■進化する月餅、変わりゆく中秋節 2005.10.17 update

旧暦の8月15日は中秋節。日本では“十五夜”に相当するが、台湾では春節(旧正月)、端午節(旧暦5月5日)と並んで台湾三大祝日に数えられる。通常ならこの日は当然休みになるはずなのだが、今年はこの中秋節が新暦の9月18日の日曜日にぶつかってしまい、一般に振替休日制度のない台湾では、(一部の企業などを除いて)残念ながら休みが一日減ってしまった。

さて、中秋節の代名詞ともいえるのが中秋月餅。しかし、台湾の月餅は私達日本人が想像しているそれとちょっと違っていた。私も最近知ったことなのだが、日本でよく見かけるずっしりと重くて正方形、表面に独特の彫ったような模様のある、いかにも中華風といった月餅は、実は香港の伝統的な月餅だったのだ。ここ台湾でも「港式月餅」と呼び、台湾の伝統的な月餅と区別している。

台湾の月餅は、見た目は中華風というより和風という感じ。甘さ控えめで食べやすいが、若干水分が少なくてパサパサしているのが難点(このパサパサ感は、どうも台湾人の好みらしい)。代表的な台湾の月餅はというと、
緑豆凸:まわりが白く、緑豆餡が入っている。凸(ポン)は台湾語で、出来たてアツアツの様子をあらわす言葉“ポンポン”から来ているらしい
蛋黄酥:焼き菓子のように茶色で丸い、中に卵が入っている
小月餅:小型で淡い黄色、やわらかく中に小さな卵が入っている
などが挙げられる。

しかし、この中秋月餅も近頃ずいぶん進化してきているようだ。というのも、中秋の一か月ぐらい前になると、コンビ二やスーパーなどで中秋月餅の予約販売の受付が始まる。セブンイレブンやファミリー・マートには月餅のカタログが常備されており、街のお菓子屋さんでは買えないような数十種類ものスペシャルな月餅を自由に選んで気軽に注文できる。これがまた見ているだけでも楽しくなってしまうユニークな月餅?が勢ぞろい。例えば、香港の有名店の「港式」(香港式)月餅はまだいいとして、紅茶とクッキーがセットになった「英式」(イギリス式)の他、「日式」(日本式)は種類が多く、最中から、沖縄黒砂糖使用のもち菓子、羊羹、いちご大福のパクリまである。

また台湾式月餅においても、伝統的なものから、パイやタルト風、蒸し月餅、冷やして食べるアイス月餅までさまざまだ。こうなってくるともはや月餅ではない気もするが、これも時代なのかもしれない。その他キャラクターものも大人気で、キティちゃん月餅、ピーターラビット月餅、くまのプーさん月餅などがある。またスターバックスやバリスタ・コーヒーがオリジナルのコーヒー月餅を毎年出しているのには驚きだ。

ところで台湾の中秋には月餅の他に、「文旦」(ブンタン、ザボン、ボンタンともいう)という柑橘系の果物を食べる習慣がある。日本でも黄色くて丸型のものは九州地区などでも栽培されている。中秋節の当日まで親しい人やお世話になった人に「月餅」や「文旦」を贈るのは昔からの習慣だそうだ。ちなみに月餅のお値段は一箱300元(*)前後〜、贈答用文旦は400元前後〜がだいたいの相場だそうだ。街のお菓子屋さんに月餅の文字が掲げられ、市場に「文旦」が並び始めると、台湾の秋はもうそこまで来ていると言う感じがするが、実際にはまだまだ暑いというのが現実・・・。

最後に、台湾中秋節の風物詩がもう一つ。「月餅」、「文旦」はまだいいとして、ここ10年ぐらいの間にすっかり定着したのが中秋バーベキューだ。中秋が近づくと、街のあちこちで家族や同僚などが集まって、軒先や庭先でわいわい肉を焼いて、大音量でカラオケを楽しんでいる光景が見受けられる。決して風流とはいえないが、これも新しい中秋節の過ごし方なのだろう。

そんなにぎわいの一方で、道端にひっそりと臨時の台を設け、お香を焚き、お供え物をし、静かに中秋の名月を待つ人たちの横で移動式の人形劇がチャカチャカと昔ながらのメロディーを響かせていた。

(*)NT$(台湾ドル)1元=約3.39円(2005年10月現在)

-文中の画像-
画像右上:バラエティ豊かな月餅たち。お皿の手前左が「蛋黄酥」の断面、右が「小月餅」の断面。お皿の上奥は左から「蛋黄酥」、「緑豆凸」、「抹茶月餅」、「芋月餅」。お皿の後ろに置かれたものは、左から新発売の「蒸し月餅」、バリスタ・コーヒーの「カプチーノ月餅」、隣は「梅月餅」と「小月餅」
画像左上:街のお菓子屋さん。中秋月餅の赤い幟はこの時期だけ
画像右下:贈答用の箱入り「文旦」
画像左下:トラックの移動式人形劇。中秋節の街角で

画像左:最も伝統的な「緑豆凸」
画像中:コンビ二やスーパーで注文できる月餅のカタログ
画像右:台湾中秋節の新しい過ごし方、バーベキュー

【短信】「愛知万博」以降、台湾人が日本を旅行するときの観光ビザが免除になり、もともと多かった日本への旅行客がさらに急増。格安ツアーも目白押しだ。ところが、10月以降は「紅葉」効果も手伝ってツアー料金も一気に上昇。10月は北海道、11月は東京、京都などが人気だそう。またディズニーランド効果で香港ツアーの人気も高まっている。(9/26)


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