■ドイツの暗くて寒い冬にともる光 2002.12.2 update

詩人ゲーテは1832年3月22日のまだ春浅い日に、ワイマールにて「もっと光を!」と言って、この世に別れを告げて逝ったといいます。

ドイツでは、10月の最後の週末に夏時間から冬時間に切り替わって1時間繰り上げられても、11月にはもう日の暮れるのがどんどん早くなっていきます。12月ともなると夕方の4時にはすでに真っ暗になり、突き刺すような寒さもやってきて、この頃が自殺数がもっとも多い時期とされています。あの寒さと寂しさと暗さの中にいると、これから本当に又春が来るのかという心細さにとらわれます。

そんなヨーロッパの冬に心弾ませる輝きをもたらすのが、12月のクリスマスです。人々は、この時期に、明るく楽しい生活を過ごせるような工夫を凝らします。オペラは本格的なシーズンに突入です。教会を使って精神的な色彩の強いコンサートも開かれ、宗教との絆を音楽で厳かに高めていきます。美しく着飾って、光あふれるコンサートホールで、シャンパンやワインを楽しみながら開演を待つひとときは、神と人の創り出した光の世界への誘いです。

伝統的なドイツの町には、町の「おへそ」とも言えるようなマルクトプラッツ(市場広場)が中央にあり、そこにヴァイナハツマルクトとよばれるクリスマス市がたちます。その中央に鎮座するのは、美しい光に彩られたクリスマスツリーで、その輝きと賑わいを求めて多くの人が集います。香辛料がたっぷりの温かいグリューワイン、煎った砂糖掛けアーモンド、ジャガイモ・パンケーキを揚げる匂いなども入り乱れ、眼も鼻腔も刺激されます。

家の中でもクリスマスの準備は着々と進みます。子供達のお楽しみは、12月1日から24日までの日付の付いたアドベントカレンダー(Advent:待降節)です。当日の日付がついた小窓をめくると、中からお菓子や小さなプレゼントが毎日現われる仕組みになっています。一番大きなプレゼントが入っている窓は、もちろん12月24日です。家の中には、アドベントクランツとよばれるリースが飾られます。4本のろうそくが立てられ、クリスマスの前の4週間の毎日曜日にろうそくを1本ずつ灯していきます。モミの木で出来たリースのろうそくに灯る明かりの数が増えるにつれ、クリスマスへの期待が高まっていきます。12月に入ったら、さっそくクリスマス用のお菓子も焼き始めます。我家では焼いて2〜3週間目がちょうど食べごろの星形クッキーとリースを今年は手作りしました。

さて準備も整ったので、ご近所のドイツ人の友人をご招待して、ろうそくの明かりのもとでクリスマスの午後のお茶を一緒にして、闇の中の光をともに楽しみましょう。

画像右上:ベルリンの大聖堂で開かれたクリスマス前のコンサート
画像左上:子供に大人気のアドベントカレンダー。窓を開けると、運が良い日は卵型をしたチョコレートが出てきます。その中に、また小さなおもちゃがはいっています。
画像右下:ろうそく4本を立てた、自作のアドベントクランツです。
画像左下:これも自作です。ニッキが少しはいっていて、真っ白の粉砂糖をまぶしたお星様のクッキーは、ツリーにもつるしてみたくなりました。食べ頃はちょうどクリスマス前あたり。

【短信】11/22、フランクフルトの秋空はどんよりです。日本の澄みきった秋空が懐かしくおもわれます。こちらでは鵞鳥(ガチョウ)の丸焼きのシーズンで、とてもドイツ的だなと思いながら食べています。たぶん、体にたくさん脂を溜めて冬を乗り切る知恵だったのではないかと思います。
ところで、11月19日(火)発売の週刊朝日百科「世界100都市」は51号(ベルリン)から連続して毎週5回、ドイツの各都市を巡ります。52号はハイデルベルク、53号はケルン、54号はハンブルグとリュ-ベック、そして55号はミュンヘンとなっております。各号に私のエッセイが載っておりますので、よろしかったら本屋で立ち読みでもして下さい。


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