■巡礼の記念に、ご当地ソング♪インドの聖地 2004.2.16 update

1月末のデリーは季節外れの雨が降ったおかげで寒さがぶり返しましたが、2月に入ってからはだいぶ暖かくなって来ました。デリーの2月は気温が一気に上昇する月で、冬から夏へ目まぐるしく季節が変化します。その間の、束の間の春をデリー市民はエンジョイしています。

インドには多くの宗教が混在し、各地に聖地が点在します。宗教的聖地というのは、観光という考え方のなかった昔における観光名所でした。インド各地から多くの参拝客を集める「国際的な」聖地もあれば、近隣地域の人々からローカルな信仰を集めている聖地まで、いろいろな聖地がインドにはあります。逆に言えば、聖地のある場所までがインド文化圏であり、聖地と聖地を結ぶ道を中心にインド世界が形成されていったと言っても過言ではないでしょう。聖地巡礼は、信者一人一人が、インドという「世界」の範囲を自らの足で踏み固めて確固たるものとしていく過程だったと言えます。まるで血液が体内を巡って生物の生命を維持するかのごとく、巡礼者たちはインド中を行脚することによって、インド世界の範囲を確定し、インド文化を維持していったのです。

インドの聖地というと、仏教ならブッダガヤー、ヒンドゥー教ならヴァーラーナスィー、イスラーム教ならアジメールなどが世界的に有名ですが、それ以外にも各地に大小様々な聖地が存在します。先日訪れたグジャラート州パーヴァーガルは、その中でもローカルな巡礼地に相当します。山の上にヒンドゥー教寺院がある他、ジャイナ教寺院やイスラーム教のモスクなども山のあちこちに残っています。巡礼者はグジャラート人がほとんどで、看板などの文字も地元のグジャラーティー語オンリーでした(インドには数多くの言語・文字が存在するのは有名です)。参道の雰囲気は典型的なインドの巡礼地の様相でしたが、それでいて独特のオリジナリティーが感じられたので、ここでインドの巡礼地の一例として取り上げることにしました。

パーヴァーガルの主要な寺院であるラクリーシュ・マハーデーヴ寺院は山の頂上にあります。途中まで乗り合いジープで行くことができ、そこから歩いて頂上にあるカーリー女神の寺院を目指すことになります。昔は上までロープウェーがあったそうですが、事故があったために閉鎖されていました。頂上まで大体1時間ほどの登山です。日本の有名な神社や寺院などを思い浮かべてもらえば容易に推測がつくと思いますが、インドの聖地にも必ずと言っていいほど参拝客目当ての店が立ち並び、縁日のような雰囲気になっています。それがそのまま門前町になっている場所も少なくありません。パーヴァーガルでは、山道の両脇にそのような店が立ち並んでいますが、町にはなっていません。

店で売っているものを見てみると、まず目に付くのは神様へのお供え物類。ヒンドゥー寺院ではココナッツを神様に捧げる習慣があるので、ココナッツがよく売られています。巡礼地には欠かせない商品でしょう。お供え物の他、プラサードと呼ばれるお供え物のお下がりを売る店もあります。これらは参拝者が家族や親類のために持って帰るためのもので、参拝の功徳のお裾分けというわけです。また、インドの参拝地には必ず物乞いが集結しており、物乞いに与える小銭を用意するための両替屋も巡礼地で繁盛(?)しています。

しかし、参道に並ぶ店の中で最も多いのは土産物屋です。インド女性必須のオシャレグッズである腕輪を売る店、子供のためのオモチャを売る店、神様の絵を売る店、キーホルダーを売る店などなどです。日本の寺院や神社と売っているものはあまり変わらないところが面白い点です。

その中でもパーヴァーガル独特の商品を売る店がありました。カセット&CD屋です。とは言っても、普通のカセットやCDではありません。なんと、パーヴァーガル独自の歌が入っているのです。カセット&CD屋は何軒も軒を連ねており、参道中に大音量で自慢の音楽を流しています。最初聞いたときは、流行の映画音楽だと思いましたが、よく聞いてみると歌詞が違う!歌っている歌手も違う!インドでは、映画音楽が大衆に大人気ですが、パーヴァーガルではその人気曲の歌詞を勝手に改変して、地元の歌手に歌わせて録音して売っているのです。内容はというと・・・元の曲が「君の名に僕の人生の全てを賭けた」と歌っているのに対し、パーヴァーガル・バージョンの曲は「パーヴァーガルに巡礼してカーリー女神に人生の全てを捧げた」となっていたりします。

カセットやCDだけでなく、プロモーション・ビデオのような映像付きのVCDも売っており、その気合の入り方にビックリ仰天。勝手にご当地ソングを作ってしまうインド人のバイタリティーには頭が下がります。これを観光プロモーションのための努力と位置づけたらいいのか、著作権無視の違法行為と位置づけたらいいのか、それとも神様への絶対的愛情と表現したらいいのか・・・。

他の聖地でも、流行りの映画音楽の替え歌が吹き込まれたカセットやCDが売られている場所がインドにはいくつかあります。まさにその場所にしか売られていない、貴重なご当地ソングです。それらを集めてみるのもまた一興かもしれません。

画像右上:お供え物を売る店
画像左上:腕輪を売る店
画像右中:神様の絵を売る店
画像左下:オモチャを売る店
画像右下:カセット&CDを売る店


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