■ドイツの新世代温泉 2004.5.3 update

ドイツの温泉は日々進化を遂げています。そして今、この時代を生きるドイツ人、そして日本人の私にも、こよなく優しく心地よい温泉が誕生しつつあります。

Bad Kissinger(バート・キッシンゲン)は伝統ある温泉地です。この地を訪ねた数多の著名人の中で、最も有名なのがオーストリア皇妃エリザベートです。堅苦しいウィーンの宮廷生活を嫌って、美貌の皇妃シィシィは、山々を巡り自然と親しむ生活をこの地で過ごしました。宮廷での嫁姑の確執、オーストリア・ハプスブルグ家の重圧、不穏な世界情勢、皇妃としての重い責務が、自由奔放に育ってきたシィシィの精神と健康を蝕んだのですが、それをこの自然豊かな温泉地での療養がいやしました。

19世紀前半の王侯貴族の訪れる温泉地としての施設は、その威容を誇って現在も美しい姿のまま残されています。カジノ、クアハウス、温泉公園、コンサートホールは、贅を尽くした姿をそのまま留めて、療養客や観光客の楽しみに今も供されています。

そこに新たに加わったのが、KissSalis Therme(キサリス・テルメ/温泉)です。それまでの温泉施設は、療養や治療客が主体だったのですが、2004年の3月に、健康な人も家族連れで楽しめるアミューズメントパーク型の温泉施設が、Bad Kissingerに登場しました。

早速行って来ました。最新式の温泉には、感心することしきりです。まず、建物が斬新です。ドイツの各地で70年代、80年代に作られた施設は、その当時の最新の建材(鉄筋やモルタル)を使っているというものの、今となると安普請で惨めです。ここは広いガラスとステンレスを多用しており、シュールでモダンです。

次に温泉の温度が、それまでのドイツの温泉と比べて高くなっています。ドイツでは温泉なのに29度などという設定のところがあり、冬などは寒くて早々に引き揚げてサウナに温まりに行かなくてはなりません。ところがここでは、38度という温かい湯船もあり、ドイツ人もニコニコで入っています。ドイツ人は脂肪が厚そうだから低い温度でだいじょうぶなのかと思っていたのですが、やっぱり同じ人間、「ここはあたたかくて気持ち良い」というドイツ人の声が聞こえて来ました。10ヶ所近くあるプールや温泉の平均温度が32〜35度と、ほんとにドイツにしては記録破りの温かさで、いつまでも浸かっていたい気分です。

温泉プールで大切なのは水圧マッサージです。プールにこの吹き出し口が少ない所では、ブルブルブルと水圧マッサージを楽しんでいるそばに順番待ちの人がいたりして落ちつきません。よくしたもので、こういう仕掛けができそうな所では、打たせ湯、ジャグジー、滝、ジェット流ベットなど、ふんだんに装置を設けてあり、気兼ねなく一人占め出来そうです。

サウナにも細かい配慮がいっぱいです。サウナハウスは、小さい窓とそれまで相場が決まっていたのですが、ここは断熱性の高い開放的なガラスが使われているので、外の景色が充分に楽しめます。ただ、いやがうえにでも目に入ってくる露天風呂を楽しむ人をあまりジロジロ見るのも失礼と思い、いつもながらの全くの裸天国で、かえって気を使います。ちなみにドイツでお決まりの男女混浴です。

生のフルーツ、ハーブを使ったサウナは、いい香りです。シャワーまで、霧のようなものが降って来て、森の香りがします。サウナのあとで浸かる冷水プールは、深い桶のようなところに切り立った梯子で下りるのが普通で、急に落ちたら心臓発作を起こすのではないかといつもいつも恐る恐るなのですが、ここは、カタツムリの殻の形をしたなだらかな階段が続いていて、安心して冷水に浸かれます。

従来型の温泉が、中高年の療養客が主たるお客様なのに対して、ここは若い層の支持も得ています。施設が時代の要請と合わなくなって寂びれていく温泉町がある中で、うまく時流に乗って新しい顧客を開拓しているBad Kissingerは、正しい選択をしたといえます。

画像右上:Bad Kissingerのクアハウスの中庭です。
画像左上:クアハウスは、観光案内所、カフェ、催事場として今も使われています。
画像右中:明るく開放的な屋内プール
画像左下:威風堂々たる外観です。
画像右下:別の角度からみるとこのようなフォームです。


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