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スペインは、葡萄作付面積が世界一、ワインの生産量は、フランス、イタリアに続いて世界第三位の、いわばワイン大国です。全国的にワインが作られていますが、スペイン独自の葡萄品種も多く、地域によって特徴があります。
バルセロナ近郊ではCava(カバ)と呼ばれるスパークリングワイン、アンダルシアではJerez(ヘレス、シェリー酒)ができます。リベラ・デル・ドゥエロ地方では、フルボディの赤ワインが美味しく、海産物が豊富なガリシア地方では神前結婚式の三々九度で使われるような白い杯で白ワインがよく飲まれます。
さて、そんなスペインでは、9月末から10月にかけてワイン用の葡萄が収穫されます。地元新聞にも、葡萄の出来に関することが、毎日のように大きく報じられています。夏の間はあまり雨が降らないスペインですが、この時期、大雨やヒョウが降ることもあるため、葡萄の糖度が14度くらいになった1、2週間のうちに一斉に収穫します。
中腰の姿勢を続けて、手作業で葡萄を摘み取る作業は重労働。しかも短期の仕事になるので、一般のスペイン人にはあまり好まれないらしく、外国人や学生アルバイトが多いそうです。ワイナリーにトラックが到着すると、二人ほど登ってフォーク型のスコップでぽっかり開いた穴の下にある除梗破砕機に山積みの葡萄を落とします。これも大変な力仕事。小さな葡萄も1トン、2トンという単位になると迫力が違います。
青空の下、ワインを飲みながら生ハムやチーズをつまみながらの休憩中、「昔はなぁ、ワイナリーの近くにはネコはいなかったんだぜ」とお決まりの話が始まります。「樽の中に入れたネコがあばれるから、葡萄がよくかき混ぜられるし、最後には酵母の栄養になって良かったのさ」。ブラックジョークが好まれるのは、どこの国も同じなのでしょうか。
葡萄を山積みにしたトラックが行き交うので、あまーい香りが村中に漂い、日ごろは静かな村も大賑わい。道路に一房、二房と葡萄がこぼれ落ちているのもムードを盛り上げます。ワイン用の葡萄は、食用のものに比べて粒が小さく、皮も厚いので、デザートとして食べるには不向きですが、食用のものよりずっと甘いのです。手についた葡萄の汁はシロップのようにべっとべとです。
そんな葡萄の収穫が一段落した頃、それを祝う収穫祭が各地で開かれます。現在、圧搾は機械化されていますが、伝統的な足踏みでの葡萄絞りのパフォーマンスがあり、絞りたての葡萄ジュースが配られます。モストと呼ばれるこのジュースは、日本のグレープジュースとは全く別物。飲み物用としてのモストもあるのですが、ワイン用のモストは甘すぎて清涼飲料水にはなりません。糖分がアルコール発酵すると美味しいワインになるのだけど。
そして葡萄の収穫後、1、2ヵ月後にロゼワインや白ワインが出荷されます。さらに続いて、樽熟成をしないタイプの赤ワインが出来上がります。産地統制委員会の認定を受けるワインは、市場に出回るまでにさらに時間がかかります。
そうそう、庶民的なワイナリーでは、タンクから直接ワインを買えるので、空き瓶を持っていけばチューと注いでくれるんですよ。ペットボトルでも大丈夫。一リットルが100円から200円。出来たてのロゼワインや白ワインは、新鮮な葡萄の香りがいっぱいで、熟成された赤ワインのような複雑な味わいはありませんが、また違った美味しさがあります。気の置けない友だちとピクニックに持っていくときなどにはピッタリですね。
近所のBar(バル)に行くと、他のお客さんに自家製ワインを勧められたりするのもこの時期。お店の人も一緒に飲んで、去年の方が美味しかった!なーんてワイン談義に花が咲きます。冷夏だった今年のワインはどんな出来でしょうか?楽しみなような心配なような。
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