■発見! 魅力のフォルモサ紅茶 2006.4.18 update

静かな森に抱かれた美しい湖、日月潭(リーユエタン)。台湾中部の南投縣魚池郷にあるこの湖周辺は台湾屈指の景勝地であると同時に、紅茶の産地としても有名である。台湾一のお茶の生産量を誇る南投縣では「台湾十大銘茶」のうち3種類のお茶が栽培されている。「凍頂茶」、「高山茶」、そしてこの「日月潭紅茶」である。台湾で紅茶というとちょっと意外な気もするが、実は長い歴史がある。

台湾で紅茶の栽培が始まったのは約100年前。当時、台湾本土の小葉種から紅茶を作っていたが味は今ひとつだったらしく、日本統治時代の1925年にインドから大葉種の“阿薩姆”(アッサム)の苗を持ち込み魚池郷一帯に植えてみたところ、気候や土壌が栽培に適していることがわかり、本格的な栽培に取り組むようになったという。

1936年に「茶葉改良場魚池分場」が建設されてからは、いっそう茶葉の研究や生産に力を入れるようになり、課『Formosa Black Tea』(台湾紅茶)はやがて『Formosa Oolong Tea』(台湾烏龍茶)とともに欧米に輸出されるようになった。当時、台湾紅茶は多い時には7千トンも輸出されるほどの主力商品だったという。しかしこの輝ける台湾紅茶の歴史も日本の敗戦とともに光を失い、中国大陸で常飲されている「緑茶」の生産に取って代わられてしまう。その後見事に烏龍茶が復権、今では台湾茶の代名詞となった。

やがて台湾では「立頓」(リプトン)の参入により、紅茶は一気に大衆化。さらに日本人も大好きな「珍珠茶」(チンジュナイチャ)の発明により、台湾国内の紅茶の消費量は驚異的な数字となった。しかし実際に使われている茶葉のほとんどが安価なベトナムやスリランカからの輸入で、生産量の少ない台湾紅茶は熾烈な低価格競争の中でその存在そのものが忘れられようとしていた。

ところが意外にも1999年に台湾中部を襲った921台湾大震災をきっかけに台湾紅茶が見直されるようになった。政府は被災地の経済復興の為に、地元産業に積極的な援助を行った。その結果ここ魚池の紅茶は、安い輸入紅茶とは一線を画した高品質な価値ある商品として生まれ変わったのである。インドのアッサムを改良した“阿薩姆紅茶”は『森林紅茶』(台茶8號)というブランド名で新たに注目されるようになった。その魚池郷に、今なお日本時代からの手法で紅茶を作り続けているお茶農家があり、そこで紅茶のDIYができるというので早速行って見ることに! 費用は1人350元。

静かな山の奥にひっそりとたたずむ「和菓森林阿薩姆荘園」は“香茶巷”という住所からもわかるように、日本時代には紅茶の製茶場があったという。師匠の石朝幸さんはその製茶場で働いて習得した技術を娘さん夫婦と共に守り続けている。先に紹介した『森林紅茶』は震災後にできた新ブランドで、茶葉はBOP(Broken Orange Pekoe)で細かく切断されたタイプである。一方この「和菓森林」の紅茶はすべて手摘みでWhole Leaf Type、つまり茶葉を切断せずそのまま使用している。このような茶葉は抽出するのに時間はかかるものの、香りの立ち方が全然違うという。

まずはオリジナルの『阿薩姆(アッサム)紅茶』を試飲。濃厚な味わいと芳醇な香りはインドのアッサムに負けないおいしさ。後味の爽やかさが独特の風味をかもしだしている。それでは早速DIY開始! 一番お茶の出来がいい参加者には賞品が出るらしい。紅茶作りには採茶、萎凋、揉捻、乾燥、発酵、焙という行程がある。まずは娘さんが小雨の中、さらに山奥の小さな茶園を案内してくれた。そこには数種類の紅茶の木が並んでおり、中には70歳以上の木もあるという。ぬかるむ足元を気にしながら手摘みの方法を指導してもらう。続く「揉捻」は大きなザルの上で茶葉をやさしく回しながら揉む単純な作業を、腰痛と戦いながら茶葉に粘りが出るまで延々1時間半。

「乾燥」の間に台湾紅茶の講義があり、品種を当てる聞き茶も体験。やがて紅茶が完成すると、いよいよ師匠による審査だ。その結果なんと私のお茶が参加者11人中1位を獲得! 失業したら紅茶職人に転職できるかも? 最後に自分で作ったお茶をかわいい缶に詰めてもらうと腰痛も忘れて思わず感動! またお土産には是非『紅玉』(台茶18號)を。今まで味わったことのない香りと味わいがとっても新鮮。

紅茶のやさしい香りに包まれながらの3時間。日本時代に育まれたフォルモサ紅茶はどこか懐かしい味がした。

□和菓子森林
住所:台湾南投縣魚池郷新城村香茶巷5-2號
電話:(049)289-7238

*NT$(台湾ドル)1元=約3.64円(2006年4月現在)

-文中の画像-
画像上:親切な石さん一家。後ろの写真は日本時代の製茶工場。
画像中:「和菓森林」DIY工房入り口。
画像下:左からお薦めの『紅玉』(台茶18號)、『紅寶石』、『阿薩姆紅茶』。いずれも台湾では珍しいおしゃれな缶入りで380元。『紅玉』は台湾原生の山茶とミャンマーの茶葉をかけあわせた新品種。シナモン(肉桂)とミント(薄荷)の香りを併せ持ち、さわやかな甘みが特徴。口の中で何度も変化する味を楽しみたいならぜひストレートで。『紅寶石』はルビーという意味。台湾原生の山茶で、烏龍茶のような味わいが台湾の大地を思わせる。『阿薩姆紅茶』ここのアッサムは濃厚なのに後味爽やか。ミルクティーがGood!

画像左:茶園での茶摘み指導。一芯二葉(Orange Pekoe)。
画像中:「揉捻」開始〜腰痛との闘い。
画像右:紅茶についての講義中。台湾紅茶の歴史、おいしい入れ方、聞き茶や鑑定方法について学ぶ。

画像左:聞き茶では品種を当てる。けっこう難問。
画像中:ようやく完成! 鑑定を待つばかり。
画像右:こんなかわいい缶に詰めてもらって、世界に一つ自分だけのオリジナル紅茶。1位の賞品は芯芽を多く含んだ『白毫紅茶』でした。


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