■ミルトン・グレイサーの「TOGETHER」 2003.5.7 update

「TOGETHER」〜共に。一緒に。いま、私はこの言葉の意味を改めて噛みしめているところです。

まだ、厳しい寒さが続く2月のある日。私は憧れの人に会う幸運な機会を得ました。その人の名は、ミルトン・グレイサー。ご存じの方もいらっしゃるかと思います。彼はニューヨーク、いや、世界を代表するグラフィックデザイナーで、かの有名な「INY」のロゴを30年以上も前につくった人です。それはいまも広く愛され、親しまれています。また、これは世界で最も模倣されたデザインのひとつだとも言われています。

生粋のニューヨーカー。ミルトンさんはここで生まれ、学び、仕事をしてきました。だから、あの9月11日のテロ事件の直後、に焼けこげた跡を加えた「INY MORE THAN EVER」というポスターをつくり、傷ついた街とその悲しみの深さを表現しました。そして、市民の手によって、それはあっという間に街のいたるところに貼り出されたのです。

あれから、1年半。ミルトンさんはオフィスの一角でいろいろな話しをしてくれました。が、私が、いまだに彼の傷は癒えていないと確信するまでにそう時間はかかりませんでした。それどころか彼は、その傷をさらにえぐられるような気持ちでいたのです。「戦争になるかもしれない。もしそうなったら、結果は神のみぞ知る」大きな瞳から放たれた彼の視線が空を切りました。

「残念なことに我々の大統領は人々の声に耳を貸そうとしない。独裁者がいて、それが脅威であることは確かだ。が、だからといって戦争をしても何の意味もない。戦争をする証拠さえない。いま人々はナーバスになって、自分のことしか考えなくなっている。実に簡単にわがままになってしまう。とても悪い状況だ。だから、いまこの瞬間は、懸命に可能性に向かって戦うしかない。そんなわがままを追い払いたい。だから私は『TOGETHER』といいたい。そうしてミルトンさんは、いま、また新しいポスターをつくっていると教えてくれました。そして、それがもうすぐ「INY MORE THAN EVER」と同様、この街に貼り出されることになるといったのです。

3月の終わり。イラク戦争開戦から約10日後、米英軍はものすごいスピードで首都バグダッドに進軍していました。私が地下鉄のホームでミルトンさんの「TOGETHER」のポスターを初めて目にしたのはそんな時でした。今度は「O」の文字がリンゴになっています。「ビッグ・アップル」というニックネームを持つニューヨークを実に的確に表現したミルトンさんらしいデザインでした。

そんな中のひとつに落書きがありました。「STOP THE WAR !」。それは真っ白な紙にただ「TOGETHER」と書かれただけのポスター。だから、通り過ぎることも簡単です。が、誰かがその前で足を止め、落書きをした・・・・それが、ミルトンさんの願いが伝わった証に見えました。

4月も下旬になり、戦争はあたかも米英の大勝利にて終結したかのように報じられています。が、本当に終わったのでしょうか?満足したでしょうか?これで人々は自分勝手をやめられるでしょうか?そして、ミルトンさんはいま何を感じているのでしょうか?だから、いま、この言葉を皆様にお届けしたいと思います ― 「TOGETHER」。

*もっとミルトン・グレイサーさんについて知りたい方は下記サイト(英文)までどうぞ
http://www.miltonglaser.com


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