■晩秋この頃 2002.12.16 update

10月末の日曜日に英国はヨーロッパ大陸より一月遅れて冬時間になります。しかし、時間を調節しても太陽の軌道はどんどん傾いていきます。7月頃には頭の真上を朝の5時頃から夜は10時過ぎまでゆっくりそしてしっかり明るく照らしてくれていたのに、12月近くでは明るくなるのが8時過ぎで頭のてっぺんではなく右肩やや上あたりをそそくさと、それもたまに首を出し午後3時過ぎには消えて行きます。9月の暖かさが嘘のようです。この国では日光欠乏性鬱病という症状があって、太陽に恵まれた場所から来た人が暫くここに滞在すると鬱病になり治療としては擬似太陽光を照射するなんて話を数年前旦那が仕入れてきて、「自分もそれに違いない」と強調しておりました。鬱病とは一番縁のなさそうな御仁なのですが。

特に収穫祭的な行事のないこの国で盛り上がるのが、晩秋のガイ.フォークス(Guy Fawkes)のお祭りです。1605年に彼とその仲間が起した事件で、スコットランドからやってきたジェイムス一世の御世に清教徒に対し劣勢となったカソリック信者が勢力挽回を図るため、あの国会議事堂を議会開催中に爆破して国王、全議員を吹き飛ばそうとした陰謀で、決行前日に露見し建物の地下から大量の爆薬が発見されたそうです。彼等は見せしめのために四つ裂きの刑となりました。この事件を記念して11月5日の夜は英国各地で花火、焚き火の催事があり、事件の関係者に見立てた人形を焚き火で燃やします。因みに彼は、先日発表になった『偉大なる英国人』投票の結果で第30位でした。

近年この時期は、スーパーで花火の特設売り場に行列ができる程の盛況ぶりです。地域によっては盛大な花火大会を行う場所もあるとの事ですが、我家の近所は子供を持つ家庭を中心に個々にそれぞれに楽しんでいます。最近では待ちきれず一週間くらい前からドンパチ、ピュ−という音で夜はやかましくなります。5時を過ぎれば真っ暗ですので、二階の窓越しに方々で花火があがるのはそれなりに良いものです。

花火くらいならいいんですが、最近英国では色々な方面で火の手があがってます。まず、消防士のストライキ。半年前から労使で話し合いを続けてきましたが折り合いがつかず、11月半ばに二日間のストライキがありました。労使といっても、使用者側は地方自治体で実際の資金は中央政府から出してます。政府としては他の公務員の昇給要求への波及もあり、おいそれと認めるわけにもいきません。ストの間、1万9千人の軍隊(全体の10%)が50年前の旧式消防車でその任にあたりました。勿論最新式の器具に比べて機能が劣るのは当然ですし仕事も慣れてませんので、人命救助だけに重きを置き消火は二の次という状態です。そのさなかにマンチェスターの花火工場で大火災があり、スト中の消防士が一時それを中止して軍隊に協力するという一幕もありました。第二次ストが11月22日から8日間続きました。これに付随して、地下鉄の運転手が事故にあった時に満足な救助活動が得られないとして就業を拒否し、一部地下鉄の路線及び駅が閉鎖されています。その間に学校の先生達も1日ストを行うなど拡大の様相を呈しました。その後対立はやや軟化し、12月4日から予定されてた3回目(8日間)のストは中止になり第三者の調停に委ねられる事となりましたが、組合側は結果次第ではクリスマス直前に次のストは決行すると言っております。近所の皆さんもこのところ火の用心には充分気を配ってます。

ご存知のように今イラク問題で世界中が緊張してますが、最悪の場合、この国の軍隊が出動するとこのストライキは大きな影響を及ぼす事になります。首相が直接にテロ警告を出すなど等、この数年比較的静かだった年末もきな臭くなりそうです。IRAのテロが激しかった頃は盛り場での爆弾騒ぎが年中行事で、特にクリスマス近くにはオックスフォード通り(ロンドン一の盛り場)には絶対に近寄るなと言われてたんですが、今年はまた同じ状況になりそうです。旅行を計画の方はご注意ください。

