■物価の移り変わり 2007.3.20 update

わたしがスペインに来たのは、1997年の春でした。そう、今から10年前。初夏のような陽射しの下、語学学校の帰り道に昼間からテラスでビールやワインのソーダ割りを一杯飲んで、「ほんとに豊かな生活というのはコレだわよね」なーんてことを思ったりしたのを覚えています。

当時、スペイン西部の地方都市、サラマンカにいたのですが、ビール一杯は100ペセタ程度。当時のレートで日本円に換算すると80円くらいでした。数種類もあるタパス(おつまみ)から好きなものを選べるというシステムが気に入り、しかもビールの値段におつまみ代は含まれているので、お昼ご飯の前だというのに好奇心も手伝って、ビールよりおつまみ目当てにBARに通ったものです。トルティージャ(スペイン風オムレツ)やヘタ(豚の顔の揚げ物)などというお腹にたまりそうなものを選べば、まだ日本風に小食だったわたしは、それがお昼ご飯代わりにもなったものでした。

時は流れ、2007年。2002年に欧州統合通貨が導入されたとき、100ペセタだったもの(コイン洗車や子どもの乗り物など)が一気に1ユーロ(約166ペセタ)まで便乗値上げされ、同時に信用の薄かったペセタでの買い控えをしていた外国資本が、諸外国に比べるとまだ安くて場所的にも魅力的だった不動産の買占めを始め、不動産の急上昇が始まりました。これがすべての始まりだったような気がしますが、生活に関わるいろいろなものが高くなってきました。

一番わかりやすい例がタバコ。マドリッドのバラハス空港に着くとドゥカドスの匂いがする、といわれたほどの国民的な黒タバコは、数年前までは安いタバコの代名詞でもありました。何といっても、一箱100ペセタ(約90円)を切っていたのですから。それが、ここ数年の禁煙化政策もあって、税金が上がり、いまでは2.55ユーロ(423ペセタ=約400円)もします。ちなみにキャメルが2.75ユーロ(約430円)、マルボロは3.10ユーロ(約480円)です。

スペインで暮らすようになって、なにより楽しいと思っていたBARでの一杯も決して気軽な料金ではなくなってきました。なんせ村の中でもビール一杯が最低で1ユーロ(約155円)。地元の安ワインなら50センティモ(約80円)ですが、それでも10年前は25ペセタ(15センティモ=約20円)だったのですからねぇ。産地統制委員会の認定ワインになると、一杯1.2ユーロ(約180円)から。熟成期間の長いものになると、2ユーロ、3ユーロ、と上限がない感じ。街中のしゃれたテラスで飲もうものなら、さらに50円ほど上がってしまいます。こうなると、BARでの一杯は日常生活の一部ではなくなってきます。

以前は、自分がタバコを吸うときは、必ず周りの人にも「吸う?」と勧める「おごりタバコ」がよくありましたが、そういう習慣も失われつつあります。BARでワインを飲んでいて、楽しくなっちゃうと、「ここにいる人みんなにもう一杯!」とウェイターに言い放ったりすることも10年前は気楽に言えましたが、最近は夫婦二人で出かけても、BARのはしごすら、ちょっと考えてしまいます。以前は、友だち同士でコーヒーを飲みに行くと、「じゃ、今回はわたしが出すわ」、「ありがとう。次はわたしが持つから」という支払い方が普通だったのに、先日「コーヒー代も高いからさ、一人ひとり払おうよ」と一人が言い出し、変わってきたな、としみじみ思いました。

ホテル代や外食費も10年前のほぼ倍。その代わり、格安の航空券が出回り、お惣菜屋さんやファーストフード店、スーパーなどが増えています。不動産は上がり続ける一方で、どこもかしこもマンションが建設中。夫婦合わせて2,000ユーロ(約31万円)の収入しかないのに、毎月1,000ユーロを40年という高額ローンを組んでマンションを買う人が普通だという経済感覚。東欧諸国がEUに加盟したこともあって、増え続ける低所得の移民。スペインも変わらざるを得ないようです。

画像上:お惣菜屋さん。鳥の丸焼きだけでなく、こまごまとしたものが売られていますが、レストランで食べるより高くつきます。
画像中:マヨール広場のテラス。夏はいつも満席です。今はまだ寒いのにテラスでお茶をしている人がいました。
画像下:「閉店したなぁ、今度は何のお店ができるのだろう?」と思うと、ほとんどが不動産屋になっています。以前は家の写真だけでしたが、最近は家の値段まで表示されています。

【短信】世界的なことのようですが、スペインも暖冬で、例年より数週間も早くアーモンドの花が咲き始めました。いつもの年なら何度か降る雪も、今年は一度だけでした。今年の夏は暑くなるのかなぁと話しています。(3/8)


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