「オレ、カレー大好きだから食うには困らないだろう」と安易に考えてインドに旅行に来る人もけっこういるのではないでしょうか。しかし、インドには、日本で俗に言う「カレーライス」のような食品はほぼ皆無に近いと言わざるをえません。インドのレストランに入って、メニューを見ると、まずはその種類の豊富さに驚き、そしてその複雑さに混乱し、遂には何を頼んだらいいのか分からず面食らってしまうでしょう。

インド人は、数々の香辛料を調合したマサーラーと呼ばれる調味料で味付けされ、調理された野菜や肉を、ご飯やパン状のものと一緒に食べています。スープ状のものもあれば、汁気のないものもあります。野菜の組み合わせの種類も豊富ですし、肉の調理の仕方もいろいろあります。インドに貿易にやって来た西洋人は、インド人が食べている食べ物、特にスープ状のものを「カレー」と呼び、インドを支配した英国人は、カレーを本国でも味わうためにカレー粉を発明しました。カレーは英国においてひとつの食品として確立し、それが日本にも伝わって、国民食「カレーライス」となったわけです。

「カレー」の語源には諸説がありますが、「汁」とか「野菜」という意味のタミル語(南インドの言語)の単語「カリ」が語源であるとする説が有力です。北インドでは、日本人が「カレー」と呼ぶ、ご飯の上にかけたりする食品は、スープ状であってもドライであっても、「野菜」という意味の単語「サブジー」で総称されています。ただし、「サブジー」と呼べるのは野菜を主体とした食品だけで、肉を調理した食品はそれぞれの肉の名前で総称されています。例えば、鶏肉だったら単に「チキン」、羊肉だったら「マトン」、魚肉だったら「フィッシュ」または「マチュリー」と呼ぶことがほとんどです。

もし、「カレー」という言葉がインド料理全体を総称しているとするなら、「インド人は毎日カレーを食べている」と言ってもいいでしょう。しかし、それは「日本人は毎日、日本料理ばかり食べている」という文章とそう変わりない文脈だと思います。インド人の食文化は、日本人の想像より遥かに豊かであることを忘れてはなりません。

ところで、インド料理を注文するときのコツは、まず自分が肉を食べたいのか、野菜を食べたいのかを決めることです。インドでは菜食主義文化が根強いので、レストランも肉を出す「ノン・ヴェジ」のものと、野菜しか出さない「ヴェジ」のものに分かれています。もし肉を食べたいのだったら、ノン・ヴェジ・レストランに行くしかありませんし、菜食主義のインド料理を食べたいと思ったら、一応ノン・ヴェジ・レストランでも食べることはできますが、やはり菜食主義料理を専門とするヴェジ・レストランの方がおいしいことが多いです。ただ、ヴェジ・レストランはアルコールも出さないところが多いので、もし酒と一緒に食事を楽しみたいのだったら、ノン・ヴェジ・レストランへ行くべきでしょう。

菜食主義料理を出すレストランには大きく分けて、北インド料理レストランと南インド料理レストランがあります。北インドと南インドの料理はかなり違います。肉料理のレストランにはそれほど大きな分類はありません。デリー周辺部だったら、ほとんどのノン・ヴェジのインド料理レストランはムガル料理やパンジャーブ料理を出しています。沿岸部だったら、それに加えて魚料理を得意とするインド料理レストランがあったりするぐらいです。

さて、レストランに入ったはいいが、ほとんどの日本人にとっては、メニューを見ても何が何だか分からないのが実情でしょう。そんなときに便利なのが、インドの定食です。定食は、北インドでは「ターリー」、南インドでは「ミールス」と呼ばれています。北インドでは、円形状の大皿に、プーリー(揚げパンの類)やナーン(釜で焼いたパン)、ご飯、数種類のサブジー、ヨーグルト、甘いお菓子、ピクルスなどが乗っています。南インドでは、バナナの葉っぱに数種類のサブジー、ご飯、ピクルスなどが無造作に盛られます。南インドのミールスはお代わり自由であることが多いため、お腹一杯になるまで食べることができます。

暇そうにしている従業員に、ターリーやミールスで出てきたひとつひとつのサブジーを説明してもらえば、きっとお気に入りのサブジーを見つけることができるでしょう。また、基本的にインド料理は多人数で食べることを前提にしており、たくさんの肉料理やサブジーを注文しないとなかなか楽しめないため、1人でレストランに入ったときなど、ターリーはありがたい存在です。

ターリーにはそれぞれ地域色があります。特に特徴的なのはグジャラーティー・ターリー。インド西部グジャラート州のターリーです。ミールスと同様にお代わり自由で、複数の従業員が次々にテーブルにやって来て、大皿にどんどんサブジーなどを盛り付けて行きます。味は辛くて甘くて不思議な感覚! グジャラート州には、ターリーしか出さないレストランがいくつもあり、食事時には常に混雑しています。お隣のラージャスターン州のラージャスターニー・ターリーも、郷土料理が盛りだくさんでオススメです。

というわけで、インドのレストランで注文に困ったら、とりあえずターリーがあるかないか聞いてみるといいでしょう。

画像右上:グジャラーティー・ターリー
画像左上:ラージャスターニー・ターリー
画像右中:南インドで食べたプーリー(揚げパンの類)
画像左下:エビ料理、これもカレーの一種と言える
画像右下:南インド料理名物、ドーサー。豆と米の粉を練って薄く伸ばして鉄板で焼いたもの。外見はクレープに似ているが、もっとパリパリしていておいしい


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