■春なのに。 2003.4.7 update

古くから、ニューヨークの春は「セント・パトリックス・デー」と共にやって来ると言われています。今年もまさにドンピシャのタイミングでそれはやって来ました。その日、3月17日は本当に爽快な春の陽気。なのに、図らずも同時に、「何度も愚かな戦争を繰り返す人間はまったく学ばない動物」という悲しい現実をつきつけられ、気分はいまも極寒です。

最初は、ただただその陽気に誘われて、街の中心、5番街を行く「セント・パトリックス・デー・パレード」を見に行ったんです。今年で242回目。これはアイルランドからの移民とその子孫たちによって創られ、愛され、大切にされてきた行事です。バグパイプやブラスバンドの演奏に混じって、9月11日のテロ以降、街の英雄となった警察官や消防士(アイルランド系の人が多いのです)も登場。すると、沿道の観客はますます盛り上がり、その後、アイルランド人らしくアイリッシュ・パブでドンチャン騒ぎをして、年に一度のこの楽しいお祭りを締めくくるのです。

が、これに前後して必ず起こる騒動もあります。この伝統的なパレードはアイルランド系カソリック教徒たちが行っているので、ゲイやレズビアンの人たちが参加できないのです。だから、それに反対する団体が誰でも参加できる、「本当のセント・パトリックス・デー・パレード」を別に主催して、市長を招いたりします。が、それに市長が参加する、しないでまずはもめ、その後「本当の」に参加すると決めた市長が「伝統の」にも行くと表明すると、ゲイの団体から「そんなのボイコットしろ!」と言われたりして、また、ひともめあるのです。ある意味、宗教的事実に鈍感な日本人(少なくともこの私)にはちょっとわかりにくい騒動なのですが、ここではこういうことがよく起こります。でも結局、目的はただ一つ、「民族のお祭りを成功させよう!」ということなんだから、いいじゃん、そんなにもめなくても、と騒動嫌いの日本人気質(少なくともこの私の)も重なって、あまり誉められることではないとわかった上で、どこか白けたりもするのです。

それでもパレードを楽しんでいた頃、すぐそこの国連では、それこそ大変なもめ事が起こっていました。米英によるイラクへの武力行使か、それとも平和的に解決するか。瀬戸際でした。そして、戦争の報。国、人種、民族、宗教、言葉、そして、過去の過ち・・・・ということを何回踏まえても、何度乗り越えても、人類共通の目的、「世界平和」は実現できないのね・・・・という想いがどんどん膨らんでいきました。例えば、ここアメリカで「新移民」とされるアイルランド系の人たち。彼らがこのお祭りを心から大切にしてきた理由の一つに、自分たちがかつて乗り越えてきた歴史、そして、そのために受けた差別や偏見などがあったと理解できます。ちなみに、アメリカの伝統的な価値観や信条、風俗などは先住のイギリス系プロテスタントたちが作り上げたものとされています。・・・でも、それでも、ゲイはだめ!といまだにもめるわけで。しかも、こういうもめ事は何もアイルランドの人たちに限らないわけで・・・・。で、またしても人間は愚行に走ったわけで・・・・。

それでも少しだけ希望を持つならば、「何でこんな世の中になってしまったんだ」ということを振り返る作業がいまはいいかと思い、アメリカと移民、アイルランド人というキーワードがまずは挙がったので、その歴史を実に簡単に振り返ることのできる映画を以下にご紹介します。もしもこれで、パンドラの箱をあけてしまったアメリカとそれを止められなかった「自分たち」が見えてくれば幸いです。

・・・・だから、春なのに、悲しいもめ事が多すぎます。

★いますぐ、簡単に、アメリカ史などがわかるかもしれない映画たち
(観る順番も、このまま行くことをお勧めします)

(1) 「遙かなる大地へ」(1992) 監督:ロン・ハワード
19世紀末に西アイルランドから来た移民が、俗に言う「アメリカン・ドリーム」を手にするお話。その実態とは?

(2)「ギャング・オブ・ニューヨーク」(2002) 監督:マーティン・スコセッシ
レオ様ばかりに気を取られていてはいけません。彼のキャラこそ「新移民」のアイルランド人。ダニエル・デイ=ルイス演じる「ビル・ザ・ブッチャー」はその「新移民」を忌み嫌う先住民の役回り。

(3)「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002/公開中)監督:マイケル・ムーア
これをドキュメンタリーだと勘違いしてはいけません。とにかく、観て!

画像右上:五番街のメロトポリタン美術館前を堂々と行進していく彼らの姿は壮観です。伝統のバグパイプ演奏。この音色がアイリッシュ・パレードの象徴です。
画像左上:おじいちゃんたちも楽しくマーチ。
画像右下:大人も子供も緑のものを身につけてパレードを見に行くのが習わしです。おばあちゃんのこのフェイス・ペインティングもいイケてます。
画像左下:ここMcSorly's Old Ale Houseは1854年から営業を続けるニューヨーク最古のアイリッシュ・パブ。きっと「ギャング・オブ・ニューヨーク」たちも足を運んだはず。オリジナルビールは$3.50から。この日の入店は2時間待ちでした。15 East 7th Street (2Ave.と3Ave.の間) T:212-473-9148

これはおまけ! まだ、みんながパブで盛り上がっているころ、国連の近くの公園でブッシュ大統領と遭遇。地球のボールを手にして、「これは俺もの! It is mine!」と言ってました。

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