番組内容
スペイン  マドリッド「ラストロ市場」
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■マドリッドのマヨール広場

ヨーロッパとアフリカ大陸をつなぐ国、スペイン(エスパーニャ王国)。ヨーロッパ南西部、イベリア半島の大部分を占めます。「レコンキスタ(国土回復運動)」は、スペイン観光ではたびたび出てくるキーワードです。イベリア半島は8世紀の初め以来、イスラム教徒の支配下にあり、キリスト教徒はわずかに半島北西隅を占めるにすぎませんでした。11世紀後半になるとカスティリャ王国とアラゴン王国が成立、その勢力を拡大していきます。そして13世紀後半には、イスラム教徒は半島南部のグラナダに孤立。1492年のグラナダ陥落でレコンキスタは集結しました。この戦争は中世イベリア半島史の主軸であり、以後のスペイン、ポルトガル両国の近代史にも大きな影響を投げかけました。日本との時差はマイナス8時間(サマータイム期間はマイナス7時間)、日本からの直行便はなく、ヨーロッパの主要都市へ飛び、マドリッドやバルセロナ行きに乗り換えることになります。所要時間は乗り継ぎを入れて15〜18時間ほど。通貨はユーロで、1ユーロが約154円(2006年10月現在)。

メセタと呼ばれる高原の台地に位置し、国際色豊かなスペインの顔であるマドリッド。世界を旅するツーリストたちにとって一度は訪れてみたい憧れの街です。人口はおよそ316万人で、スペインの政治経済の中枢を担っています。16世紀、当時のフェリペ2世が宮廷をトレドから移したことで発展がはじまりました。マヨール広場は、国王の宣誓式や、婚礼から闘牛まであらゆるイベントが行われていた場所。この街のシンボルといわれるプエルタ・デル・ソル、「太陽の門」広場。ここにはスペインの中心であることの0キロ表示と、小さな村からはじまったことを示す「熊と山桃」の像があります。この熊はマドリッドの紋章になっています。マドリッドのどの通りを歩いても、賑わいが絶えることはありません。カフェにウィンドーショッピング、世界各国から訪れた人々の声が聞こえてきます。セルバンテス没後300年を記念して建てられた、ドン・キホーテの像があるスペイン広場。やせ馬ロシナンテにまたがるドン・キホーテは、世界の人から愛されているヒーローです。
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■伝統ある蚤の市「ラストロ市場」

めざした市場は、このマドリッドの中心地にありました。観光地のなかに立つ蚤の市、「ラストロ市場」。日曜日と祝日の朝から、カスコロ広場から伸びる坂道を中心に開かれる、18世紀にはじまった伝統ある市場です。26の通りと3つの広場からなり、まるでひとつの街のよう。とにかく人の多さにビックリさせられます。メインの通りは人、人、人で溢れ、歩くのもたいへんなほど。近くの通りや公園など、1,000以上の店舗が並びます。衣類、アクセサリー、民芸品からガラクタまで、生鮮食料品以外は何でも売られています。
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■漢字のTシャツ屋さん

にぎやかな人の声にワクワクしてきました。メイン通りから歩いてみましょう。いきなり見慣れた文字が目に飛び込んできました。漢字のTシャツ屋さんです。このところヨーロッパで人気。でも、意味が分っていてプリントしてあるのでしょうか? 日本の文化が好きだという店主に訊いてみると、「意味はわかっているよ。作りたい漢字をインターネットで検索し、自分で作っているよ」とのことでした。オススメは「和」と「寿」。渋いですね。値段は1枚12ユーロ(約1,848円)、2枚だと20ユーロ(約3,080円)。

次はブレスレットのお店です。使われているのは銀ではなく、ロジウムという銀白色の金属(白金族元素のひとつ)。この金属は肌アレルギーにならないし、色落ちもせず、買ったときの状態がずっと続くのだそうです。ひとつ2ユーロ(約308円)なら安いですよね。値段の割に豪華に見えてキレイです。これ、お土産にいいな。海が好きな仲間にイルカのデザインなんていいかも。
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■伝統菓子バルキージョ

