■酒の神バッカスの住まう国で 2004.2.2 update

シチリアに行く度にガイドをお願いしているマリオ(パレルモ在住)に「シチリアのヴィーノ(ワイン)をお土産にしたいのだけど」と相談を持ちかけると、彼は神殿で有名なセリヌンテという街からパレルモへと戻る途中、一軒のお店へ寄ってくれた。店に入ってから、ああこれがあのエノテーカなのだと気がついた。

エノテーカとは、様々なヴィーノを取り揃え、試飲をした上でヴィーノを購入することができるスポットのことだ。この形態にテーブル席などが加わることでリストランテへと発展するエノテーカもある。エノテーカではヴィーノの知識が豊富な店のスタッフが様々な相談にも乗ってくれるのが特徴である。

さて私がその日に入ったエノテーカは、純粋なる試飲スポットとしてのエノテーカだった。カウンターの奥にスタッフが待機。彼らの背後にはおびただしい数のボトルが並んでいる。客が銘柄を告げると迷うことなく瓶を取り出し、小さなプラスチックのコップに注ぎ入れてくれる。客はカウンターで立ったまま試飲をするか、店内の丸テーブルを囲んでやはり立ったままチビリとやる。気に入ったものが見つかれば新品のボトルを出してもらい、出入口付近のレジで清算を済ます。

私はマリオの勧めに応じ、いくつかのマルサラ酒を口にし、その中で最も口あたりの滑らかなものを包んでもらった。店内では赤い顔の人々が林立し、様々な銘柄が次々と叫ばれ、異様な熱気に包まれていた。明らかに小学生と思われる男の子がコップに口をつけている。買いもしないで繰り返し試飲を所望するご婦人。マリオは私の存在を忘れ琥珀色の液体に恍惚としている。外では20台近い車が思うままの形で店を取り囲んで停められている。

帰国してから気づいた。お酒と子ども。お酒と車。その組合せは日本にいる私から見れば紛れもない違法行為だったと。酒を飲んだ事実を知りながら、その人間に運転させた私も明らかに法を犯していることになる。しかし法のホの字も浮かばない雰囲気があの時、確かにエノテーカにはあった。

調べてみると、イタリアには飲酒の年齢制限がなかった。そしてまた運転の際のアルコール制限が非常に緩やかであることが分かった。ただ後者については2002年夏から運転する際のアルコール規制が厳しくなった。EU諸国と足並みをそろえて、運転時の体内アルコール濃度許容量について従来は血液100mlあたり0・8mgのアルコール濃度が認められてきたが、0・5mgに減らされた。しかしこれでも日本の道交法の厳しさに比べたら…。規制後もハーフ・ボトルを飲んでも平然と運転できるのだ。そしてこんな厳しい(?)規制をきちんと守っているイタリア人は少ないとも言われる。さすがバッカス(酒の神)の住まう国である。が、マリオにはせめて私が同乗する際は、酒はほどほどに…と懇願したい気分ではある。

画像上:エノテーカの熱狂。酒の魔力に男も女も魅せられて
画像下:マルサラで見た、マルサラ酒の巨大な墫!


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