■台湾巴士迷(バスマニア)(1) 挑戦!中央山脈をバスで山越え10時間の巻 2006.11.21 update

10月初旬、もともと中秋節が6日(金)、土日を挟んで国慶節が10日(火)という飛び石連休だったのだが、台湾政府は9月末に急遽9日(月)を休みにすることを決定した。振替休日を前の週に決定するなんて日本じゃありえないが、さすが台湾! 常に行き当たりばったりである。

突然振って湧いた大型連休に特に予定のなかった国民は大ブーイングだったが、一方で用意周到な日本人はもちろんこの連休を見逃すはずがなかった。しっかり数ヶ月前から9日に休暇を申請し、五連休を前提に“壮大な”計画を立てていたのである。それは長年の夢だった「中央山脈をバスで山越えする」+「東部をバスで縦断する」というものであった。

台湾の中央に背骨状に伸びているのが台湾の屋根ともいえる中央山脈である。北から南まで2,000〜3,000m級の山々が連なっている。今回挑戦したバスルート(前半)は台湾西部の台中から東に移動し、この中央山脈を越えて東部花蓮まで行くというものである(右上の画像を参照)。
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台湾のバスに詳しい友人に時刻表を調べてもらうと・・・
□豊原客運バス:台中(8時00分)→豊原(8時50分)→埔里(10時45分)→梨山(14時00分)
□花蓮客運バス:梨山(15時00分)→天祥(18時25分)→花蓮(20時10分)

バスは二社を乗り継いで一日一本、まさに一発勝負である。しかも合計12時間! 途中には3,000mの山越えも待ち構えている。さすがにこれは体力的にキツイということで、友人のアドバイスに従い、手前の天祥に宿泊することにしたが、それでも10時間以上の長旅だ。どうもトイレはないらしいが、途中でトイレにいけるのだろうか? 様々な不安を抱えながらの山越えバス。果たして無事に花蓮にたどり着けるのだろうか?

10月6日(金)中秋節 快晴
山越え当日、8時過ぎに携帯で友人2人が台中駅前から無事にバスに乗り込んだことを確認する。豊原客運は15人乗りぐらいの小型バスらしい。8時50分、豊原駅前からバスに乗り込んだ別の友人から電話が入り、3人が無事に乗車したことを確認し、最後の1人となった私は合流地点である埔里へと向かった。埔里の町はずれにある「台湾地理中心碑」の前がバス乗り場らしいという情報を得たのは前日のこと。そこには予想通りバス停の看板などはなく、目の前には道路が2本ありバスがどちらから来るのかもわからず、かなり不安な待ち時間となった。

友人に電話してみるとバスはすでに登山客などで満席だという。ついでに自分が埔里で待機中であると伝え電話を切ったのだが、しばらくして悪夢のような知らせが・・・「バスが故障しました」。ええっ? 友人の話によると、バスのスピードがどんどん落ちてきて、バスは満員の乗客を乗せたままとうとう動かなくなったらしい。

それから突然運転手が近くの店に飛び込んだので修理でもするのかと思いきや、プラスチックの椅子(背もたれのない簡単なもの)を買ってきて補助席にしたというからノンキなものである。結局代わりの新しいバスを待っているらしい。

予想だにしない事態が起こってしまうのはやはり台湾。そして予想通りこの代わりのバスはなかなか来なかった。最大の心配は梨山での花蓮客運への乗り継ぎであったが運転手に相談し、梨山までは乗らずに手前の大禹嶺で下車、花蓮客運のバスに待ってもらうことになった。やがて1時間遅れでバスが到着。無事にバスに乗り込むことができた。

埔里を出発するとバスは徐々に高度をあげ、満員の乗客を乗せてエッコラエッコラ山道を登って行く。背もたれのない補助席の乗客は両側の椅子につかまらねば後ろに倒れてしまうので両側の席に必死につかまっている。見かねた運転手が途中のお土産屋でトイレ休憩のついでに背もたれのある椅子を借りてくれた。なかなか親切な運転手だ。しかしこれが幅広でなかなか座席の間に入らない。みんなで無理やり押し込んで再び出発。

のんびり安全運転で2時間近く山を登るとだんだん耳鳴りがしてきてちょっと頭が重くなってきた。気がつくと窓の外には鮮やかな黄緑色の合歓山(最高峰は北合歓山3,422m)の山肌が広がっていた。ここはすでに「太魯閣国家公園」の入り口である。しかし超満員のバスではこの絶景は充分に楽しめるはずもなく、いろんな角度から何枚か写真を撮ってみても手前に口を開けて寝ているおじさんの寝顔が入ってしまう。

やがてこの山越えで一番高いポイント合歓山山荘(標高約3,200m)に到着。ここでも10分間のトイレ休憩があった。ここはかなり冷えるので売店でカップラーメンを買って食べたり、展望台で写真を撮ったりもできた。その後2時半過ぎには大禹嶺(標高2,565m)に到着。お世話になった豊原客運のバスとはここでお別れ。1時間ほど休憩して体も高い山に慣れてきたところで無事に梨山からきた花蓮客運に乗り換えることができた。

ところがこの花蓮客運、慣れているのか安全運転の豊原客運とは対照的に急カーブが続く山道を猛スピードで走る相当怖いバスだった。この道がまたすごい! 下を見下ろせば深い谷底、上を見れば3,000m級の高い山という上下180度の大パノラマの風景の中を山道は山の稜線にへばりつくように延々と続いている。カーブを曲がるたびに先には何も見えず、下は断崖絶壁かと思うと何度となく足がすくみ、悲鳴をあげながら窓のカーテンをしっかりとつかんでいた。生きた心地がしないとはまさにこのことだ。

徐々に日が暮れ始めると同時に霧がでてきたがスピードが落ちる気配は全くない。気がつくと日もとっぷり暮れ、闇を走り抜けるバスはいつのまにか定刻どおりに天祥に到着していた。カーテンをつかみすぎて肩はパンパン、長い、長いバスの旅はここで一段落。10時間以上バスに乗り続けた台中の友人2人が疲労困憊だったのは言うまでもない。(つづく)


画像右上:台湾全図。台中と花蓮を結ぶ赤い線が山越えルート。
画像左上:豊原客運バスの乗車口。外に置いてあるプラスチックの赤い椅子が、“即席”補助席。
画像右中上:豊原客運バスの狭い車内。
画像左中下:豊原客運バスの車内からみた合歓山の絶景。超満員なので、どうしても手前のおじさんの寝顔が写り込んでしまう。。
画像右中下:梨山の手前、大禹嶺(標高2,565m)の食堂の飼い犬
画像左中下:花蓮客運バス。車内はきれいだが、運転はコワイ。
画像右下:恐怖の大禹嶺〜天祥間。手前の山に線のように見えるのがバスの通る道。
画像左下:花蓮客運バス。日が暮れはじめて霧もでてきたが、運転手は山道に慣れているようだ。
画像最右下:大禹嶺〜天祥間。闇に浮かぶ中央山脈の山々。


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