■台湾鉄道・支線之旅(1)平渓線〜蛍に出会う旅〜 2006.6.20 update

台湾の鉄道にはどこか懐かしさが漂う。小さな駅の待合室も、改札口も、ホームも古い日本の田舎の駅にとてもよく似ている。駅員さんの制服までもが昔の国鉄風で、時々ふとここは日本ではないかというような錯覚に陥ることさえある。50年間にわたる“日治時代”に築かれた鉄道の基礎がいまもここに残っているのだから、私達日本人が懐かしいと感じるのも当然かもしれない。ただし、そこには台湾人の人が感じる純粋なノスタルジーとは異なる複雑な思いも交差する。最近日本ではいとも簡単に古い駅舎などを壊してしまうところが多い。

しかし台湾の素晴らしいところは、日本時代の古い駅舎を修復しつつ大切に保存しているところだ。台湾第二の都市・高雄の駅も駅ビル化したものの、古い日本時代の駅舎をそのまま隣に移築し、ギャラリーとして開放している。台中、新竹の駅舎なども丁寧に修復しながら昔の面影を残している。さらにここ数年の「復古」「懐舊」といったいわゆるレトロブームの影響で、週末に鉄道小旅行に出かける若い人もけっこういるらしい。特に人気なのが“充満復古懐情的支線之旅”(懐かしさいっぱいのローカル線の旅)だという。「小火車」(短い2〜3輌編成の列車)に乗って、沿線の古い街並みを巡り、昔懐かしい味「古早味」を再現した食堂でご飯を食べるというのが人気らしい。というわけで、今回の台湾レポートは勝手ながらシリーズ第一弾!「台湾鉄道・支線之旅(1)平渓線の旅」へ、いざ出発進行!

旅は台北から特急・自強號で約40分の東部幹線の駅、瑞芳から始まる。日本人観光客にも人気のかつてゴールド・ラッシュに沸いた階段の街“九イ分”へ行くバスもこの駅から出ている。この瑞芳駅から内陸に向かってのびる全9駅・片道40分の短い路線が平渓線だ。一日乗車券は54元。終点の菁桐行きの列車は一日に13本、約2時間に一本の計算だ(土日に臨時列車あり)。“雨の街”と呼ばれる基隆からも程近いこの沿線は雨がよく似合う。この日も降りしきる雨が車窓を潤ませ、途中通り過ぎる小さな駅の古ぼけた駅舎やホームを静かに濡らしていた。三輌編成の短い「小火車」は、雨に洗われた緑の森をいくつも抜けて山奥へと入って行く。

終点の菁桐駅周辺には炭鉱で栄えていた頃の日本時代の古い木造の住居が多く残されており、それをおしゃれなカフェに改装している所もあった。「古早味」アイスキャンディーをかじりながら、菁桐駅から平渓駅までは散歩がてら歩いてみることに。台北のあの蒸し暑さと喧騒を忘れてしまうほど、空気は澄んでひんやりと冷たく、静けさの中に絶えず川のせせらぎが聞こえる。“平渓”という名前の通りこの路線は基隆河に沿って走っており、どの駅前にも吊橋があり川の両岸に街が開けていた。平渓に着くと、そこにもやはり川と線路を中心に老街(古い街並み)が広がっていた。平渓駅は川岸の階段を登った所にあった。緑にすっぽり覆われて最初は駅だとは分からなかった。小さなホームのベンチで列車を待っていると川からの風が心地いい。線路を挟んだ両側にはぎりぎりまで木造の民家がせまっており、地元の人がのんびりと線路を往来する姿がみられた。

3つ前の十分駅まで戻る。十分といえば旧暦1月15日の元宵節に飛ばす「天燈」(熱気球のような提灯)を扱う店が多いことでも有名だ。昔平渓線は石炭を運ぶために利用され、十分もまた炭鉱によって栄えた町であったが炭鉱が閉鎖されてからは人口も激減しずいぶんさびれてしまったと炭鉱博物館の人が説明してくれた。今は年に一度元宵節の時だけ大勢の観光客でにぎわうだけだという。炭鉱博物館では自家発電のトロッコに乗せてもらって大興奮。

やがて雨も上がり、駅前のカフェで日が落ちるのを待ってから蛍が出るという草むらへ向かった。駅から歩いて5分ほどの草地には民家もなく、暗く細いあぜ道だけが続いていた。わずかな月明かりだけを頼りに、闇の中を一歩一歩かすかに聞こえる小川の水の音をたどって行くと、ふと草むらの中にごくごく小さな黄緑の光が見えた。最初はただ一つの光に見えたが、辺りを見渡すとその小さな光が遠くに近くに無数に広がっていた。音もなくその小さな点のような光がそれぞれにゆっくりとやさしく点滅していた。どれくらいそこにいただろう。遠くに列車の音が聞こえた。上りの電車は15分後だ。私はゆっくりと淡い光を後にした。雨上がりの蛍と平渓線の風景。そこには川のせせらぎのような、ゆったりとした時間が流れていた。

* NT$(台湾ドル)1元=約3.49円(2006年6月現在)

□台湾鉄路管理局HP
http://www.railway.gov.tw/

画像上段
画像左:車窓から見た雨の平渓線
画像中:平渓駅の看板
画像右:川岸を登ったところにある平渓駅
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画像中段
画像左:線路の上を歩く人
画像中:平渓駅近く。民家がぎりぎりまで迫っている
画像右:十分駅に停車中の「小火車」
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画像下段
画像左:十分駅前の様子。民家のすぐ前に線路がある
画像中:八百屋もかなりせりだしている
画像左:十分駅近くの吊橋で、犬もの〜んびり

【短信】毎年、死ぬほど“粽子”(ゾンズ)=粽(ちまき)をもらい、胃が重い端午節。台湾の粽は地方にもよるが、とにかく油っこくて具がぎっしりですごいボリューム! 例年の粽攻撃をかわすために、去年「粽嫌い」をアピールしたのが功を奏したのか 今年は1つもいただかずに端午節も無事修了・・・と思ったら、「今年は甘い粽をどうぞ」。デ、デカイ・・シロップや蜂蜜をかけて食べるそうな。(6/3)


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