故ダイアナ妃の二人の執事の窃盗容疑の裁判で、(情報の暴露を恐れた)王室が待ったをかけ一人は無罪放免になりました。この事件以来、王室の人気はガタ落ち。6月の女王戴冠50年記念の盛り上がりが嘘のようです。女王が直接この執事と会った時に、彼女が『この国には見えない大きな力が動いてるから気をつけるように』と脅したとか脅さないとかのニュースもあります。実は妃がまだ健在でチャールス皇太子と一緒だった頃に、彼等の館で不祥事件が起こりました。事件の内容は私の口から言うのを憚られるような代物で、旦那は大変喜んでおりました。被害者が訴えたのですが皇太子が握りつぶしたとの事、その顛末に関係したテープがその執事の手元にあり、裁判が進むとその件に触れざるを得ず王室としては愉快な話ではなくなる可能性があったとの事です。尚、もう一人も、王室の介入はありませんでしたがやはり無罪でした。次にアン王女が彼女の犬がウィンザー城付近を散歩中に近所の子供二人に怪我をさせたとして有罪になり、1649年以来初めての犯罪暦を持つ王室のメンバーという事になりました。1649年の事件とは時の国王チャールス一世が大逆罪で首を刎ねられたとの事で、スケールという意味では大きな差がありますが。 有難くないニュースが多い近頃、王室関係のこの低次元のゴタゴタ話はそれなりに皆を楽しませてくれており、旦那は『王室の存在意義とはこういう事か』と感心しております。

BBC主催の投票番組『偉大なる英国人トップ100』の結果が出ました。後世への遺産、天賦の才、統率力、勇気、慈愛の五つの観点からの個人の偉大さを競うものです。インターネットで海外からも投票できるためミーハー的要素も入っているとは思いますが、それはそれなりに興味のあるものです。最後の放送にはグループに分かれたトップ10の支持者達が夫々に応援演説合戦を行いなかなか面白いものでした。ダーウィンの曾曾…孫なんて方も出演していました。トップはチャーチル元首相、2位にブリュネル(産業革命時の技師)、そしてダイアナ妃と続きます。ダーウィン、シェイクスピア、ニュートン或いはジョンレノンとお馴染みの名前が出てきます。サッチャー元首相は16位、エリザベス女王は24位、ベッカムは33位と色々意見はあるとは思いますが冬の夜長にのんびりこのリストを眺めるのも一興と存じます。全リストは『Yahoo UK』 で、’greatbritons’の検索で見る事が出来き、各人の詳しい説明も添付されております。

この季節の味覚は鮭です。先日手に入れた5.5kgのもの、邦貨4000円弱です。魚を捌くのが旦那の趣味ですので、私は隣で見物を決め込みます。大振りに切った身やカマの塩焼き、腹の脂の乗った部分の刺身、氷頭(ヒズ)なます、押し寿司、そしてフレークで楽しみます。このフレークはお握りにすると絶品です。一番喜んでるのがやはりギズモです、調理器の横にしっかり座り込んで魚が焼きあがるのを待ち、一番美味しい部分の焼きたてが彼のお皿に山盛りになります。

ギズモ(シャム猫)は冬支度です。写真のラックは彼のお気に入り。一昔前に近所のペットショップで見つけたクリスマスプレゼントです。この国の暖房はボイラーでお湯を沸し各部屋のラディエターを通して熱を放射する仕組みで、このラックはラディエターに直接掛けるので非常に暖かく快適で、冬はほとんどここでお昼寝です。猫が自分で考えついたのではないかと思わせる逸品です。

画像上:スト中の消防署、通行中の車がクラクションで応援していきます。
画像中:流し台に置いた鮭。1リットル入り醤油ボトルの大きさと比べてください。
画像下:ネコはコタツで〜♪ならぬ、ラディエターに引っ掛けたラックでお昼寝するギズモ。


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