■ヨーロッパの冬を彩るお茶会 2004.1.5 update
年末のクリスマスの頃に、何人かのお友達からお茶会やカクテルに招待されました。少し時期がずれてしまったのですが、その時の様子をお伝えします。12月に入ると日が暮れるのが一段と早まり、午後4時ぐらいになるともう街はすっかり暮れなずみます。その暗さに打ち勝つように、ドイツのあちらこちらの家では、アドベント(クリスマス前の待降節)のお茶会やカクテル・パーティーを開いて親戚や友人達と集います。
アドベント(待降節)のお茶菓子。クリスマスのデコレーションのシンボルカラーは、緑、赤、ゴールドです。当日のクリスマスのクッキー、シュトレン、ワイン香辛料ケーキはお友達からのプレゼントです。
ザルツブルグ生まれのメディは、テレビ局で働くキャリアウーマンですが、流れる音楽のようなオーストリアなまりのドイツ語と、はにかんだような笑顔がとてもチャーミングです。きょうは、自宅でのアドベントのお茶会に招待して下さいました。隣のダルムシュタット市のコンサートハウスの総監督だったドイツ人のご主人を5年前に亡くしたメディは、結婚して以来ずっと続けていたクリスマスのお茶会を、「今年」もいつもと同じようにひらきます。白地に緑色のトナカイの絵柄の付いた食器は、クリスマスの時期になったら毎年戸棚から取り出され、クリスマスのお菓子の並ぶテーブルの定位置に収まります。
亡くなられたご主人の関係で、銀行、法律、大学などの分野で広く活躍する親戚や旧友が以前と変わらずにお茶会に集い、フランクフルトの一定の場所にみられる独特のスノッブで、ハイブローな、ちょっと一昔の社交界の雰囲気が漂っています。ドイツでは往々にして文化的、経済的エリートが一体化しており、そのエリート然たるさまは、歴然としています。着るものから始まり、身振り、手振り、話し方、顔つきにも現われます。階級社会は、目に見える形で存在することを知らしめています。そうしてそういう階級が存在することは、ドイツの中で当然視されています。
名刺の交換をしていると、vonのあとに比較的大きな地名の来るような苗字の人もいます。かつてはその地域の領主だった血筋を引く貴族です。法律上は、ドイツには貴族は存在しませんが、社交の席では、いまだに伯爵とか男爵夫人とかいう紹介を受けます。男性が女性に挨拶する時は、女性が握手のために差し出した右手を両手でささげ持って、軽くくちづけをします(そのような仕草をするのであって、実際にはしません)。フランス語の「ベゼ・ア・マン(手に接吻)」がまだまだ現実に生きている世界もあるのです。
今日のドレスコードは「よろしかったらDirndl(オーストリアや南ドイツの民族衣装)で」とあるので、手持ちのものを着ていったところ、メディは大喜びでした。でも、バイエルの民族衣装を着た日本人は実際のところどんなものだったのでしょうか?民族衣装を着ている男性に「よくお召しになられますか?」と聞いたら、「フランクフルトで着ているとバイエルンなみの極右と間違えられるから着ません」という答えで、信じかけていたのですが、これはちょっとした冗談だったようです。
ホット・パンチで体が温まった頃に、メディは、照明を落として、あちらこちらのろうそくをつけて、クリスマスのお話の朗読を始めました。そこにいるだれしもが(私を除いて)小さい頃は親から聞かされ、大きくなってからは自分が子供に語って聞かせたであろう神の御子の生誕のお話でした。そしてその後は、祈りのヨーデルです。3つのグループに分かれて輪唱します。音符付きの歌詞が配られていたので、ドイツ人のものというよりはオーストリアのもののようです。午後4時から始まったお茶会には、50人ぐらいの人が三々五々集まりました。6時ごろ私がお暇した頃も、宴はまだたけなわでした。手作りのクリスマスのお菓子を友に分かち合い、暗闇をろうそくの光で明るくともし、冬の寒さを人と集うことで暖め乗り切っていくアドベントのお茶会に、神のもとで自らの立つ所を確かめるヨーロッパの人々の精神を感じました。
ホット・パンチ用のおつまみ。寒い冬が始まっているので、飲物はホット・パンチです。ドイツ語だと「プンチ」と発音します。この時期、同じように温かな飲物としてグリューワインもあります。おつまみは、プルーンにベーコンを巻きつけて、仕上げにオーブンでカリッと焼いたもの(右側)と、ひき肉が詰まっているパイ(左側)です。両方とも熱々でお味も上々です。
メディが毎年、毎年作っている焼きリンゴのレシピはお母様から。芯をくりぬいた部分には、刻んだレーズンが入っていて、お決まりのシナモンもバターもとても控えめでした。お好みによって、バニラソースか生クリームをかけて。
クッキー。77歳になられるS夫人は、昨今はなかなか存在が稀となりつつある、古き良き時代のドイツ人のオマ(おばあちゃま)です。クリスマスの時期になると、家族のためはもちろん、古くからの友人のためにも、合わせて4キロほどの粉を使ってクッキーを焼きます。どうでしょう、この出来あがりの見事さ。手作りの暖かさと作り慣れている仕上りが微妙にあいまったクッキーの表情は、食べる前から、美味しさを予感させます。
同じく、S夫人作のシュトレン。シュトレンは砂糖やバターを沢山使っているお菓子なので、作ってから数週間は日保ちします。アドヴント第1週目あたりも、お菓子作りにはよいタイミングです。チョコレートに刻んだナッツも入ったどっしりしたケーキで、冬になるとあちらこちらで香り漂うシナモン、グローブがたっぷり、赤ワインもたっぷりのドイツらしさのある重厚なケーキです。冬の凍て付く寒さ、熱いコーヒー、そしてねっとりと舌にからみつく重い生地のケーキという情景がぴったりです。
チョコワイン香辛料ケーキ。これを持っていらしたのは60歳代ぐらいの男性です。手作り、と言っていらしたのですが、ご本人なのか、それともそこにはいなかった奥様なのかわかりません。ケーキにはきっときちんとした名前があるのでしょうが、ご本人に確かめることも出来なかったので分かりません。

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