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みなさんにとって、「春を感じる音」と言ったら、どんな音があるでしょうか。小鳥のさえずり? 花のつぼみのきしむ音? それとも冬のコートを脱いで軽やかになった春のトレンチコートの擂れる音?
いよいよ新緑の5月。薄着になって春満開!といった気分といいたいところですが、フランスのここオーヴェルニュ(中南部、中央山塊に位置する地域圏)の春ときたら「いったい冬なの春なの、どっち? ハッキリして!」と言いたくなるほど、じれったく、じわじわじりじりと訪れます。5月15日まではまだ霜が降りる、と言われているので暖房の火も完全に眠らせるわけにはいきません。ウールのセーターもラベンダーの虫除けと一緒に片付けてしまうわけにもいかず、一枚や二枚は出番を待っている状態なのです。
そんな時期ですが、フランスの田舎ではあちこちから「あぁ春だなぁ」と感じる音があります。ほら、耳をすませてみて下さい。聞こえてくるでしょう? ブルルルル…! 農家のトラクターと個人宅での耕耘機のエンジンの音です。この音が空に反響してどこからともなく聞こえてくるようになると、さぁ春だ、菜園だ、畑の準備だ!耕せ耕せ、種をまけ!というエンジンの歌い声なのです。
フランス人も菜園好き。どんな小さな箱庭でも、片隅にレタスが葉を広げ、トマトが成っているのに驚くことがあります。手作りの野菜は美味しい、とグルメの国、農業の大国は知っているのでしょうね。ガーデニング専用の店まで行かなくとも、スーパーでも3月を過ぎると大幅なガーデニングコーナーを設けて、用具や種や苗を山積みにしています。
どんなものがあるのか、ちょっと覗いてみると…、一番人気は『アマンディンヌ』、ニューフェイスは『ジョゼフィンヌ』に『アナベル』ですって。…あら? どれもフランスの女性の名前ではありませんか。ついでに『エメラルド』や『モナリザ』なんて妖艶なものもあります。ここって苗の販売じゃなくって、モデルクラブ? いえ間違いじゃありません、これはなんと「じゃがいも」の品種の名前なんです! 売れ筋一番はじゃがいも、フランスの菜園で人気なのですね。ザッと数えただけでも45種類のじゃがいもがありました。
それだけ種類があるのには訳があります。料理の用途に合わせて選べるというわけです。「フライドポテト」「ピューレ」「ポタージュ」「煮込み」「炒めもの」「サラダ」「茹でもの」用・・・それだけ食卓にじゃがいもが手を変え品を変え登場するということですね。
例えば『レイディ・クリステル』は「蒸し用、サラダ」にしか向いていませんが、『マノン』ちゃんという品種(すみません、つい“ちゃん”をつけたくなってしまう名前です)は「フライドポテト、ピューレ、炒め用、サラダ」に適していると、かなりの料理範囲を網羅しています。そして収穫率は「まぁまぁ」でも、収穫後の保存が「かなり持ちがよい」とあります。それに対して『アマンディンヌ』ちゃんは似たような用途ですが、収穫率は「よく」、保存は「あまり持ちがよくない」とありますから、収穫後は早めに食べたほうが良さそうです。こんな説明書きをあれこれと見比べながら、お好みの苗を買っていくのです。
じゃがいもの他に人気が高いのは、なんと言ってもインゲン。そしてトマト、レタス(これらも沢山の種類があります)、人参、赤いラディッシュなどでしょうか。トウモロコシはダーッと並ぶ種の袋の片隅で、1〜2袋ご愛嬌で置かれている程度です。カットされて缶詰になったコーンはよくありますが、丸ごと茹でたトウモロコシを食べるのは、こちらでは一般的ではないのです。
またガーデニングの際、フランスでは月齢カレンダーを利用する人もいます。上弦、下弦、満ちていく時、欠けていく時、また月が○○座に入ったとき、新月・・・それぞれの状態が土に及ぼす影響が違ってくる、という古くからある考え方です。それによって、根菜類を植えるのに適している日、葉モノを植える日、収穫日、土をいじってはいけない日…などと分けられるようです。サラダの芯が伸びてしまったり、根菜の収穫後の腐り方が早かったりするのは、悪い月のときに植えてしまったから、なんて反省の声も耳にします。
私も今年は遅ればせながらようやく菜園を耕しました(土が硬いので腰が痛い…)。さてこれから何を植えましょう。月齢カレンダーを眺めて決めるとしましょうか。
画像右上:じゃがいものパッケージには、モナリザ、エメラルド、レイディ・クリステルなどの品種名と、適した料理がプリント。
画像左上:ズラリと並ぶ種のコーナー(1)。ほとんどがインゲンとグリンピースです。
画像右中:ズラリと並ぶ種のコーナー(2)。サラダ、人参、ポワローねぎ、ラディッシュなど。
画像左下:老舗の種業者ヴィルモラン社の新製品「手作りかいわれ大根キッド」。プラスチックの網目容器と種が入っています。
画像右下:我が家の耕耘機。二十年は昔のものです。丈夫で働き者 !
【短信】お騒がせしたCPE(初期雇用契約)騒動も姿をひそめ、一ヵ月近く休校していた地元の高校や大学も授業が再開しました。と思ったら、復活祭のバカンスが5月1日(労働祭)をはさんで9日まで続きます(フランスの地域によってバカンスの時期は3タイプにずれます)。5月1日はスズランの花を飾って幸福を祈る日でもあります。(5/2)
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