■タクシン首相退陣! 2006.4.18 update

前回お伝えしたばかりのタイ政治情勢。4月2日の下院選挙への「一応の」勝利で、誰もが「このままずるずる続けるんだろうなあ」と思っていた矢先のタクシン首相退陣宣言にビックリ!

選挙を目前に、普段政治なんて語らないうちのオフィスのタイ人スタッフ達も珍しく真っ二つ! 運転手2人のうちの1人とメイドさん(オフィスのお掃除とお茶汲みしてくれる)は「タクシン首相大好き」と熱烈に支持。一方、秘書さんなど事務職の女性4人は眉間にしわを寄せて、「さいってぇぇぇっぇよ!!!!バンコクにいる人は大半そう思ってるわよ!!!!!」、「タイ愛国党大嫌い!」とヒートアップ。同僚の1人は連日繰り広げられる反政府集会にも参加したとか。

反政府運動の終盤では、私の事務所至近のサイアムスクエア駅前の大通りで一度、バンコク随一のショッピング街を占拠するほどの人が通りを埋め尽くして反政府集会が行われ、デパートは軒並み休業していた。丁度会社帰りに出くわしたのだけど、あまり深刻な雰囲気ではなく、参加する人もどことなく楽しげで、ステージには今からアイドルでも出てきそうな感じの温厚なデモだったけど、それでも東京でいえばハチ公前から丸井まで、とか、銀座4丁目から7丁目とか、そんな感じの場所の公道を通行止めにして道の車線の端から端まで人で埋まっているのはそれなりの迫力で、反タクシン勢力のパワーを感じたりした。

2日の下院選挙の結果、首都バンコクや南部では反タクシンが優勢だったものの、タクシン首相の支持が厚い東北部と北部で圧勝したと分かった4月4日の同僚とのランチでは、話題はもっぱらタクシン。みんな口をそろえて一刻も早く退陣して欲しいという。

「ねえねえ、決定的なのは何だったの? あの、シンコープ(通信事業者)のシンガポールへの売却で税金逃れしたから?」。「それもあるけど、それじゃないわね。私達の貴重な税金を使って、貧しい人たちにカネのバラまきをやっているからよ! 私達のお金なのよ!!!」とのこと。

「タクシンはただお金をばら撒くだけで、どうやって使うかなんて指導は全然しないのよ! それじゃあ意味ないじゃない。今回、田舎で勝ったのも、タクシンになればまたもらえると思ってるからよ!」。具体的には30バーツ診療(どんな病気でも30バーツ(90円)くらいで診てくれるという政府の政策)などをあげていた。

タイでは富の分配の不平等度がとても高く、この問題に本気で取り組む姿勢というのは個人的にはある程度評価していたのだけど、身近な彼女達が「貧しい人に税金を使って支援してるから」というのが反タクシンの理由だと言われてちょっぴり驚いた。

「そういう政策はずいぶん前からやってたはずだけど、なんでここまで反政府運動が盛り上がってるの?」と聞けば、「うーん、おかしいわ、おかしい!ってちょっとずつ思っていたのが、シンコープの売却で一気に爆発したという感じね」とのこと。

この感情は、タイ人気質そのものともいえるのでちょっと笑ってしまった。というのも、普段とっても穏やかで、ちょっとやそっとのことでは怒らず慌てず騒がず、「…まあ、そういうこともあるよ、マイペンライ(気にしない)」で済ませるタイ人なのだが、我慢の限界に達すると手がつけられないのだ。まさに「キレる」といった感じで、なだめてもすかしても、譲歩してもとき既に遅し、真っ赤な顔して怒鳴り散らし、関係修復は絶対難しい状態になってしまう。今回は、まさに、バンコクの中間層〜富裕層がこぞってそういう状況になっちゃったのかも。

さてさて、野党勢力が選挙をボイコット、事実上のタクシン政権信任投票となった今回の選挙、タクシン首相は「50%以上の得票を得られなければ首相をやめる」といっていたのだけど、一応合格ラインを突破し、「やめなければならない理由がどこにある」と朝豪語していたはずの人が夜には退陣。ニュースによれば、4月4日の3時ごろ国王に謁見していたとか。通常よりも長い謁見時間で、そのあとに退陣を促されたのではないかという見方もでている。

タクシンも会見で、「プミポン国王の即位60周年式典を2ヵ月後に控えた今、これ以上タイの国を2つに分けるような混乱は続けてはいけないと思った」と、退陣の理由を語っている。流血の事態にもなったクーデターのときも、国王に両側が呼ばれて「まあまあ」といわれて収まっちゃったお国柄。今回もやっぱり国王が最後は収め役になったのかな。

愛国党の不支持、ではなく、首相の退陣に的を絞っていた反政府運動がこれで一山越えるのは確実。最近観光客もバンコクを敬遠し始めていたというし、ぎりぎりのところで引き際を見極めたタクシンは後続候補も数名指名、タイ愛国党政権の堅持と政策の引継ぎを明言している。最近観光客もバンコクを敬遠し始めていたというし、ぎりぎりのところで引き際を見極めたタクシンは後続候補も数名指名、タイ愛国党政権の堅持と政策の引継ぎを明言している。院政でも敷くつもりかもしれない。

画像上:タクシン首相の辞任会見を報道するローカルニュース
画像下:反タクシン運動を報道するローカルニュース


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