■バンコク爆弾テロについて 2007.1.16 update

「スリやいかさま賭博に注意」という程度の「危険」とは隣り合わせでも、誰もが安全だと思ってきたバンコクで、爆弾テロ事件が年末年始にかけて起きてしまった。本当に起こるとは思っていなかったクーデターが起きた去年は、既に「これまでとは違う」バンコクだったのかもしれないけれど、それを締めくくるかのような、大晦日の夕暮れの同時爆弾テロ。ビジネスや観光で年間相当数の日本人が訪れている身近なバンコクだけに、誰もが耳を疑い、そして他人事じゃない思いを胸にしたのでは。今回は、爆弾テロに見舞われたバンコクの年末年始を過ごした個人としての当日のレポートを。

大晦日の午後3時頃、私は家から歩いて数百メートルのところにあるセントラルワールドプラザに買い物に出かけた。このセントラルワールドプラザは、一番奥に伊勢丹、手前にオシャレなデパートZEN、真ん中に複合テナント施設が入った超大型ショッピングモール。一昨年末にオープンした巨大デパートサイアムパラゴンとしのぎを削る大型モールなのだけれど、丁度、長らく休んでいたZENが12月に新装開店するとあってこのセントラルワールドプラザが一番バンコクで元気という感じだった。ZENの目の前には「アジアで一番大きいクリスマスツリー」と銘打った、高架鉄道の高さに届きそうな大きなツリーが飾られ、ショッピングゾーンを歩道橋でつないだ道への新しい出口もできて盛り上がりを見せていた。

ZENの角に到着すると、丁度警察が40−50名整列し、その隊のリーダーらしき人物が全員に訓示を述べていた。このセントラルワールドプラザ前は、毎年カウントダウンイベントが最も盛り上がる場所だけあって、警備を強化しているのかもしれない。前の日にはフセイン元大統領も処刑されたし、世界のどこでテロが起きてもおかしくないし、ちょっと注意したほうがいいかもしれないな、なんて思いながらそんな光景を尻目に道を進むと、既にデパートの前の6車線の道路は3車線が通行止めになっており、カウントダウンイベント用のステージ前には今から一番前の席に陣取ろうと並んでいるタイ人が30−40名見られた。

新しくなったZENと随分新しい店舗が入って新鮮になった間の複合テナントエリアを覗き、ウィンドーショッピング。向かい側のゲイソーンプラザも見てみようと思い、歩道橋を渡って行く。ゲイソーンでの買い物を終えてまた戻り、伊勢丹で大晦日の食材を買って、歩いて自宅へ戻ったのが午後5時半ごろ。既にワールドプラザ前の6車線ばかりか、その先に続く我が家の面する小路がある前の大通りも全面的に通行止めになっており、ちょっと嬉しくなって普段は渋滞で数珠繋ぎになっている車線の中央をわざと通って家に帰った。

冷蔵庫に食材をつめていると、家の電話がなり、職場の同僚が、「バンコクのあちこちで爆弾が爆発したか、爆発の予告が入っているという情報がニュースで流れている。セントラルワールドも対象みたいだから、絶対に家から出ないように」ということ。調べると、確かに午後6時ごろ、6箇所でほぼ同時に爆弾が爆発し、死傷者が出ている模様。カウントダウンイベントには顔を出さずに家でおとなしく年越しそばでも食べていようということに。ニュースを見ると、どうやらバンコク各地のカウントダウンイベントは軒並み中止になったらしい。

そして午前0時。恒例の花火が打ちあがって新年を祝ったそのとき、夕方とおったまさにその辺りで爆弾が2発爆発したということ。1箇所はゲイソーンプラザ横。もう1箇所はそこからまっすぐ直進した先。通常、カウントダウンイベントは午前0時に最も盛り上がりを見せるのだけど、その頃にはセントラルワールドプラザ前の6車線はびっちり人で埋まる。その一番手前側の端がゲイソーンプラザあたりの、まさに爆弾が爆発した辺り。一番奥側の端がもう1つの爆弾が爆発した場所の少し手前だから、もし予定通りカウントダウンイベントが決行されていたら、隙間なく詰まった群集が前も後ろも退路を絶たれ大パニックになってことは想像に難くない。それも、噂では私がお昼に通った、ゲイソーンとワールドプラザをつなぐ歩道橋の下と、ゲイソーンの少し奥のホテルの辺りにも爆弾が仕掛けられていたというから、もしそれも爆発していたら、群集の両端と中央がやられ、爆弾による直接の死者だけじゃなくてきっと将棋倒しになったり踏みつけられたりして亡くなる人も相当数あったのでは。

午後6時の1回目の爆弾騒ぎでカウントダウンが中止になることを見越した脅しだったのかもしれないけれど、それにしても空恐ろしい話だ。何箇所も同時に爆発させている辺り、また午後6時に一度やっているのに、二度目を警戒中の場所でまんまと爆発させた辺りなど、相当の組織力と実行力を感じさせる。未だ誰がやったのかはわかっていないけれど、クーデター政権内の仲間割れによる、軍か警察の一派の仕業という噂や、旧政権支持派の仕業、または南部の分離独立派のテロという可能性、この大体3つのどれかだろうという一般の見方。恐らく南部の分離独立はではなく、現政権の仲間割れか旧政権支持派のどちらかではないかという見方が大勢を占めている。

もしそうだとすると、何の罪もない市民を巻き添えにしたソフトターゲットを狙った悪質なテロを、現在の、もしくは過去の政府関係者が引き起こしたという、信じがたい話になってしまう。それでも、例えば風俗事業者がカネを積んで陸軍を動かし、所有権の引渡しがうまく進まないビル建設予定地の店舗を力ずくで追い出して、ブルトーザーで破壊するといった信じがたい事件なども過去数年の間に起きているし、一部の思惑のために軍や警察の一部が動いて今回のテロを起こしたといわれても、特段不思議な感じはしないところが困ったところだ。

クーデター以降、「アジアの優等生」といわれてきたタイがなんだか揺れている。当初期待が寄せられていた軍事政権の支持率は低下する一方だし、政権掌握後に打ち出した諸々の政策もどれも評判が悪い。観光と外国投資で成長してきたタイだけに、新政権が行っている資本規制や今回のテロなどは本当にじわじわとタイの首を絞めることになっているのでは。注意したくても注意のしようがないので、いつも通りの生活を送っているけれど、デパートでゴミ箱の前を通るたびにびくびくした気分を味わうのは本当に嫌な気分。一日も早く、賑やかでエネルギー溢れるバンコクに戻って欲しいもの。

とはいえ、タイ人はたくましく、友人に聞けば「テロが起きてすぐに一番酷かった戦勝記念塔の現場を野次馬しにいったの!ゴミ箱で爆弾が爆発しただけで、別に回りはどうってことなかったわよ。マイペンライ(問題ない)」とのこと(その現場では数人亡くなっているのだが…)。デパートも町も警官の数がいつもより沢山いるけれどいつもの8割程度の人出はあるし、またタイらしくしなやかにたくましく、復活してくれるよう願うばかり。そのためにも、タイ人の精神的支柱であり、今年12月で80歳のお誕生日を迎えるプミポン国王がいつまでも元気でいてほしいものだ。


画像右上:2004年の年越しイベントの際の様子。今回もこうなるはずだったのだが。。。
画像左上:爆弾が爆発したゲイソーンプラザ。この90度手前の側面辺りだったらしい。上段画像の図の右側手前あたりにこのデパートがある。


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