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ドイツ人の年間最大のイベントは夏のバカンスです。気の早い人は夏休みが終わるとすぐに来年の夏の予約を入れます。どんなにのんびりした家でもクリスマスの頃には、夏休みの計画が家族の話題に上ります。休暇の日数も2〜3週間とたっぷりとって、日常生活から切り放なされた自然と親しむのんびりした時間を確保します。
我家もドイツ人にならって、いざ夏のバカンスに。と言っても悲しいかな日本人、ほんの1週間。行き先も、イタリア、フランス、スペイン、トルコなどなどに太陽を求めて南下するドイツ人を真似て、目的地はスロベニアです。スロベニアといってもあまりなじみがないかもしれませんが、旧ユーゴから独立して、アドリア海に43キロメートルの海岸線を持ち、イタリアとユーゴとオーストリア・ハンガリー帝国の影響も受けている、多層的な国です。
宿泊先は、アドリア海に面したポルトローシェ(薔薇の港という意味)で、1994年に掘り当てた塩泉を使った立派な温泉保養センターもあります。隣町のピランは、宮崎駿の”紅の豚”を彷彿とさせるローマ時代からの歴史を有する港町です。町の真中にある広い広場は、昔の漁港だったところで、埋めたてられていまでは町の人たちの社交の中心地です。昼間の暑さがやっとやわらいだ夜の8時頃から、大人も子供もどこからともなく湧き出して来て、回りにあるカフェで寛いだり、散歩したり、広場でスケボーをしたりしています。
フランクフルトからポルトローシェまでの全行程は、約900キロ、車で9時間の距離です。Dr. Stadtler Easy Tourという道路検索で探すと、ヨーロッパ全土を車で旅行する時の距離と時間がルートマップ付きで出てきます。途中での休憩、食事、バカンス客による交通渋滞やスロベニアの国境越えがあるので、実際には更に時間がかかり、一日で走るにはちょっと辛い距離です。日本からたまたまザルツブルグの音楽祭に来ていた友人一家とオーストリアのGosau湖で待ち合わせて1泊して、次の日にポルトローシェに行くことにしました。
行きはよいよいですが、帰りはもう若くはない夫が一人で運転するにはつらい距離です。そんな時のために、ドイツにはAutozug「自動車列車」という強い味方があり、列車に自家用車ごと積みこんで、人間は客車にのって帰ることができます。長距離の夜行列車なので、寝台車、食堂車もついていて、渋滞を横目にすいすいと目的地までたどりつきます。寝台車は、洗面所付きコンパートメントで、一車両に1ヶ所シャワーが完備しています。サービスは満点で、席につくと乗務員がシャンパンやジュースを運んでくれます。食事が乗車賃に含まれており、ドイツ流のカルテスエッセン(冷たい夕食)か朝食を選択できるようになっています。
食堂車が混んでいたので、私達はコンパートメントで夕食を頂くことにしました。3人前で、籠に山盛りの黒パン、チーズ6個、レバーペースト3個、肉のペースト3個、ジャム3個、バター、それから一人にワインの小瓶が1本ずつ付きます。未成年の娘にはジュースです。食事が終わった頃に、間髪をいれずにコーヒーを持って来てくれました。
オーストリアのVillachで車を積みこんで、夜の8時12分に出発して、フランクフルトの隣町Neu-Isenburgに朝の5時半に着くまで、距離にして770キロ、乗務員が真っ白なシーツで整えてくれた個室三段ベットで、親子三人しりとりをしながらうとうととしていたら、もう目的地に着いていました。ちなみにお値段は、車1台と3人分の乗車券で440Euro(約6万円)でした。
小さい子のいる家族、お年寄り夫婦など、バカンスの最後に無理をして長距離を運転して帰るのは辛いけれど、目的地では車があった方が便利という旅行客にはまさにうってつけの「自動車の列車」です。Villachからは、遠くギリシャやイスタンブール方面にまで行く「オプティマ・エクスプレス」が出ており、24〜28時間にも及ぶ列車の旅に、自家用車と共に旅立ちを待つギリシャ人やトルコ人などの帰省客が一際大きな荷物と沢山の家族、そして車中の食事を抱えて乗り込んでいました。
ヨーロッパはまさに陸続きなのだと感じさせる自動車列車の旅でした。
画像右上、画像左上:オーストリア・ゴーサウ村の景色。
画像中:自動車列車(Villachの駅にて)
画像右下:自動車列車(2階建貨車に積みこみます)
画像左下:スロベニア・ピランの港町
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