■ドイツの保険制度 2009.3.10 update

ドイツには、大きく分けて、公的保険(Gesetzliche Krankenversicherung:GKV)と民間医療保険(Privat Krankenversicherung:PKV)があります。

公的保険は、収入により、毎年支払う額が決まっており、年齢、健康状態、家族構成(結婚しているか、子供がいるか)に関わらず、一定のもの。夫が公的保険に入っていれば、雇い主が掛け金の半額を負担するうえ、家族全員がその保険の対象となり得ます。民間医療保険は、性別、年齢、健康状態により、また、保険範囲をどこまでカバーさせたいかにより、掛け金が異なります。また、家族全員が対象となるのではなく、個人個人が契約することになります。

民間医療保険に加入していると、患者側としては、どうせ保険が支払うから、という考えで、医者から進められる検査を積極的に受けたりする傾向にあり、医者としても、ありがたい患者ということになります。民間医療保険加入者のみを受け付ける診療所もあるようです。公的保険にも民間医療保険にも、それぞれ複数の保険会社があり、選択可能です。

公的保険に入っていれば、医療機関にかかっても、支払うのは、診療所費用(Praxis Gebuehr:プラクスィス・ゲビュアー)と呼ばれるものと、薬代の一部であり、前者は、四半期ごと(1〜3月、4〜6月、…)の最初に診療所に行く度に負担が義務付けられている10ユーロ(一律)のことです。医者にかかるとき、普通は、まずかかりつけの家庭医(ホームドクター)に行くのですが、小児科、産婦人科、眼科などは、直接出かけることが出来るようです。耳鼻科、皮膚科などは、ホームドクターからの紹介状が必要になります。

民間医療保険に加入している場合、子供が多い家族では、掛け金が非常にかさみます。被雇用者であれば、公的保険と同様、雇用者がその半額を負担することにはなりますが、専業主婦や、子供一人一人にかかる費用は、その家族が全額負担することになるのです。勿論、保険会社や、その個人の状況によっても違いますが、例えば、健康な30代半ば、女性である私の場合を見てみると、一年間の掛け金は、約330ユーロ(約38,280円、1ユーロ=約116円換算)であり、更にその上かかる、医療費の自己負担は、年間1,000ユーロ(約116,000円)と高額です。つまり、2009年1月1日から、2009年12月31日までに私が医療機関(および薬局)で支払った金額のうち、1,000ユーロは、自分の財布から出て行くことになります。妊娠、出産などで費用が嵩んだここ数年は、年間1,000ユーロをはるかに超えていたのですが、そうでない状況では、重い病気にかからないかぎり、医療機関にお金をつぎ込んでも、結局医療費は自己負担となってしまうことになります。また、子供が増えると、掛け金も増えるので、掛け金の大きさが気になってきます。

民間医療保険について、もっと分かりやすく見るために、例えば夫40代前半(公務員)、妻30代半ば(専業主婦)、近々子供が3人となる我が家を例に取りましょう。現在加入している民間医療保険の場合、我が家が負担するのは、毎月約780ユーロの掛け金(夫の掛け金の半額+妻の掛け金+子供三人分の掛け金)、つまり、年間9,360ユーロ(約108万円)の掛け金と、実質2,500〜3,000ユーロもの、個人負担金がかかります。もし、公的保険に入りなおせば、掛け金が家族全体で約285ユーロ、診療所費用と、薬代の一部がかかるだけとなります。公的保険の場合に受けられる医療サービスの限界があるにせよ、この金額の差の大きさは、かなりのものです。

健康な大人の場合、仮に風邪が長引き病院に一度行ったとしても、診察代、薬代、血液検査などの費用がかかるだけで、年間1,000ユーロの個人負担額には程遠く、結果、一年分の医療費(薬代を含む)を、保険会社に請求することには至りません。逆に、請求しないことにより、640ユーロ程度のお金が戻ってきます。

妊娠・出産のお陰で、私自身は今まで毎年多額の医療費がかかりましたし、子供が小さいので、定期健診、予防接種、子供特有のちょっとした病気も度々でした。しかし、今後、子供達もたくましく育っていくに従い、特に大きな病気をしない限り、医療費が家計にとって、非常に負担になることは、明らかです。

仮に、私達が、民間医療保険から公的保険に切り替えたい場合、主人は、年間の収入を調整する必要があります。数ヶ月の休暇を取るなどして、収入を一時的に減らすことによって初めて、公的保険に降りることが出来るようです。というのも、公的保険としては、若くより健康な世代が民間医療保険に流れ出て、年齢が上がるにつれて医療費が嵩む世代の多くが公的保険に戻ることを防ぎたいがため、収入がぎりぎりに抑えられない限り、つまり毎月3,900ユーロ以下であることが証明できない限り、公的保険に戻れないようにしたいからです。また、2000年以降、55歳以上の人が、民間医療保険から公的保険に切り替えることを、不可能としています。

ちなみに、病院に行くと、日本では、診察終了後に支払いますが、ドイツの場合は、後日明細書が自宅に郵送され、指定された口座に振り込みます。請求額を一旦振込み、一年分をまとめて、保険会社に請求する、というシステムです。また、ドイツでは、医薬分業が確立されており、医師に書いてもらった処方箋を薬局に持って行き、薬を購入します。薬の領収書は、病院の支払い分とともに、一年分をまとめて保険会社に郵送、保険会社がその内容をチェックし、内容に妥当性のあるものを、銀行口座に振り込んでくれるシステムです。

画像上:ある耳鼻科の待合室内にある、子供のためのコーナー。これは立派なものですが、大概の診療所に小さな遊ぶためのスペースがあります。
画像下:産婦人科の待合室。ここにも、隅に多少の本やおもちゃがあります。


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