■“拜拜”〜道教の神様“保生大帝”を迎えて〜 2006.5.16 update

道教、仏教、キリスト教、イスラム教、儒教、天理教・・・その他「媽祖」などの民間信仰を合わせると、台湾はまさに宗教のデパート。その中でも特に中国福建・広東省からの移民と共にもたらされた道教が最も広く親しまれている宗教といえる。もともと道教の神様は多数いるのだが、それらの神様を祀る真っ赤でハデハデの廟の数は台湾に7千とも8千ともいわれ、一つの廟の中に何体もの神様が祀られている。その中には観音様もいっしょに祀られていたりして実におおらかだ。

その廟の数に比例するかのように、道教は台湾人の日々の生活の中に深く浸透している。実際台湾に暮らして3年、人々が旧暦のカレンダーをもとにしばしば“拜拜”(パイパイ)を行う光景もすっかり見慣れてしまった。この日はほとんどの家で軒先や店先に白い角テーブルを出し、お供え物をし、金紙を焼くのだ。

さて、ある日、学生の林さんから「先生、今度家で大きな“拜拜”があるので是非来てください」と自宅に招待され、青々とした田んぼの中に立つ学生さんの家へ。門から敷地の中に入ると、いつもの軒先“拜拜”と思いきや・・・庭には巨大なテントが! その下にはなんと100人以上の人がテーブルを囲んで既に盛り上がっているではないか! 真っ赤なテーブルクロスがかけられたテーブルは全部で16もあり、聞けばこの人たちはすべて招待客だという。ほとんどが近所の人などこの集落の住民で、残りは廟の人、友人だという。

いきなり度肝を抜かれて興奮していると、あれよあれよという間に席に案内された。ほどなくして豪華な前菜が運ばれてきた。分けもわからないまま乾杯しつつ冷静に辺りを見回してみると、玄関の横に立派な祭壇が設けられている。祭壇の横には人形が、庭の隅の方にはお神輿やら楽器やらが準備されている。

林さんに話を聞くと、実はここの集落の廟の占いで今年は林家の番が回ってきたので、今日は家に神様をお迎えして盛大に“拜拜”を行うらしい。この当番はすべて占いで決定されるためかなり不定期なので、前回この林家が“拜拜”を行ったのはなんと4〜50年前!とかで、記憶にないほど昔のことだというからすごい。つまり今日は林家の人々にとって一生に一度ともいえるビッグ・イベントだったのだ。

続いて大きな豚の足がドーンとテーブルに並ぶと同時に、次々と料理が運ばれてきた。なんと全部で10以上の料理が用意されているらしい。この料理も含めて総費用はなんと10万元! すべて林家の負担だというから驚き! 日本円に換算すると30万円以上のこの費用は、物価が日本の3分の1ぐらいと考えると決して安くはない。林さんいわく「まあ何十年に一度だしね」と、これを当たり前のように受け入れている台湾の人の信心深さというか懐の深さには全く感心してしまう。

食事が済むと、林家の人々は廟の人の指示に従い祭壇の前に跪きお参りを始めた。祭壇の上にいる神様は龍徳廟から来た“保生大帝”だ。主に“医”を司り、その土地の人々の健康のほか、土地と財を守ると言われている。やがて楽隊が騒々しい演奏を始めると、廟の人が祭壇の横にあったかぶり物の人形をつける。人形は全部で4体、土地の守り神である“土地公”と“三兄弟”だ。いずれもユニークな顔をしている。これが突然音楽にあわせて踊りだした。太鼓や鐘が激しく打ち鳴らされ、耳をつんざくようなラッパの顔が響き渡る。それにあわせて人形の踊りも激しくなるのだが、人形が笑顔に反してかなり激しい踊りを見せるので、すごく笑える。

やがてババババンと爆竹が鳴らされたのを合図に、神様がお神輿に乗せられ動き始めた。続いて楽隊、人形が踊りながら続き、ぞろぞろと門から出て行く。“保生大帝”様を“土地公”と“三兄弟”がお守りして無事廟まで送り届けるのだという。廟までこのまま歩いていくのかと思いきや外には軽トラックが待機しており、お神輿も楽隊も人形もあっさり荷台に載って、道端にバナナの葉が揺れる田んぼ道をピューと行ってしまった。最後尾には、長いお線香を片手にさっそうとバイクに乗った林家の当主の姿があった。神様が去った後、林家の人々は庭で改めて爆竹を鳴らす。みんな耳を塞ぎながら、“平安”を祈っているのだろうかと思った。この家に次に神様がやってくるのは何十年後のことだろう。

*NT$(台湾ドル)1元=約3.57円(2006年5月現在)

-文中の画像-
画像上:林家の玄関横に設けられた祭壇。
画像中:大きな豚の足、豪華な料理が並ぶ
画像下:祭壇の前に跪く林家の人々。
画像下:お神輿と土地公のおじいさん。
画像下:“三兄弟”登場!けっこうかわいい。

画像左:意外と踊りは激しいのだ。
画像中:お神輿はあっさりトラックで移動。
画像右:林家の当主はお香片手にさっそうとバイクで移動。

【短信】今月の“台湾的”中国語。台湾のニュースでは日本の話題もよく取り上げられる。逮捕された堀江貴文ライブドア前社長ことホリエモンの映像とともに“活力門”(発音はフオーリームン)の文字が出たので、「おお!ついにホリエモンも中国語になったか!」と思ったら、“活力”=ライブ、“門”=ドア、つまり“livedoor”のことだった(4/30)


<<もどる