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台湾のお正月は、旧暦のため今年は2月中旬。当然日本のお正月の時期は、元日を除いて休みはナシ。学校も会社も2日からは通常通りである。ところが台湾の中でも日本と同じお正月を過ごす人たちがいる。台湾の中部以北に広く分布する原住民のタイヤル族の中でも、南投縣仁愛郷にある清流・中原・眉原という三つの部落だけは日本と同じ時期に新年を祝うという。前回、あの危険な力行産業道路を案内してくれたTさんのお父さん(日本教育を受けた世代の “ニッポン人”)に誘われ、今年の年越しは部落で一緒に「紅白歌合戦」を見ることになった。
  
Tさんの住む「清流部落」は地図上では「互助村」、別名「川中島」ともいい、日本統治時代最大の原住民による抗日闘争「霧社事件」(1930年)と深く関係している。ここは事件の際に日本に対し蜂起したタイヤル族の6部落の生き残りが強制移住させられた場所なのである。この事件の影響も含めて、日本との関わりが深いことから、この部落では日本と同じお正月を過ごすようになったという(この清流部落の歴史については、また後日改めて詳しく紹介したい)。
タイヤル族の方は血の気は多いが、陽気で、お酒が大好きだ。その量はハンパではなく、休みの日ともなれば朝からビール、昼にはワイン、保力達(安価な薬用酒)、自家製小米酒と続くフルコースである。女性もかなりお酒が強い。当然、お正月は村中が“酒盛り”になるぐらいすごいらしい。
大晦日、Tさんのお父さんは自称“満州で買った外套”の下にスーツを着て、裸足に下駄履きで出迎えてくれた。外では子供たちが集まって爆竹をならして遊んでいる。お昼は “絞めたて”ニワトリを丸々蒸したものなど豪華な食事をご馳走になる。ここからビールを飲み始める。ふと、台所を覗くとギョッ! なにやら不気味な茶色い動物のミイラのようなものが鍋の中に丸まっている。その正体はムササビ。このあたりでは特別な料理で、普通は猟で捕まえるのだが今日は市場で買ったという。スープにしたり、焼いて食べるらしい。
-画像説明文-
画像左:顔に入れ墨が残る90歳を越えるおばあさんはキセル片手にハイ、ポー ズ。右側は民族衣装を着たTさん。
画像中:庭で豚の内臓を処理する村の人たち。
画像右:これまた豪快にさばかれる豚の肉。
画像右下:鍋の中のムササビ。これもお正月料理?
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午後は中原、眉原部落を訪問。ここでもやはり庭や軒先ですでに飲み会が始まっており、爆竹の音とともに、大音量のカラオケで大盛り上がり。ここでは夕日を眺めつつ自家製の小米酒(小米とは「粟(あわ)」のこと)をご馳走になる。さあ、宴はこれからだ。
夜7時過ぎ、外から爆竹の音とともに村の人たちの歓声が聞こえてくるTさんの自宅で、なんとも奇妙な「紅白歌合戦」鑑賞会が始まった。もちろんテーブルにはワインが並ぶ。Tさんのお父さんは、大東亜戦争の話や安部首相の話を流暢な日本語で話しながら、1曲終わるごとにテレビの画面に拍手を送った。つられて私達も拍手を送った。Tさんの家には遠く東の花蓮から力行産業道路で5時間かけてお祝いにかけつけたタイヤル族の親戚や友達が集まり大賑わい。
鑑賞会にも途中で西の苗栗からやってきた親戚のオジサン(これまた“ニッポン人”)がハイテンションで乱入。70歳を過ぎて再婚ながら新婚ほやほやのオジサンは、DJ OZMAも顔負けの日本時代の下ネタを連発、場を盛り上げる。突然コップ片手にすっくと立ち上がり「これから“ハルコの歌”を歌いマース。日本の有名な歌!」と叫び、「そんな歌あったかな?」と首をかしげる私達日本人を尻目に「はーるーこーおーろーおーの、はーなーのーえーん♪」と絶唱し始めた。もちろんそれは言わずとしれた“荒城の月”である(確かに出だしは「ハルコ」だが)。
そんなこんなで宴もたけなわ、外から花火の音が聞こえてきた。村中の人たちがぞろぞろと外に出始まると宴はいよいよクライマックス。深夜0時ちょうど、街灯もほとんどない真っ暗な山奥の村の空にいっせいに花火があがった。村のあちこちで爆音が鳴り響く。田んぼからはロケット花火が飛び出し、山の向こうからは、大きな花火が何度も何度も上がった。大胆にも一般の村民が上げているらしい。山火事になっても気にしない? 鳴り止まない爆竹の音と火薬の匂い、アルコールの匂いとともに年が明けた。もちろん酒盛りは夜通し続いたらしい。
元旦はすばらしい快晴となった。早朝、簡単な新年の儀式のあとはカラオケ大会、続いて村のあちこちの家の庭で、豚の丸焼きと酒盛りが始まった。もうもうと煙をあげて大きな豚が豪快に焼かれ、これまた豪快にさばかれて客に供される。それ以外特別な料理はなく、部落の人はみな豚やムササビの肉をほおばり、お酒を飲んで、大声で話し、笑い、本当に楽しそうだ。この宴は5日まで続くという。原住民のお正月は、単純だけど、底抜けに明るいお正月だった。
画像上段左:庭で豪快に焼かれる大きな豚。
画像上段中:酔いつぶれて寝ている村の人。
画像上段右:「ハルコ」の歌が得意な苗栗のオジサン(左)とTさん(右)。
画像下左:深夜0時、若者達が田んぼでロケット花火を上げる。
画像下右:元旦の朝日に輝く清流部落の入り口の門。
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