蚤の市だから、いろんなお店が並んでいます。カホンという打楽器。裏を見せてもらったら箱の中に糸が張ってあって、叩くと共鳴して音が鳴るのだそうです。元々はペルーのものですが、さまざまなリズムに合わせられ、フラメンコにも使われるそうです(125ユーロ=約19,250円)。自分で作ったものから仕入れたもの。あと、どこで手に入れたものか分らないものまで並んでいるのが、蚤の市の特色。お菓子も売っています。実においしそう。バルキージョという伝統のお菓子。ウエハースをチョコでコーティングしてあります。お兄さんのスタイルもきまっていて、なかなかのもの(服もマドリッドの伝統だそうです)。マドリッドのオシャレな駄菓子です(1ユーロ=約154円から)。
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■興味があるならアランダ・デ・ドュエロに行けば

しかし、この市場はどこまで行っても続いていて、しかも人通りが絶えません。ひとつ通りを抜けたと思ったら、また別の通りに店が並んでいます。こちらの広場にもまたお店が。この辺りは、骨董品やガラクタ品が広げられているエリア。19世紀のものだそうですが、掘り出し物があるかもしれないし、値段もあってないようなものだから値段交渉するのも醍醐味。感じのいいアンティークな品はあるかな? 銀製小箱(150ユーロ=約23,000円))もかわいいし、本物の銀ならお買い得かも。こっちは安めの品で10ユーロ(約1,540円)。旅の記念に買うにはいいかもしれません。

歩いていたら、またまた別の広場に出ました。ここでは古着のお店が人気です。山積みの服が1ユーロ(約154円)から。こちらのアンティークのお店にはちょっと高級そうな品が置いてあります。古い壺が5,000ユーロ。日本円でおよそ77万円。高っ! 観光客に加え、蚤の市好きな地元のひとが、どんどん集まってきます。露店だけでなく、ちゃんとした店構えのアンティーク店もあります。店内には、あまり見たことがないデザインの陶器が並びます。如雨露(じょうろ)やワイン入れ、花瓶だそうです。「こういったものは私の家にも何個かあるわ。スペインの家庭には今でも1から2個あるわ。興味があるならアランダ・デ・ドュエロに行けば! 水差しなどを作っているところがあるわ」と女主人。ということで、明日、スペインの陶器作りを見せてもらうことにしました。楽しみです。
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■ガリシア風タコ料理とシシトウ炒め

広い市場を歩き続けていたら、もう1時。どおりでお腹がすいてきたわけです。市場の脇の通りに、この時間から開いている人気のレストランがあると聞いて行ってみました。レストラン「ア・グディニャ」はタコの料理で有名。スペインの北部ガリシア地方の、郷土料理を食べさせてくれます。茹でているタコを見せてもらいましたが、立派なものです。これは食べがいがあります。ガリシア風タコ料理はジャガイモといっしょに食べるのですが、味付けはパプリカの粉、オリーブオイル、岩塩と超シンプル。でもタコの甘味と歯ごたえがもう最高です。シシトウの炒め物には注意が必要。ときどきハンパじゃなく辛いものがあります。でも味は最高! 正直、スペインは何を食べてもハズレはない。24ユーロ(約3,696円)。
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■ラジオDJの松嶋公美さん

午後6時過ぎ、この街でDJをしているという日本人女性がいると聞き、会いに行ってみました。そのひとは、スペイン在住11年の松嶋公美さん(39歳)。FM局ラジオ・ミルクロで、週2回「ソナ・ハポン(日本的)」のDJを努めています。日本の音楽・社会・料理などを幅広く紹介する番組で、彼女が企画書を持ち込み、2003年にスタートしました。構成、取材、編集を自ら行っています。リスナーの多くは日本を知りたいスペイン人。コミュニケーションの手段に“話す”ということが好きという松嶋さんですが、「この番組を通じて、日本人を身近に感じて欲しい」と頑張っています。

