■案外おいしい?純菜食主義ピザ 2004.1.19 update

前任者のブッダガヤー在住ユキさんに引き続き、デリー在住の留学生アルカカットが、各国いまどき報告を担当することになりました。よろしくお願いいたします。

今、冬のデリーは例年よりも寒く、1月6日には最低気温3℃を記録しました。インドというととかく「暑い国」とイメージされがちですが、冬のデリーは濃い霧に包まれた極寒の都市になります。純粋に気温計の数字から見たら、東京の方が気温は低いのですが、デリーの冬の方が東京の冬よりも体感温度が寒く感じるのは、インドに「暖房」という考え方があまりないからでしょう。普段のデリーの冬は、暖房器具がなくてもギリギリ過ごせるくらいの寒さです。しかし今年は特別寒い!夏のデリーの酷暑はもちろん地獄の釜茹で並みのひどさですが、今年の冬のデリーもシベリアの監獄のようで地獄です。

インドは世界で最も菜食主義傾向の強い国です。宗教的な理由もありますが、菜食主義者が多いのは、結局インドは肉を食べなくても十分な栄養が摂取できるくらい、食材に恵まれていた国だったからだと言えるでしょう。ただ、インドの菜食主義は、日本人のように「ちょっと太って来たから菜食主義になろう」というような気まぐれなものではなく、生まれたときから死ぬまで全く肉を摂取しないぐらい厳格なものです。

インドで生まれ、日本にも伝わった仏教が、肉食を戒めていることは我々日本人にも馴染みがあり、ヒンドゥー教徒が牛肉を決して食べないことも有名ですが、インドの宗教の中でもっとも厳格な不殺生主義、菜食主義を貫いているのが、ジャイナ教徒です。ジャイナ教は仏教興隆と同時期の紀元前6〜5世紀に、マハーヴィールによって開かれた宗教で、仏教がインド国外に広まって国内で消滅したのとは対照的に、国外に流布しなかったものの、国内で2500年以上に渡って信仰され続けてきました。

ジャイナ教徒は肉、卵、魚を一切食べないのはもちろんのこと、限られた野菜しか食べません。ジャイナ教徒が食べない野菜は、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンなど地中に埋まっている根菜類です。地中から掘り起こすときに虫を殺す可能性があるからです。その他、刺激のある食物や、蜂蜜なども食べないと言われています。牛乳や乳製品はOKです。

ジャイナ教はインド全土に広まっていますが、特にジャイナ教徒が多く住むのが、西インドのグジャラート州です。インド独立の父、マハートマー・ガーンディーの出身地もグジャラート州です。ジャイナ教の厳格な戒律を反映して、グジャラート州は州全体が禁酒となっており、普通の場所では飲酒ができません。また、肉料理を出すレストラン(ノンヴェジ・レストラン)も極端に少なく、地方に行ったら、町に肉を出すレストランが一軒もないというところも珍しくありません。純菜食主義中華料理レストランなんていう、日本じゃちょっと考えられないものがあったりします。

そんな中、グジャラート州の中心都市アハマダーバードでは、いくつかのノンヴェジ・レストランを見つけることができます。面白いのは外国から進出して来たファストフード・チェーンです。アハマダーバードには、マクドナルド、サブウェイ、ピザハットなどの店舗があります。これら各社は州民の菜食主義志向に各様の対応をしています。インドのマクドナルドは、メニューをヴェジ(菜食主義者用)とノンヴェジ(非菜食主義者用)に分け、調理スタッフもヴェジ用とノンヴェジ用に分ける徹底振りで、保守的なインド人にも受け容れられましたが、アハマダーバードのマクドナルドでは、他の州に比べて特にヴェジ・メニューを強化しています。

最近インドに進出して来たサブウェイも、マクドナルドに追従する形でメニューをヴェジとノンヴェジに分けており、サンドイッチ作成用カウンターも分かれています。他州のサブウェイではどちらかというとノンヴェジ用カウンターの方がメインになっていますが、アハマダーバードのサブウェイではヴェジ用がメインになっています。ちなみに、こういう菜食主義者向けの対応がしにくいケンタッキー・フライドチキンは、インド進出に難航しているようです。

しかし、ファストフード・チェーンの中で、もっとも徹底した配慮をしているのがピザハットです。ピザハットの看板には「100% Vegetarian(純菜食主義)」の文字が。つまり、一切のノンヴェジ・ピザを置いていないということです。しかもメニューを見ると、厳格な菜食主義を貫くジャイナ教徒のための「Jain Speciality(ジャイナ教徒用特別メニュー)」なるものがあります。これは他州には見られない、グジャラート州のピザハットならではのメニューです。

ジャイナ教徒用特別メニューとその説明書きを見てみましょう。
○スパイシー・カプシカム(青唐辛子と赤唐辛子に、トマトとチーズをミックスしたホットな味のピザ)
○ジャイナ・ラヴァーズ(チーズ、トマト、トウモロコシのコンビネーション)
○スパイシー・パニール(インド風チーズのパニール、赤唐辛子、赤パプリカとチーズの組み合わせ)
○ジャイナ・デライト(チーズ、トマト、赤唐辛子にパイナップルとベビー・コーンをトッピングしたピザ)

はっきり言って、どれもチーズ、トマト、唐辛子、トウモロコシなど限られた野菜の組み合わせで、あまりバラエティーがありません。ジャイナ教徒になるのは大変のようです。せっかくですから、僕はジャイナ・ラヴァーズとジャイナ・デライトを試してみました。シンプルな味のピザを想像していたのですが、これがなかなか普通においしくて驚きました。ジャイナ教徒になるのも悪くはないかも・・・?ここは、ジャイナ教徒用においしいメニューを考案したピザハットを賞賛しておくべきでしょう。

アハマダーバードを訪れることがあったら、是非一度グジャラート州名物ジャイナ・ピザを試してみてください。

画像右上:インドのマクドナルド名物マハラジャ・マック・バーガー
画像左上:サブウェイの店内
画像右中:ピザハットの看板 100% Vegetarian
画像左下:ジャイナ・デライト(Jain Delight)
画像右下:ジャイナ・ラヴァーズ(Jain Lovers)


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