■シラミ(虱)のプーさん 2008.5.13 update

フランスに住んでいる、学童期の子供を持った日本人が驚くことのひとつに、こういった学校からの通知があります。「またシラミの季節がやって参りました。クラスの生徒にシラミが発生しましたので、各家庭でのご注意をお願いいたします」

学校からの連絡ノートを開いて、初めてこのお知らせを読んだ時は、しばし目が点になったのを覚えています。一瞬、フランス語の読み間違いかと思いました。でも、何度読み返しても、まさしくその言葉でした。えーと、シラミって、どういうものだったっけ? 注意するって言ったって、何をどうすればいいのやら? 蚤(ノミ)とは違うんだったけ?

日本に住む母に話をすると、「えぇっ、日本じゃ戦時中によくいたものよ。栄養失調だったし、不衛生だったし、よく子供たちは頭に駆除用の粉をかけられていたの。でも戦後、見たことないわよ! あなた、一体、フランスって、何世紀に住んでるの・・・」と電話の向こうで母は絶句していました。いや21世紀には違いありません。しかも、フランスは先進国のひとつとして数えられている国なのです。

シラミは髪の毛に付き、頭皮から血を吸って生きている体長3mmほどの寄生虫とのことです。蚊と同じで、喰われれば強烈なかゆみが起こります。寿命は約1ヶ月、メス一匹は約10個の卵を産み、7〜10日後にそれが孵化するそうですから、ネズミ算式に増えていくわけです。暖かいところが好きなので、特に耳のうしろを好むそうで、子供にシラミが付き始めたかどうかを調べるのには、耳のうしろを見るのが手っ取り早いやり方です。小さな白っぽいツブツブが髪にくっついていて、手でつまんでも取れなかったら、フケではありません。

田舎だから、寄生虫が多いのかと思えばそういうわけでもなく、都市部でも同じように発生しているとのこと。不衛生な子供が感染するのかと思えば、それは誤解で、シラミは乾燥していて、細くてやわらかく、脂っこくない髪、つまりむしろ衛生的な髪がお好みのようです。細くてやわらかい、ということで幼い髪が狙われるのでしょうか。ごく一部の問題のある子供だけが感染するのではないのは、あちこちのファーマシーが証明してくれます。というのも、ファーマシー内のよく売れる製品の棚には、前面にシラミ駆除用シャンプー、予防ローションがずらりと並んでいるからです。

駆除用シャンプー、以前は殺虫剤配合のものが多かったようですが、それでは頭皮を痛める上に、さらに免疫力を強めたシラミを発生させることになることがわかり、現在ではジメチコンというオイル成分を配合したものに変わってきているそうです。このオイル成分がシラミの鼻腔に入り、呼吸を困難にし窒息死させる働きをするそうです。死んだシラミは髪にこびりついたままですから、その後、専用の細かい目の櫛で髪を梳かし、落としていくのです。

シラミに感染したことがわかったら、薬用シャンプーを使用するだけでなく、枕やシーツ、衣服や帽子、ぬいぐるみ、バスタオルなどもすべて60℃以上の高温で洗濯しなければなりません。というのも、生息地である髪を離れた後も、布の中で生きながらえるからだそうです。どうしても高温洗濯できないものであれば、プラスチックの袋に入れて密封して10日間放置するか、冷凍庫で24時間凍らせることも効果があるそうです。子供1人がシラミを連れてくると、お母さんはしばらくの間、家中の洗濯に追われることになりますから、お疲れ様です。

また、子供たち同士で帽子や髪飾りを交換したりすることも控えたほうがよいようです。そうやって、もらってきてしまうこともあるからです。殺菌効果のあるラベンダーのエッセンシャルオイルを数滴、洗濯物や髪に垂らすのも予防によいそうです。ラベンダーウオーターもよいでしょう。そして何といっても、シラミの付いているわが子を発見したら学校を休ませ、すぐにクラスに通知して他の親にも予防処置を取らせることが、感染を広めない手段です。普通に髪を洗っているだけでは感染する可能性が高いからです。

学校からの通知は、その後、定期的にやってくることがわかり、「また、シラミがクラスに戻ってきました・・・」の文句で始まる文章には、そのうちすっかり慣れて暗記さえしてしまいました。連絡が来ないと、「どうしたのかしら、最近おとなしいわね?」と思うくらいです。

最近では日本でも、海外旅行の土産にシラミという思わぬものまで持ち帰りしてしまい、その結果幼稚園などで感染が増えていると聞きました。大人が髪をかきむしっていたら、どんな悩みがあるのかと思いますが、幼い子供が髪をかきむしっていたら、まずこちらでは、シラミのプーさん(フランス語でpou, 複数形ではpoux 。でも同じ発音。プー)の仕業ということになるでしょう。すぐに耳のうしろをチェックして下さい!

画像上:ファーマシーの店頭に並ぶ、シラミ駆除用シャンプー、ローション。
画像下:シラミ落とし用の櫛。目がとっても細かい。


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