愛媛出身で、エフエム長崎に入社、さまざまな番組のパーソナリティーを務める。たまたま観光で訪れたスペインに魅せられ、1995年に渡西、旅行業務などの仕事に就きました。スペインはリズム、人間性が合っており、自分に余裕ができたのだそうです。1998年、同い年のフランシスさんと結婚。デレシア地区に自宅はあります。スペインを訪れるひとへ〜「スペインはよい意味で期待を裏切ってくれる。イメージだけでない、違うスペインを発見して欲しい…」という松嶋さんでした。
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■土の塊がフェリクスさんの手で美しい器へ姿を変える

翌朝、スペインの陶器作りを見せてもらうために出発。マドリッドの隣の州へ2時間のドライブです。おかげで途中に、きれいな日の出を見ることができました。着いたのはアランダ・デ・ドゥエロ市。山間に広がるのどかな町です。陶器作りを見せてくれるフェリクス・マルティネスさん(70歳)のお宅は集合住宅の中にありました。「ブエノス・ディアス(おはよう)」とフェリクスさんが出迎えてくれました。現在、奥さんのサトゥールさん(70歳)と二人暮らしです。

自宅から通りをはさんだ向かいに、陶器作りの工房はありました。最初に見せてもらったものは土。フェリクスさんは、この地元の土に強いこだわりを持つ陶芸家。地元の土を使った粘土作りから、作業ははじまりました。大きな水槽の中に土を入れ、かき混ぜ溶かしていきます。「こうやって粘土を創れば陶器の出来が違う。自分で納得した粘土でしか作らない。売り物では好きなようには作れないよ」とフェリクスさん。陶器作りは12歳の頃にお父さんの手伝いではじめ、父親が亡くなった1978年に代を継いだそうです。1961年に結婚、子供はふたり。地元の土と、昔からの伝統の作り方で作るフェリクスさんの陶器は有名。これまで何度もテレビや雑誌などの取材を受けている、地元でも有名な陶芸家なのです。
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■完成したフェリクスさんの水差し

土を溶かした水から、不純物を取り除きます。たまった土を、夏は8日間、冬は30日間、天日で乾燥させれば、陶器に適した粘土になります。この土地の土は鉄分が多く、高温で焼いても型崩れしないのが陶器に向いているそうです。「伝統を守ることは重要だよ。ひとつのことを絶やさず続けてそれを評価することが大事なんだ」とフェリクスさん。いよいよ自慢の粘土で、陶器作りがはじまります。この日作るのは、水差し。土の塊が、フェリクスさんの手で美しい器へと姿を変えます。一日に作れるのは精々10個。そのため、注文でスケジュールがずっと先まで埋っています。たくさん作るよりも、たとえ少なくても自分の気に入ったものを作るのが、フェリクスさんのモットーです。

器は天日で干し乾燥するのを待つ。そして、十分乾いた後、釉薬が塗られる。そしていよいよ窯の中へ。975℃を超す窯のなかで、美しい色と強度を身にまとう器。焼き上がりは10時間後。こうして完成したフェリクスさんの陶器は、クリスタルのような光沢が美しい。他にもさまざまな陶器を作っています。「私はこの仕事で生活しているから普通のひとよりも強くこの伝統を残したいと思っている。この手作業の陶器は芸術だと思うよ」とフェリクスさん。

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■孫アナ(19歳)、妻サトゥール(70歳)、孫ソニア(11歳)

仕事が一段落し、ようやく昼食。いい香りの煙を吐き出す竃。そのなかで子羊が焼かれていました。岩塩で味付けして蒸し焼きにするだけの、この地方の伝統料理。皮はパリパリで、なかはジューシー。羊の肉汁がたまらない一品です。孫たちも呼んで、みんなで食事。スペインでは、お昼の食事を大切にゆっくり摂ります。それが習慣。陶器作りは長男のホセさん(34歳)が継いでくれます。誇れる仕事と大切な家族。仕事はいつまで続けるのですか?という問いかけに、「ずっと続けるよ。神様がお迎えが来るまでね。仕事というより趣味として続けたいよ」と答えてくれました。

マドリッドの街で出会った、ラストロ市場。そこは毎週日曜日と祭日に姿を現す巨大な蚤の市。店先に並ぶ個性豊かな品々と、あやしいアンティークの輝き。マドリッドという都市の活気と、この土地に息づく伝統文化を十分に味あわせてくれる。そんな市場でした。
余白用

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