■花より羊 2003.5.19 update

英国の春といえば、ラムに桜にお玉杓子でしょうか(最後のは我家だけの話題ですが)。英国へ住む前に予想していなかったのが桜の花の数の多さです。3月末から4月一杯にとにかく至る所で咲き乱れます。種類は濃いピンクのボタン桜系が大半でそれに続いて白い山桜が多く、ソメイヨシノは見かけますが数は少ないようです。郊外の街路樹にも桜が多くそれなりの樹齢ですので、ドライブをしていても目を楽しませてくれます。庭に桜の木を持つ家も多く、時には車を停めて思わず見とれてしまう事もあります。我家にも裏庭の奥に大きな山桜があり、同じ頃に林檎の花も咲きますのでそろそろ緑が増えだした庭に彩りを添えてくれます。

春のもうひとつの話題そして味覚はラムに尽きます。ラムとは子羊の肉のことです。羊の肉に関しては旦那と私は共通の経験を持っております。それは子供の頃の味覚です。当時日本では輸入肉のマトンが安価であり、私の家ではよく食卓に上がりました。旦那の家庭も同じだったようです。独特な臭みがあり熱いうちはまだしも、冷えてしまうと脂分が固まってしまうのであまり歓迎されるものではなかったようですが、旦那も私も喜んで食べておりました。旦那なんかは「あの冷えた脂がまたいいんだよな」なんて言ってます。英国へ来る前はそれが私達の羊肉に対するイメージでした。

ところが、こちらではスーパーの肉コーナーでは牛肉、豚肉、鳥肉にならんでラム(lamb)が同じ位のスペースを取り、値段が牛肉と変わらないのが不思議でした。従って、最初の春にラムがやたらに話題に上るのがまったく理解出来ませんでした。初夏の頃、旦那の会社の行事で夫婦で晩餐のご招待に預かりました。この時のメインの肉料理の美味しかったこと!ローストした肉料理でしたが、肉の中はピンク色で柔らかくてジューシーで味はなんとも言えず滋味があり、初めて経験するものでした。二人で思わず顔を見合わせたものです。早速旦那が隣席の仲間に質問してこれが「スプリングラム」ということを学びました。

あのマトンとこのラムが同一種類の肉とは到底思えません。あとから調べたところマトンは所謂大人の羊の肉で、ラムは子羊の肉でした。辞書で比喩に A mutton dressed as lamb というのがありelderly woman got up to look youngと説明がありました。何処の世界も同じだなと思わず笑わされました、私も気をつけなければ(意味は、画像説明*)。

マトン=羊肉 と思い込んでいたのが大きな間違いでした。またラムにも二種類あり ram は雄羊で lamb が子羊です。丁度映画の silence of lamb が上映されてた頃であり、邦題では「羊たちの沈黙」と訳されてますがラム肉の素晴らしさを知った後では、これは「子羊たちの沈黙」にすべきだと話していたのが思い出されます。

現在の日本の事情は知りませんが、あの頃出回っていたのは毛を何度も刈り取った後の爺さん羊の肉だったのでしょう。英国で一般に食用として出回っているのは小振りのラム肉で、マトンは肉屋には置いてありません。そのうちでも生後3、4ヶ月のまだ乳飲児の肉をスプリングラムと呼びます、仔牛(veal)と同じです、あれも結構なものですよね。スプリングラムは高価ですがそれなりの価値はあります、脚一本が4千円前後でしょうか。しかし普通のラム肉でその良さは充分味わえます。俗に「海岸近くの牧場のものは潮風に吹かれた草を食べて育つためちょっと塩味が効いてよろしい」と言われてますが本当にその通りです。季節により輸入物が出回りますがラムだけは必ずBritishの表示のものを選びます。

しばらくは、ラムは我家の肉料理のメインでした。英国のアンガス牛は赤身のしっかりした肉質でこれまた素晴らしいものですが、そちらには目もくれずひたすらラムローストを食べました。肉類ではラムが一番との声が挙がるのも頷けます。今までで一番感動したのがサボイホテルのローストです。旦那が知人数人に別々に「ロンドンでローストビーフが一番美味しいのはどの店か」と尋ねたところ全員が異口同音に「サボイホテルだ、但しメインダイニングではなくて、グリルの方だ」と答えたそうです。早速でかけて驚いたのは目玉メニューの日替わりロースト料理が一週間のうち一日だけがビーフで、後の日はすべてラムだったという事です。両方を試しましたが私には甲乙つけ難いというのが正直なところで、いつも予約を入れる時に曜日の選択に迷います。 結構なお値段のお店で年中通える場所ではありませんから、この次は何時になるのかが楽しみです、また迷いますね。

ラムローストには我家は脚の部分を使います。塩、胡椒、それに少量の大蒜等の調味料をよく擦り込み暫く置いてからオーブンに入れますが、時間の設定だけが問題でこれは焼け具合の好みによります。外側のこんがりした薄茶色の部分から骨に近くなるに従い軽く血の滲んだピンク色なって行き、今思い出しても生唾が出ます。普通のラムでこれですからスプリングラムとなると夫婦で興奮します。ローストの時間についてもケンケンガクガクです。それがもうすぐ食べられます。

食べる話が先に出てしまうと非常に紹介しにくい写真です。彼らは可愛いのです。2月頃から牧場には生まれたばかりの子羊が現れます。何故か顔が黒く成長するに従い色は普通になります。私は彼らを目の前にするとスプリングラムの事など忘れてしまいます, しかし旦那は横で涎をたらしております。

画像上:近所の街路樹
画像下:(左)食事に集まってくる隣村の牧場の親子連れ
画像下:(右)スプリングラム候補*旦那の迷訳、「ぶりっ子の年増」


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