|
旅行でイタリアへ行ったことのある人がどんどん増えている。イタリア・ブームがまだまだ続いていることの証なのだろう。こうなってくると輸入されたティラ・ミ・スやオリーブオイルなどが日常化するのは当たり前、今やイタリア国内に限定された「慣習」についても知識として一般化してくる。そのひとつがイタリアで頻発するストライキ、ショーペロだろう。ショーペロは頻発するものだから、交通機関の麻痺により綿密に立てられた旅行の計画がパアになってしまったという人はたくさんいる。それゆえ旅行中の辛い経験が帰国後に語られ、ショーペロの噂は広がっていくという按配だ。
日本ならばせいぜい交通機関でのストにとどまり、それもほとんどが労使間で折り合いがついて回避となるが、イタリアではどんな業種でもショーペロを行い、そしてまず断行されてしまう。列車だけでなく、新聞、教師、郵便屋、タクシー、車メーカー、なんでもありなのだ。
先日、NHKのBSで日曜の朝に放映されているRAI(イタリアの国営放送)を見ていたら、ニュース関連の映像がまったく流されず、アナウンサーでもないおじさまの顔がずっと映っている。カメラマンもアナウンスの美女もショーペロ。それでしかたなくRAIの経営陣のひとりがニュースを読み上げているのだ。日本ではあり得ない、なんとも異様な光景だ。
自分だけは大丈夫だと思っていた私も、実は2年前にローマのテルミネ駅でスーツケースを抱えたままタクシーのショーペロに遭遇してしまった。なんとかスーツケースを転がして広場までたどり着くと、あるある!何十台ものタクシーが!いちばん前に行って、窓ガラスを叩くがタッシスタ(タクシー運転手)は首を振る。その後ろも、またその後ろのタクシーも乗車拒否。気づくと「24時間、スト断行」の紙切れがフロントのワイパーで留められていた。日本のようにA社は回避、B社は断行ということはない。会社単位の労使交渉でなく、業界単位。だからタクシーが駄目なら他の手立てを考えなければならない。
イタリア人はショーペロが日常化していて慣れっこだから怒らない、テレビや新聞などで事前に予告されるから観光客のようにショックを受けないと言われるが、実のところ自分がショーペロする側にまわる可能性も極めて高い。だから「お互い様」という意識が強いのだと思う。
考え方によってはショーペロだって人間(労働者)としての権利なわけだから、日本のように形骸化されたストよりもよほど人間的かもしれない。だいたいこのタクシー・ショーペロに困り果てていたら、見ず知らずのおじさんが近づいてきて、「お困りだろう?私の車は今出せないけど、アミーコ(友だち)なら大丈夫だから、呼んできてあげようか?」なんて声を掛けてくれた。ショーペロひとつにも、まさにイタリアならではの人間臭さがある。だから、迷惑なショーペロもイタリアの一部と思えるのだ。
画像上:時間になってもやって来ない列車を待って、気に病む人々
画像下:たくさん停まっているのに、どれも乗車拒否のタクシー・スト
|