|
先月お伝えした通り、日本人の向けのサービスは充実しているし、揃わないものはないバンコク暮らしは何不自由ないのだけれど、私の「贅沢な悩み」はここでは質の高いライブやコンサート、展覧会や博覧会といった類のものとはほとんど縁がないこと。それでも5年前にこちらに住み始めたころに比べれば、有名なアーチストがアジアツアーの途中1日立ち寄るような形のコンサートが増えてきた。
それでも本当にがっかりさせられるのがコンサートの急な中止。ひどいときは当日になって発表されたりするのだから参ってしまう。私が遭遇しただけでもジャミロクワイ、ローリングストーンズが突然中止になったり、ノラジョーンズはわざわざ出張が被らないように努力していたのに、なんと出張をずらしたはずの日にいきなり日程も会場も変更になっていて行けなかったり。だからチケットを手に入れても本当に当日を迎え、アーチストがでてくるまで気が気じゃない。
毎回、中止の理由は「家族の健康上の理由」とか「メンバーの病気」とかよく分からない理由なのだけど、同じアーチストが日本では予定通り興行しているのをみると、どうもチケットが大幅に売れ残っちゃったんじゃないかという気がする。コンサートのチケットは、同じアーチストで比較しても日本と同じか少し高いくらいなので、日本の数分の1の物価のタイでは高嶺の花なのかもしれない。
今月8日、有名なジャズピアニストのブラッドメルドートリオが昨年末新しく出来たタイ最大のデパート「サイアムパラゴン」のコンサートホールでライブをするときいて、喜び勇んでチケットを買いに行った。こちらのチケット販売では画面上で空いている席が見え、選ぶことが出来るのだけど、前方の席も結構空いている印象だっただけに、2列目が取れて喜ぶよりは「また中止にならないだろうなあ」とびくびくしながらの購入。予習のためにCDも何枚か買い込んで聞き始めていたところ、同僚から数日後に「行くって言っていたコンサート、中止みたいよ。今日テレビで本人が出て、個人的な事情でどうしてもタイに行けなくなった、申し訳ないっていってたもの」とのこと。ショック!
チケット売れてなかった様子だったしなあ、しかし、どうしてタイの興行はかかる費用とチケットの値段、タイでの知名度と売れ行き予想とかちゃんとできずに仕掛けるんだろう? 一旦やると決めてキャンセルじゃ、宣伝費だってバカにならないはずなのに…といつもの「がっかり」で終わりそうだったのだけど、「Play Bill Arts」という音楽ニュースサイトによれば、このキャンセルについて本人が「先日起きたタクシン首相暗殺未遂が理由」といっているらしいのをみてびっくり。
確かに、8月24日にそんな事件があり、タクシン首相宅の前で車に一杯の爆弾を積んだ車を陸軍関係者が運転していたということで、軍関係者が更迭・逮捕されるだの、「いやあれは自作自演なんだ」だの情報が飛び交っているのだけど、それと今回のコンサートキャンセルなんて私の中では全く結びついていなかったのでちょっと驚き。
最近の政治の混乱は本当に深刻だし、タクシン派、反タクシン派が小競り合いになる(それでも突き飛ばしたので転んだとかそんな程度)とかはときどき起きているようなのだけど、街はいつも通り。この間のネパールの動乱に見るように、政治的な緊張が、日常生活が出来ない程に深刻な影響を及ぼす国も沢山あるけれど、タイに関しては(戦闘状態のマレーシア国境地帯は除いて)、普通に生活しているとそんな政治的緊張が起きていることすら気がつかないくらい。この国は、随分と成熟してきているのかなと思っていたところだった。こういうニュースを見ると、確かにはたから見ると危ないと思うのかな、と感じたり、「いやいや、客が集まらなかったことを言えないための理由付けじゃないか」と思ったり。色々なことを考えた今回の一件だった。
画像上:タクシン首相を狙ったとされる爆弾事件関連の記事。
画像下:払い戻される予定のチケット(ブラッドメルドートリオ)。S席1枚2000バーツ(約6000円)。一番安い席が800バーツ(約2500円)だった。
|