■空の旅 2004.8.16 update

たった10年ほど前まで、中国で飛行機に乗るということは大変な贅沢でした。贅沢というよりは、ある一定の身分の人しか乗れない乗り物だったといってもいいかもしれません。当時は汽車の切符を買うのでさえ身分証明証がいりました。軟座(ルアンズオ)と呼ばれるグリーン車はとても値段が高いので、普通の人は硬座(インズオ)という、一シート三人掛けで背もたれがまっすぐ90度の硬い座席の車両に乗っていました。中国大陸を何日もかけて走る汽車でも、大部分の「普通の人」たちはぎゅうぎゅう詰めで硬い座席や連結部にじっと座っていたのです。

ところがここ数年で状況はずいぶん変わりました。昔は外国人と一部の中国人VIPのためだった汽車の軟座や飛行機が、今では比較的気軽に乗れる乗り物となったのです。それは社会の変化がもたらしたものです。以前は、一般の中国の人々に移動の自由は大きくは開放されていませんでした。今のように全国あちこちに出張するビジネスマンは珍しかったですし、「休日に、他都市へ旅行に行く」というのもまだ最近広まってきたことです。大都市を中心にライフスタイルが変化してきて、高級だった乗り物が身近なものになって来ました。

私自身も、上海から重慶へ引越しをしてから飛行機の国内線を利用する機会がぐっと増えました。上海―重慶間は、上海―大阪間よりもまだ遠いので、飛行機の便が増えて乗りやすくなっているというのは本当にありがたいです。汽車や長距離バスでは何日もかかってしまいます。

ただ、庶民化していろいろな人が利用するようになった空港は、外国人の私にとっては以前ほど快適さがなくなっています。上海の国内線空港は、以前は国際空港として長く活躍したところだったのでそれなりの規模がありましたが、重慶の空港は建物も小さく長距離バスのターミナルのようでした(サッカーアジア大会の開催に向けて新ターミナルができましたが、私はまだそこに入ったことがありません)。地方の空港の多くはまだこんな感じだそうですが、搭乗ゲートは数箇所しかなく、小さな喫茶スペースと食堂、売店があるだけで、トイレも各フロアにひとつずつしかありません。そのトイレも多くの人が使うのできれいとは言えず、日本人の私にはちょっと入るのに勇気がいるのです。

困るのは飛行機が遅れるときです。特に重慶は「霧の都」といわれるくらい天気の悪いことで有名です。実際私も、何度か天候のせいで数時間飛行機を待ったことがありますが、重慶の空港で出発を待つのがいちばん苦痛でした。先日、重慶から上海に行くのに、天気が悪くいつごろ出発できるかのめどが立たないまま待った4時間半はかなり辛かったです。ゲートが少ないので、次の便に乗るはずのお客さんもどんどん同じ待合に入ってきて、売店の飲み物などもすぐに品薄になり新聞や雑誌もめぼしいものはもうなくて、時間をつぶすにもどうにもならず、席を立つこともできず難儀をしました。

また、空港内のアナウンスもどういうわけかほかの空港と違って聞き取りにくく、ゲートが変更されていることやいつごろ飛行機が到着するかなど重要なことが、自分で係員のところまで行って聞かないとわからないというのも困りました。中国語がわからない外国人客にとっては不安なことです。このときの状況は、上海から重慶に来る飛行機が重慶の天候回復を待ってしばらく上海で待機していましたが、めどが立たないため重慶から最寄りの成都へ飛び、成都で天気の回復を待ってから重慶へ来たということでした。しかし、そういった状況をゲートにいる係員はまったく把握しておらず、ただ「天気が悪いので飛行機がいつ着くかはわからない。何の連絡も聞いていない」を繰り返すだけで、私たち乗客をやきもきさせたのでした。

中国を旅行する外国人が年々増えている状況や国内でもより高度なサービスの提供がなされるようになっていることを考えると、空港ターミナルというハード面だけでなく、その中で働く人々の意識を変えていくなど、ソフト面でももっと大きな変化が必要だと感じます。今後に期待したいと思っている私です。

画像上:重慶江北空港の搭乗ゲート。中国の新しい長距離バスのターミナルに雰囲気が似ています。現在は新ターミナルになっているはずです。
画像中:果物のワゴンの奥に売店があります。主にお土産物の辛いお漬物や火鍋の素、お茶などで店の半分のスペースを占めています。
画像下:ようやく飛行機に搭乗できました。窓から見た空港は飛行機も少なくて少し寂しいです。

【短信】夏休みで日本に帰ってきています。出発前に重慶の暑さを経験した体には、日本の暑さはそれほどこたえないと見えて元気です。人間の自然に対する適応力というのもまだまだ捨てたものではないと感じる今日この頃です。(7/28)

重慶に新ターミナルができたと書きましたが、先日、日本から戻ってきたときにまだ完成していませんでした。今は、「10月1日」の国慶節の完成を目指していると聞きました。もちろん、そのときに間に合うのかどうかははなはだ疑問ではありますが・・・。お詫びして訂正させていただきます。(9/2)


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