■SARS(重症急性呼吸器症候群)について 2003.4.7 update

ホーチミン勤務を終えて、3月なかばにハノイにもどってきた。ほっとしたのもつかぬ間、SARS(重症急性呼吸器症候群)騒ぎに巻き込まれてしまった。ひとりの香港からやってきた旅行者が発端となり、ハノイのある病院の医療関係者ほとんど全員にそのウィルスが広がってしまった。その病院は現在閉鎖されている。現在、4人の医療関係者が死亡し、まだ重症の患者も多くいる。

このことは日本でも話題になったそうだが、イラク戦争が始まってからはあまり話題にされなくなってしまった。実はこの病院で私は去年の夏まで働いていた。なので、スタッフの多くは顔見知りで、中でもいちばん仲の良かった、薬剤師の女の子は、感染はしていないが、長い間病院に隔離されている。以下は、彼女(フォン)が送ってくれた、メールである。日本のみなさんに彼等の現状が伝われば、と思い、彼女の許可を得て翻訳することにした。

以下、青文字が手紙の引用です。

みなさんこんにちは。お元気ですか?いかがお過ごしですか?私の最近の近況をお知らせします。そしてみんなからなにかアドバイスをもらえるといいのだけれど。。。

みなさんは私が働いている病院で最近起こったことについてご存じですか?WHOが毎日、肺の感染症をひきおこす新しい奇妙なウィルスについて報道していますよね。私達の病院は今、たいへんな危機にたたされています。スタッフ全員がおかしくなっています。香港から来たあるアメリカ人の患者が原因不明のウィルスで亡くなったのをご存知ですか?問題は私達スタッフがこのウィルスの危険性に気付かず、隔離病棟に移さなかったことでした。彼の病状が悪化したときにはもう手後れですべての看護士とこの患者のケアをしていたスタッフが侵されていました。

今、病院全体に感染は広まっています。病院は閉鎖され、そして他の入院患者とスタッフの31人、うちフランス人1人、ベトナム人医師5人が病に倒れ、入院しています。そのほかにも10人の患者が入院を断わり、自宅にいます。みんなが同じ症状で、熱、頭痛、倦怠感、咳、、、私もだんだん恐くなって来ました。10人が深刻な状況で、集中治療が必要です。もう彼等に会えないのではないかという気がしています。4人が人工呼吸器が必要です。

現在、薬と医療機器が不足しています。ほかの病院から借りている状態です。だけどほかのみんながこの状態になったら、いったいどうしたらいいのでしょう?明日、WHOからの専門家とフランス人の専門家が来るのでそれだけがのぞみです。この病院ではRELENVAという抗ウィルス剤が不足しています。私達、感染していないスタッフも疲れてきています。

私の同僚が次々と病に倒れて行くのを見るのはとてもつらいです。今、10人のドクターと看護士で30人以上の患者を昼夜問わず世話しています。5人の看護士はだんだん症状が悪くなっています。彼等のことを考えると夜、寝ることができません。つい、昨日、冗談をいいあっていた、婦長が今、彼女も感染の危機におちいっています。現実が私の想像を超えています。こんなひどい状態は生まれてはじめてです。みなさん、ひどいと思いませんか?

WHOのドクターは「これはインフルエンザAやBではない、香港から来た、インフルエンザによく似た症状をあらわす、新種のウィルスだ。まだ特効薬や予防注射もない」彼は私達に香港の病院でもここで似たことが起こり、20人の看護婦とドクターが感染したと伝えました。私、そして私と同じ薬剤師のタインはまだ感染されていないようだけど。。。私は少し咳がでますが、たぶんこれは気候の変わり目でなっているんだと思います。あの病気にはかかっていないと思う。。。普通の風邪だったらいいけど、香港のウィルスだったらどうしよう?予防接種もないし。私達はRELENVAとTAMIFLUいう薬をオーストラリアから輸入しようとしています。ドクターはこの薬しか今は使えないと言っていますが???御存じの通り、ベトナムでは今だかつてなかったことなのでMOHにも報告しています。どうか、みなさん、私の幸運を祈っていてください。

私はウィルス感染拡大防止のために病院にもう3日間も閉じ込められています。だから私はみなさんにウィルスをうつしたりはしませんが。。。私もなるべく平静を保ち、ほかのスタッフを安心させてあげるように心掛けているけど、私自身もすごく心配です。閉じ込められてから両親に会えないし、電話で安否を伝えるだけです。それでも両親は私の声を聞いて安心してくれています。確かに、私はこの病院の中で感染していない、数少ないラッキーな人です。今日はこんなところです。明日もこのまま生き延びられます様に。。。みなさんもお体におきを付けて。(フォンより)

現在のところ、この病気の予防法はマスク、手洗いぐらいしかないらしい。私も職場ではマスクを着用しているが、どこまで防げるのかは、はっきりいってわからない。大使館は不必要な外出はさけるようにと在住日本人にアドバイスをしている。

フォンは3月29日に病院を出ることになりそうだ。しかし、そこからそのまま家にもどらず、どこか旅行にいくとか。家族や隣近所の人たちに気を使ってのことだろう。日本のようにマスコミが煽ることがないので、街は平静を保っているが、もし、病院内だけでなく、町中でアウトブレイクしたらと思うと、恐ろしい。早く普通の日常にもどることを心から祈っている。


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