■バカロレアの季節 2005.6.6 update

現在体調管理に人一倍気をつかっているのは、6月にバカロレアの試験を控えた学生たちでしょう。日本の受験シーズンは寒い2月ですが、フランスの受験シーズンは夏休み目前の6月なのです。

一般的には、フランスには日本のような個々の大学入試システムはありません。ナポレオンの治世、1808年の創設から現在に続くバカロレアが「中等教育終了の証明と高等教育への道を開くもの」と定義されています。そこで高校卒業後に進学志望ならば、バカロレア(略してバック)の試験を受けて合格することが必須条件となります。

バックには受験生の半分を占める一般バック、工学・技術系バック、職業バックの3種類があり、それぞれに選択コースが細分化されています。この試験は1日で終わるものではなく、選択コースによって9、10課目(筆記試験と口頭試験)が何日間かに分散されて実施されます。工学・技術系のバックには、ユニークな実技科目がいろいろあります(演劇、クリスタルガラス製造、石工、航空エンジニア、映画の録音技術等々・・・)。

バカロレア試験の第1日目というのは、伝統的に「哲学」の試験から始まることになっていて、文科系志望者のみならず、理系志望者にも命題が与えられます。去年と一昨年の命題からいくつか抜粋してみると、「言葉は人間の創りだしたものか?」「対話は真実へと導く道か?」「我々は何故に美に敏感なのか?」「ショーペンハウアーの『意志と象表としての世界』から引用の文章について説明せよ」ーーーこの3つは社会経済学系のものです。

また文学系となると、「自由かつ幸福であることは可能か?」「完全な自由という概念は意味を持っているか?」「トマス・ホッブスの『リヴァイアサン』から引用の文章について説明せよ」、理系でも「真実は我々に依存するものか?」「自己を意識するということは、自己と無縁になるということか?」「カントの『道徳形而上学原論』から引用の文章について説明せよ」という命題が出されます。

もちろん解答方式は○×や選択ではなく、A4サイズの解答用紙に自分の意見を延々と書き連ねなければなりません。そのうえ解答のポイントがあっていても、きちんと道筋のついた論理的な展開をしなければマイナス点となってしまいます。そこで学生達の試験準備は知識を蓄えるのみならず、その知識をいかに活用/展開するかにまで及び、一夜漬けでは歯が立ちません。17、18歳でこのような試験に頭を悩ませなければならないのですから、へ理屈好きなフランス人が多いのはこのせいかも知れません。

そして試験時間、なんと午前中の4時間(休みなし)。長期間にわたる試験準備とストレスに負けず、本番で4時間も集中するには知力だけではなく、体力も必須となるので、体調管理には充分に気をつかうという訳です。今年は2月にバカロレア改正法に反対するリセアン(高校生)たちのデモが各地であり、デモ隊による学校封鎖なども行われたため、受験者の不安と緊張感はさらに増しているようです。この時期薬屋さんには「物忘れしないための薬」だとか「疲れ知らずになる薬」を求めてやってくる受験生の親もいるそうで、「そんな薬はないんですがねぇ」と薬剤師さんは苦笑しています。

2012年のオリンピック招致に懸命なのがパリ市。町中のいたるところでポスターやオブジェなどを見かけます。右上の画像は改装中の建物をおおう巨大ポスター。中ほどの画像はオペラ座の前にあるオリンピックの輪をイメージしたネオンのオブジェです。ルーブル美術館の近くにあるのも見かけました。先日は映画監督のリュック・ベッソンがメガホンをとり、パリの一般市民が参加してのスポットCMがシャンゼリゼで行われました。6月5日には招致に向けてのイベントも予定されており、開催地決定の7月初旬までいろいろな活動が続きそうです。

フランスでは、ヨーロッパ憲法批准の可否を問う国民投票が5月29日に実施されます。ヨーロッパ共同体の創設メンバーのひとつフランスの投票の行方にヨーロッパの関心が集まっているようです。25日現在、「NON(反対)」が約53パーセントで「OUI(賛成)」を上回っています(*)。投票率の低さが懸念される中、どのような結果になるでしょうか。下の画像の青い冊子は、有権者宅に送られてきた191ページの「ヨーロッパ憲法創設条約」です。新聞や雑誌も特集を組んだり、特別折り込み([traite])をいれたりして投票をよびかけています。

画像上:改装中の建物をおおう、オリンピック招致の巨大ポスター
画像中:オペラ座の前にある、オリンピックの輪をイメージしたネオンのオブジェ
画像下:ヨーロッパ憲法創設条約の冊子

【短信】晴れている時はもちろん、曇っていても意外に紫外線が強いので、旅行される方は日焼け止め対策をお忘れなく。空気が乾燥しているので、リップクリームも必携です。ミネラルウォーターのペットボトルを持ち歩いて、喉が乾いたと感じる前に少しずつ水分を取るだけで、夕方の疲れ方が随分ちがいますよ。(5/26)

(*):欧州連合(EU)の基本法となる欧州憲法批准の是非をめぐるフランスの国民投票が29日行われ、即日開票の結果、批准は大差で否決された。欧州統合の先頭に立ってきたフランスの批准失敗はEU各国に衝撃を与え、オランダ、英国など他国の批准作業への影響が必至(パリ共同)。


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