■くるみ割り人形 2002.11.4 update

大きく見開いた青い目。口元にたくわえた凛々しいお髭。そして、何でも砕いてしまいそうな立派なあご。皆さんは何を想像しますか?そう、これはドイツの代表的な木のおもちゃ、くるみ割り人形です。これから、寒く長い冬を迎えるドイツ。そんな憂鬱な毎日を少しでも楽しく過ごすためでしょうか、街のデパートには早くもクリスマスのデコレーション売り場が設けられました。そこには様々な大きさのくるみ割り人形も置かれています。クリスマスが近づくこの時期はもちろん、一年中飾っても飽きの来ないこの人形。独特の風貌がとても愛らしいですよね。しかも"くるみを割る道具"という実用性を兼ね備えているところが、いかにもドイツらしいところ。この記事を読んでいらっしゃる方の中に、旅行のお土産として購入した方もいらっしゃるのではないでしょうか?

チャイコフスキーのバレエ組曲として、またそのモチーフであるドイツ人作家ホフマンの童話で有名なくるみ割り人形ですが、いつ頃から作られ始めたのか実ははっきりしていません。くるみを割るための器具は紀元前からありましたし、中世の文書にも登場しますが、当時は上流階級の人々に用いられたらしく、松やブナなどの固い木に細かな彫刻が施されていました。フランスやスイス、あるいはチロル地方でも作られていたようです。現在のお馴染みの人形は、19世紀も半ばを過ぎた頃、ドイツ東部、エルツ地方の山あいの村、ザイフェンで作られました。ザイフェンは15世紀に開かれたすず鉱山とともに栄えた小さな村。時が流れ、鉱山の歴史に幕が下りた時、おもちゃ作りを副業としていたヴィルヘルム・フリードリヒ・フュフトナーの手によってその人形は命を吹き込まれました。そして「ザイフェンのくるみ割り人形」として世界的に有名になっていったのです。ちなみにフュフトナー家では、代替わりした今でも自らの工房でくるみ割り人形を作り続けているそうですよ。

毎年12月になると、この村は大勢の観光客で賑わいます。そこではくるみ割り人形だけでなく、たくさんのおもちゃ達が出迎えてくれます。両手に明かりを持った天使の人形、ろうそくの火でくるくる回るクリスマス・ピラミッド、そして暖かな光りを放つランプなど、見ているだけで、もううっとり。ホフマンの童話の中では、おもちゃの指揮官として活躍するくるみ割り人形。今年のクリスマスも、私たちをメルヘンの世界へ導いてくれそうです。

画像上:ザイフェンを代表するおもちゃ、くるみ割り人形とクリスマス・ピラミッド
画像下:12月の夕暮れの、ザイフェンの街並み。


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