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日本人が「インド人」と聞いて思い浮かべるイメージといえば、十中八九「ターバンにヒゲのおじさん」か、「肌が黒くて眼が真ん丸」なのではないでしょうか? そのような典型的イメージのインド人も確かにインドには住んでいますが、実はインドは人種のるつぼで、白人とそう変わらない人、アフリカ人みたいな黒人、そして我々と同じような顔や体格をした東アジア系の人々など、実に様々な顔をした民族が住んでいます。サッカーW杯で日本代表はインド代表と対戦しましたが、インドチームのキャプテンを務めているバイチャン・ブーティヤーも東アジア系の顔をしています。彼の出身地は、ネパール、チベット、ブータンに挟まれたスィッキム州で、スィッキム人の多くは日本人と非常に似た顔をしています。
インド東北部には、セブン・シスターズまたはノース・イーストと呼ばれる7州があります。それは、アルナーチャル・プラデーシュ州、ナガランド州、マニプル州、ミゾラム州、アッサム州、トリプラー州、メーガーラヤ州です。バングラデシュの北、ミャンマーの西、チベットの南、ネパールの東に位置する地域で、前述のスィッキム州も隣接しています。
これらの州に住む人々の多くはモンゴロイドで、他の地域のインド人とは人種も民族も宗教も言語も文化も全く違います。ここでは便宜的に、「インド人」と言った場合は、ノース・イーストの人々を除いた一般的なインド人ということにします。ノース・イーストに住む人々は、どちらかというと、東南アジアやブータン、中国雲南省などに住む少数民族と類似点が多く、日本文化との共通点も指摘されています。しかし、インドからの分離独立を主張する武装組織やゲリラなどの勢力が強いため、長い間外国人の入域は制限されて来ました。近年、アッサム州、メーガーラヤ州、トリプラー州の3州は外国人旅行者にも開放されましたが、残りの4州を個人で旅行をすることは極めて困難で、またスィッキム州入域の際も許可証の取得を求められています。僕は現在のところ、ノース・イースト地域では、アッサム州、メーガーラヤ州、スィッキム州、ブータンを旅行しました。
ノース・イーストへの旅は、インドの他の地域の旅行とは全く違った体験になります。特に面白いのが、インドの父系社会とノース・イーストの母系社会の対比です。一概に言えませんが、一般的なインド社会は父系社会であり、ノース・イーストの社会は母系社会の傾向が強くなっています。特にメーガーラヤ州に住む3部族は全て母系社会であり、花婿は花嫁の家に嫁ぎ、親の財産は娘が相続することになっています。ちなみにインド社会では、花嫁は花婿の家に嫁ぎ、親の財産は男の兄弟が相続するのが一般的です。
ノース・イーストでおそらく一番興味深いのは、マーケットではないかと思います。特に他のインドの市場をいくつか巡ってきた後だと、その違いに驚くかもしれません。セブン・シスターズの市場の最大の特徴は、女性が主導権を握っていることです。ノース・イーストの町の市場を全て見たわけではないので断言することはできませんが、少なくとも僕が行ったメーガーラヤ州では、その傾向が顕著でした。
インドの一般的な市場では、店主は男性であることが多く、買い物も伝統的には男性がするため、男性に主導権があります。しかし、メーガーラヤ州などの母系社会地域の市場では、店主も買い物客も圧倒的に女性が多く、異様な雰囲気が漂っています。最近ではインド文化圏からベンガル人商人などが多くノース・イーストに移住して来ており、都市部ではそのような特徴は薄れつつありますが、田舎の町の市場へ行ったら、今でも女だらけのマーケットとなっています。また、田舎へ行くと、英語もヒンディー語も通じない全くの異世界となるのも非常に面白い現象です。
売られている商品もやはりインドの他の地域とは違うものがあります。一番ぎょっとするのは虫。この辺りの人々は虫を食べるようで、カブトムシの幼虫のような虫が籠に入って売られていました。魚もよく食べられているようで、必ず大きな魚市場がありました。また、ノース・イーストの女性たちはパーン(噛みタバコ)が大好きのようで、1日中クチャクチャクチャクチャとパーンを噛んでいます。パーンの原料となるキンマの葉も大量に売られています。
ノース・イースト独自の風習で、日本人の目から見て面白いのは、彼らが赤ちゃんをおんぶすることです。実はインド人は赤ちゃんを背中におんぶしません。赤ちゃんの股を腰骨に引っ掛けて抱える抱き方をします。しかし、ノース・イーストの人々は、日本人と同じくおんぶをしたり、布で背中に縛ったりします。どうも見たところ、育児は男性の仕事であることが多いようです。女性は外へ出て積極的に働く一方で、男性は家でダラダラとしていることが多く、よくて家事をしたりしているようです。よって、道端で子供をおんぶしてボーっと立っている男性をよく見かけました。基本的に母系社会の男性は怠け者で、毎日何もせずに遊び暮らしている人がけっこういます。
マーケットが女性だらけ、という現象は、インドに住む僕からすれば異様なのですが、日本に帰ってみるとそれは実は当たり前の状態だったということに改めて気付かされます。日本のデパートや商店街は、店員も買い物客も大半は女性であることがほとんどです。また、デリーでも最近は女性の買い物客が急速に増加しており、女性店員も全く珍しくありません。インドでは女性の地位向上が進んでいる一方で、ノース・イーストでは男性の地位向上が叫ばれています。いったい女性が主導権を完全に握った社会はどうなるのか、ノース・イーストを訪れると何となく分かるのではないでしょうか。
画像右上:メーガーラヤ州ジョワイの市場
画像左上:食用の虫
画像右中:魚をさばいている女性
画像左下:スパイス屋とパーン(噛みタバコ)を噛んでいる女性
画像右下:頭にかぶる傘を売っている
【短信】デリーはモンスーンが終わり、再び暑さが戻って来ました。今年は7月の降水量が例年に比べて10分の1以下で水不足が心配されましたが、8月は好調に雨が降りました。インドの経済は雨に左右されますので、最悪の事態は免れたと思われます。(8/31)
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