10月中旬までは夏の気候で、日中は半袖で過ごしていた南イタリアですが、「はい、今日から冬ですよ!」と区切りがつけられたかのように、下旬にいきなり寒くなりました。秋を通り越して、もう冬といった感じ! 気温差は20℃近くあるのではないでしょうか? 半袖からいきなりコートが必要な気温になってしまって、私も今年は衣替えが大変でした。寒いのは苦手な私ですが、寒くなるこの季節だからこそ、とっても楽しみにしているものがあります。それが今回ご紹介するズッパ・フォルテです。
それは私の住むナポリに伝わる煮込み料理で、寒い時期にしか作りません。材料は豚の臓物全て! 肺、肝臓、心臓、脾臓などの内臓から気管まで、とにかく臓物をいっしょくたに細かく刻んで、ラードや唐辛子エキス、濃縮トマトと共にじっくり煮込んでいきます。香り付けのハーブはローリエのみ。私が一番最初にこの料理を食べた時には、中味が一体なんだか知らなかったのですが、あまりの美味しさにノックアウト! 材料や作り方をすぐに聞いたほどでした。
豚の内臓が全部入っていると知った時には驚きましたけど、臓物というとクセの強いというか、アクの強い感じがしますが、このズッパは臓物の味と唐辛子の強さと、濃縮トマトの配分が完璧なのか、臭いもアクの強さも全くなく、しかし味わいはとても深くて、とにかく美味しい一品なのです〜。
家庭でも昔の主婦は作っていたようですし、今でも作る人はいますが、お肉屋さんが作ったものを買ってくる人が多くなりました。手作りですと、どうも味が深くならないように感じます。でもお肉屋さんのだと、本当にどっしりとした深い味わいになる……一体どうしてだろう? その謎を探りに、馴染みのお肉屋さんに突撃取材に出かけました!! 1855年からお肉屋さんが家業というアンジェロさんのお店です。
画像左:お肉屋さんの店内。キリストや聖母マリアの額が飾ってあるのが、信心深い南イタリアを物語っています。
画像中:アンジェロさんのお父さんの写真。もちろんお父さんもお肉屋さんでした。
画像右:地物のウサギ肉入手! 捌いたのはもちろんアンジェロさんです(画像は店員さん)。
-----------------------------------
今年の初めに家の引越があったので、食料関係のお店も新しいところを開拓していかないといけませんでした。周囲にお肉屋さんは何軒かあるのですが、近所の人たちのお薦めが、このアンジェロさんのお店でした。何しろ昔からのお肉屋さんなので、美味しいお肉の入手先も知っているし、本当に良品しか置いていないとの事。私も行ってみると、確かにどんなお肉も美味しいし、しかも羊やウサギ肉は、普通のものより何倍も美味しい地物も扱っています。
そんな美味しい肉ばかりを扱うアンジェロさんなので、ズッパ・フォルテもスーパーの精肉部で売ってるものとは大違い! その調理を拝見できるとわくわくして行ったら、な、なんと店頭で煮込みが開始されていたではないですか?! ガスボンベに繋がれた大型のコンロの上に大きな寸胴鍋が置かれ、すでにラードと唐辛子エキスが煮込まれていました。お店の中は巨大な貯蔵冷蔵庫と解体作業場しかないので、煮込みは外で…という事でした。
画像左:日本ではハチノス(第二胃袋)、センマイ(第三胃袋)と言われる牛の胃ですが、こちらではトリッパと呼ばれ、レモンを搾っておつまみとして食されます。
画像中:店先でガスボンベを使って煮込まれるズッパ・フォルテ。
画像右:内臓肉をドンドン入れて煮込んでいきます。
-----------------------------------
ただの煮込み料理と言っても、材料から手作りです。ラードはもちろんアンジェロさんが豚の脂肪から取りますし、唐辛子エキスは伯母さんが作っているそうです。長年の経験からどのようにしたら最高に美味しくなるかという臓物の配分もインプットされていますし、豚の臓物でも生食可能なほど新鮮な材料を使っているとか。それにこれだけ大量に作るのですから、結果が美味しいのは当然ですね!
家庭ではこれだけ新鮮な臓物をいくつも揃えるなんて手間ですし、せいぜい数種類で済ませてしまうからか、味にコクが出ないのでしょうか。それに煮込み料理は大量に作った方が美味しいのは常識! 材料から見ても量から見ても、お肉屋さんが作るズッパ・フォルテが一番美味しいのは当然だ!と、現場を見て思いました。
画像左:こちらがアンジェロさん。もちろんラードもお肉屋さんの手作りです。
画像中:辛み抜群!の唐辛子エキス
画像右:3、4時間の煮込みの間、ほぼずっとかき混ぜています。
-----------------------------------
お肉屋さんで売られる時には、煮詰めた状態になっているので、それを鍋に入れ、適量のお水で煮といて温め直します。どろっとした状態にして、カリっと焼いたトーストを添えてスープとして食べるのもいいですが、パスタに絡めて食べるのがサイコウ! このソースに最適なパスタは、スパゲティでもいいのですが、一番なのはストロー状のブカティーニです。とっても辛い唐辛子エキスを大量に加える割には仕上がりはそれほどでもありません。辛さ的にはカレーの甘口と言った感じでしょうか。少量加える濃縮トマトが辛さを中和させているのかもしれません。でも自然と身体がポカポカと温まってくるので、味がサイコウなのは別としても、本当にこの時期には有り難い一品です。
お料理の名前ですが、イタリア語表記は Zuppa Forteで『辛いスープ』という意味。イタリア語のForteには『強い』という意味の他にも、そのかねあいで『味が強い』『辛い』という意味もあります。他にはSoffritto(ソッフリット)と呼ばれる事もありますが、こちらの意味は『炒め煮』などの意味もあり、ナポリ以外では野菜料理が出てくることもありますので、ズッパ・フォルテの方が通じやすいかと思い、この名前でご紹介させていただきました。
いわゆる家庭料理ですので、高級・中級レストランにはメニューにないものですが、庶民的なトラットリア(大衆食堂のようなもの)には秋から冬にかけての季節限定メニューに登場しますので、この時期にナポリに訪れる方は是非、ご賞味あれ! ちなみに…私は遊びに来る日本人の友人達全員にこのお料理を食べてもらっていますが、『あのパスタが一番美味しかった!』という人続出なんですよー! 本当にオススメの一品です〜。
画像左:ズッパ・フォルテはこのようにパックに詰めて売られます。
画像中:ストロー状のブカティーニに絡めたズッパ・フォルテができあがり!
画像右:アンジェロさん(左)にお店の従業員の方々。ご協力ありがとうございました!
----------------------------------- |