■深刻化する移民問題 2006.9.19 update

2005年1月から施行された外国人法施行規則に基づいて、2005年2月から5月にかけて、国内に在住する不法移民の合法化手続きを実施しました。合法化により、就労の機会が拡大されるので犯罪を抑制し、また税金を徴収できるようになるメリットが考えられたものの、合法化された人が家族を呼び寄せるケースが続出。さらに「スペインでは、また合法化プロセスが繰り返される可能性が期待できる」と考え、スペインを目指す移民が増加しました。まさにスペインの移民政策そのものが、不法移民をひきつける原因となっているのです。

その上、移民のほとんどが国籍や氏名を確認できる証明書(パスポートなど)を持っていないので、本国への送還が困難を極めます。不法移民は、ある期間をすぎると、国外追放令を持って収容施設を出ますが、この国外追放令そのものが、スペイン国内通行許可証を入手することにもつながっています。こうして、生命の危険をおかしてでも、またマフィアに莫大なお金を払ってでも、スペインに渡ろうとする移民が増えています。

実はこの不法移民の問題は、アフリカに隣接している地理上の理由もあって、以前からあるものでしたが、この夏、命がけで海を渡ってくる移民の数はすさまじいものでした。一日300人以上。多いときは700人。主な上陸先となっているカナリアス諸島だけではとうてい処理しきれる数ではなく、大変深刻な状況になってきました。サパテロ首相は、この不法移民の押し寄せに歯止めをかけるため、EUに支援を求めること、電子監視システムSIVEの導入を決め、これまでのスペイン政府の措置が不十分だったことを認めました。世論調査でも、最大関心事として移民問題が失業問題の二倍近くに達しています。

身分証明書も持たず、靴もはかず、死ぬ覚悟でやってくる移民たち。中には臨月の妊婦の姿も見られます。スペインで出産すれば、子どもはスペイン国籍を取得する権利があるので、家族全員を合法的にスペインに呼び寄せることができるからです。スペインの国籍=EUの居住許可労働許可でもあるわけですから、必死になる気持ちもわからないでもありません。特にサブサハラ移民と呼ばれる、セネガルやカメルーン、リベリア、ニジェリア、コンゴ、スーダン、マリ、ナイジェリアなどから来る移民は、通過国で働きながら何年もかかってスペイン国境にたどり着くそうです。移民の出身国の貧困問題を解決することが、この移民問題の解決にもつながりそうですが、いずれにしろ簡単なことではありません。

移民の多くが、建設現場や葡萄の収穫などの重労働で、しかも低賃金な職に就き、ベビーシッターなどもスペイン人の半額程度で働いています。それでも、郵便局から100ユーロ(約1万5千円)くらいのお金を自国に送金している姿をしばしば見かけます。ただし、まともな職につけるのは幸運な方なのかもしれません。マフィアの牛耳る違法なコピー商品を露天で売ったり、最悪なのは犯罪に手を染めてしまったりするパターン。

一方、中国移民との経済的な摩擦もあります。日本の100円ショップをお手軽にした感じの60センティモ(約90円)ショップの多くが中国人経営、少なくとも中国からの仕入れです。安いバックや靴など、スペインのものと競合するものもあり、数年前には中国人業者の靴倉庫焼き払い事件も起こりました。

急増する移民問題は、静かな過疎の村にも発展し、全校生徒6人のうち5人までもが移民で、スペイン人の親が驚いて転校すら考えたというニュースも報道されていました。わたしが住んでいる村もほんの5年ほど前は外国人といえば数えられるくらいだったのに、今では公園で遊んでいる子の中で純粋なスペイン人の方が少なかったりするくらいです。これからどうなっていくのか、一移民のわたしも心配です。

画像上:路上で歌っているバンドや大道芸人もスペイン人ではない割合が高いように感じます。
画像中:どこの学校の子供たちもインターナショナル。
画像下:久しぶりに訪れたグラナダにはアラブ風のお土産屋が激増していました。


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