■ワクワクドキドキの仕立て屋 2002.5.6 update

ベトナムでかわいい服を着ていると、きまって聞かれるのが「店で買ったの?、それとも仕立てたの?」という言葉。昔は日本でもたくさん服の仕立て屋があったそうだが、現在ではあまりみかけない。ベトナムには現在もたくさんの仕立て屋があり、とくに女性は頻繁に訪れている。とくに衣替えのシーズンは混雑しているようだ(南北に細長いベトナム、北部のハノイ周辺は亜熱帯気候で、四季がある)。

ベトナムにも既製品はたくさんある。ではなぜ仕立て屋が流行るのか?この疑問を考えてみたところ、理由の一つにベトナムでの人件費の安さや、オリジナルのデザインが作れるという稀少価値感などが挙げられるが、もっとも大きいのが、生地選びから採寸、その後のできあがるまでのワクワク感、ではないかと思う。かくいう私も現在、仕立てにはまっており、家には市場で購入したさまざまな生地が仕立屋に行く出番を待っている。

生地は仕立て屋にも置いてあるが、ベトナム人は市場へ買いに行く人が多いようだ。その方のが安いからである。ハノイには生地市場や生地通りなるものがいくつかあり、そこでは目が眩むばかりの量の生地がずら〜っと並んでいる。綿や絹、化繊まで整とんされずにごちゃごちゃ並んでいる。生地市場で最大のドンスアン市場など、1周するだけで2時間くらいかかりヘトヘトになってしまう。それでも女友達と「お揃いでアオババ(女性用の寝巻きのようなもの)作ろうか?」「この生地私に似合うかな?」とわいわい言いながら見て歩くのは楽しいひとときである。お目当ての生地がみつかったら店のおばちゃんとの値段交渉に熱が入る。
「おばちゃん、この生地は1メートルいくら?」
「4万ドンだよ」(100ドン=1円くらい)
「高いなぁ(相場を知らなくても言うお約束の言葉)。2万5千くらいじゃないの?」
「なにいってんの。これはものがいいし、あまり手に入らないんだよ」
「もうちょっと安くならない?」
「3万5千でいいよ」
「え〜っ。3万にできない?」
「だめだめ、3万5千!」
「じゃぁ、2メートルちょうだい。幅が広めのズボンだったら2メートルでいいよね?多めにカットしてね!」
という具合である。

そして、購入した生地を持って仕立て屋に向かうのである。仕立て屋では店の女主人とデザインについての相談をする。ここで逐一細かくリクエストを伝えないと、とんでもないものが出来上がってしまうので、気が抜けない。日本人はえてして「言わなくてもこのくらいのことはしてくれるだろう」という気持ちがあるので仕立て屋でよく失敗している。ベトナム語が流暢でない私は身ぶり手ぶりの気合いで意志の疎通を測っている。デザインのデッサン画を持って行ったりもする。今までの経験から言うと、ベトナム人は肌にぴったりのサイズに仕上げる傾向がある。以前、スーツを仕立てた時にジャケットがきつくて「これじゃぁ、中にセーターが着られない!もっとゆったりめに作って」と言ったら「この方がきれいなのにねぇ」とぼやかれた。このぴったり好みの感覚はアオザイ、チャイナドレス文化からくるのだろうか?値段はシャツ1枚なら仕立て代は5万ドンくらい。生地代が4万ドンくらいだから合計で1000円もしないが、ベトナムの既製品に比べると若干高めだそうだ。いかに安くて上手な仕立て屋をみつけるか?がベトナム女性の最大の関心事のひとつといっても言い過ぎではないと思う。

ところで仕立て屋には服を仕立てるだけでなく、サイズが合わなくなったものを直したり、最近では既製品に好みの刺繍を入れたりもできる。このサービスを利用するようになって、既製品のズボンは少なくとも3センチはウエストが大きくできることを知った。なじみになると余りの布でシュシュ(髪をまとめるシニョン)を作ってくれたりもする。ほかの客の試着を眺めるのも楽しい。女性限定の社交場である。先日「明日、注文していたワンピースができあがるの」とベトナム人の友人(大学生)に言ったら「ドキドキしますか?」といたずらっぽく笑いながら聞かれた。とうぶん、仕立て屋通いはやめられそうもない。


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