■日常の中のホメオパシー 2006.7.3 update

最近は日本でもホメオパシーという言葉を耳にするようになったそうですが、私が初めて耳にしたのは、フランスに来て子供が出来てまもなくのことでした。子供はよくゴチンと頭をいろんなところにぶつけてきます。エーンと声をあげて涙をポロポロこぼして、ぶつけたおでこの赤くなったところを見せられるのは日常茶飯事。すぐさま氷を当てて、大きなタンコブになるのを防ぐのは昔ながらのやり方ですが、そのときです。「ほら、ほら、これを飲ませて…」とよそのお母さんに差し出されたのがホメオパシーでした。

白い半透明の小さな粒を4、5粒、噛まないように舌の裏側に入れて、ゆっくり溶けるのを待ちます。金平糖を薄くしたような甘味で、子供でも嫌がらずに口を開ける味です。「それ、なあに?」と聞く私に、「あざやコブを防ぐのよ。打ったときにすぐ飲んで。打ち身がひどい時は、私なら夜寝る前にもう一度飲ませるわ。副作用もない自然療法だから赤ちゃんから妊婦でも安心して飲めるのよ」と。

ホメオパシーとは、同種療法または同毒療法といい、「ある症状を持つ患者に、もし健康な人間に与えたら、その症状と似た症状を起こす物質をきわめてごく薄く薄めてわずかだけ与えることによって、症状を軽減したり、治したりしようとする療法」のことだそうです(ウィキペディア百科事典より)。もととなるその物質とは植物や鉱物です。約200年前にドイツ人の医師によって始められたものです。

以来、子供のタンコブとホメオパシーは切れない間柄となりました。そのせいなのか、それとも大きな打ち身がないせいなのかわかりませんが、ゴチンゴツンとあちこちにぶつけてくる割には、おもちのように膨らんだコブも青あざも見たことがありません。

通常は上記に述べたように、直径4ミリ程度の白く丸い粒を4、5粒なめるのですが、それよりさらに小さい粒のものを容器一本飲むタイプや、ある特定の症状を治すために数種類を調合した薬タイプもあります。

車酔いをする子供たちに、まだ小さいので「薬」はあげたくないけれど・・・というとき、ホメオパシーがあります。いつもカットしてもらっている美容院の担当女性は、一日中立ちっぱなしで足が重く静脈が膨らんで痛いのが、ホメオパシーにしてから痛みがなくなったといいます。この時期日射病に要注意ですが、強い太陽光線を浴びてしまったらホメオパシー。抗生物質漬けの薬に嫌気がさしているママたちは、さまざまな症状の子供を抱えてホメオパシーを利用している人を多くみかけます。その他、思春期のにきび、生理痛、つわり、アレルギー、禁煙、不眠症・・・と、利用機会は広範囲に及んでいます。1993年から2004年まで勤めたサッカーのフランスチームの主治医もホメオパシーを使っていたそうです。

またある時、公園で遊んでいる時、人見知りのわが娘を見た初対面の年配の女性が「どうしてホメオパシーのドクターに見せないの?」と言いました。えっ?人見知りを治すって? そんなこともホメオパシーで治せるの?? 思ってもみなかった提案にびっくりした私に、その女性はごく普通のことと言った風にうなずきました。恥ずかしがり屋の内弁慶は、私も夫も子供時分そうでしたから(今では面影もない?!)、大して気にしてもいず、成長するにつれてなくなってくるだろう・・・と思っていましたので結局この時はホメオパシーのお世話にはなりませんでしたが、性格的なものまで直せるということが印象的でした。つまりテラピーの役割も果たすということですね。

大勢の人前でスピーチしなくてはならず緊張であがってしまう社会人、また、試験前でストレスが強く本領発揮できない学生・・・そんな人にもストレスを軽減する嬉しい味方のホメオパシーがあるんです。水が怖くてプールの授業で泣き出してしまう子供にもおすすめの白い粒があります。

このように様々なところで用いられていますが、科学的に効果が立証されているわけではなく、信じないドクターも多いのです。我が家の小児科の主治医も「希釈しつづけて水飴のようになったものを舐めて、何の効果があると思いますか」といいます。民間に広く浸透しているけれど、科学的説得力に欠けているのが実体のようです。

それでもフランスではごく普通の薬局に行けばどこにでも置いてあります。薬局員に相談をすれば、適切なホメオパシーを薦めてくれるでしょう。社会保険では上限35パーセントまで払い戻しをしてくれます。また町のホメオパシーのドクターも電話帳で簡単に見つかります。このドクターになるためには一般医のドクターの資格を取得した上で、さらにホメオパシーの勉強をしなければならないそうです。ヨーロッパではホメオパシーの売り上げがダントツの国フランス(2位がドイツ)、40パーセントのフランス人がホメオパシーによる治療を試みたことがあるそうです。

人のみではなく、動物にも効果的で、獣医や家畜農業にたずさわる人への授業も行われているとのことです。

画像右上:コブやアザに効くホメオパシー。我が家で一番お世話になっているものです。値段は1.81ユーロ。薬の名前に入っている「アルニカ(ARNICA)」というのはキク科の植物の名前です。クリーム状になったアルニカも打ち身用によく売られています。
画像左上:容器の色がこのように違うのは、種類別なのではなく希釈数によるのだそうです。効能は、(画像上):太陽にあたり過ぎた時、(画像下):口内炎が出来た時。子供たちへの義母の差し入れです。
画像左下:普通の薬みたいですが、これもホメオパシー。数種のホメオパシーが混ざって調合されています。緊張や一時的ストレスを軽減する目的用。記憶を高める効果もあるので、試験前などにおすすめ。また、水を怖がる子供には水泳の授業の前などに飲ませると落ち着くそうです。
画像右下:フランスの薬局。緑色に電光点滅する十字が目印です。

【短信】6月初旬には朝5℃、セーターを着こんで暖房を入れていたのに、突然30℃を超える真夏日がやってきました。7月からはフランス人の一年中で最大の期待を担っている「バカンス」のシーズンが始まります。(6/21)


<<もどる