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オーストリア ザンクト・ペルテン「ドームプラッツマルクト」
![]() ■バロック調の建物と緑が混在する、ザンクト・ペルテン ドナウの流れと、アルプスの雄大な山々が連なる緑溢れる国、オーストリア共和国。国土面積は北海道とほぼ同じ大きさです。気候は大きく三つに大別されます。東部は大陸的なパンノニア低地気候、アルプス地方は降水量が多く、夏が短く冬が長いアルプス型気候、その他の地域は中部ヨーロッパの過渡的な気候です。日本とは1869年(明治2年)に「修好通商航海条約」を締結して以来友好な関係にあり、とりわけ音楽方面での交流が盛んです。成田空港からウィーンへの直行便があり、所要時間は12時間ほど。通貨はユーロ、1ユーロが約154円です(2006年9月現在)。 首都ウィーン、目の前に広がるのは緑豊かな美しい街並みです。人口は約160万人。東京都と同じく23区からなります。街のなかでひときわ目を引くのが、シュテファン寺院。高くそびえる塔と、美しいモザイクの屋根が印象的です。寺院の周辺は旧市街地と呼ばれる、最も華やかなエリア。歴史的建造物や名所、ブランドショップが並び、連日世界中からの観光客で溢れています。またウィーンは、いわずと知れた音楽の都。街全体から、なんだかクラシック音楽の調べが聞こえてきそうな雰囲気です。 ウィーンから、西へ1時間車を走らせると…今回の旅の目的地、ニーダー・エースターライヒ州の州都ザンクト・ペルテンです。人口は約5万人。バロック調の建物と緑が混在する、風光明媚な街並み。建築様式などは、本当に美しいのですが、観光客とすれ違うことはほとんどない、穏やかな田舎町です。 ![]() ■ドームプラッツマルクト ザンクト・ペルテンの中心地の大聖堂前広場で開催される青空市場「ドームプラッツマルクト」。この町では毎日どこかの広場で朝市が開かれていますが、なかでも一番歴史が古く規模が大きいのがこの市場。設立はなんと1053年。毎週木曜日と土曜の週二回、朝6時から正午まで開催されます。店舗数は約100。「美味しい場所との出会い」というスローガンが示す通り、売り手の90%が生産者で、取れたての新鮮な商品が並べられます。スーパーマーケットよりも安くて新鮮なために、多くの地元住民が訪れます。「ものは新鮮だし、売っている人たちも親切で、会話も楽しめるわ。何よりも外国のものではなく、オーストリアのものが買えるわ。とにかく美味しいのよ」と評判も上々です。 どうやら今は、フルーツが美味しい時期みたい。特にリンゴが人気のようです。ドナウ川のおかげで、夏は暑くても涼しい風が吹き、果物の生育を助けるのだそうです。ただ美しいだけじゃなく、そんな恩恵をもたらしているんですね。リンゴ1kg1.3ユーロ(約200円)から。「すべて有機栽培で私が作っているのよ。アレルギーのひとも増え、食べたいものも食べられない。何かかわりになるものを!と思ってはじめたわ」とお店のひと。今、オーストリアでは、小さな子供を持つ若いお母さんたちに、有機栽培のものは人気なんです。 このボトルは何でしょう? ヴァス・イスト・ダス(これは何ですか)? 自家製の果実酒。家で作って週末ここで売っているのです。フルーツが美味しく育つので、蒸留酒も豊富な種類が作れるそうです。香りはとてもよいのですが、何といってもアルコール度数が高い。強いお酒です。これはシュナップスと呼ばれ、主に油っこい食事の消化を、助けるためにいただくのですが…見ているだけでも酔っぱらっちゃいそうです。6ユーロ(924円)から。 ![]() ■飾り用のカボチャ 何やら行列を発見しました。皆さんのお目当ては、カボチャです。オーストリアのひとはカボチャが大好きで、旬の訪れを心待ちにしています。毎年食べる量が増えているそうで、店のひとにとっては嬉しい状況が続いています。。食用カボチャ1kg1.5ユーロ(約231円)から。飾り用のカボチャもあります。オーストリアではごく一般的だそうです。こちらはほとんどが種で、実の部分はほとんどありません。ひとくちに「カボチャ」といっても、いろいろあるんですね。1個1ユーロ(約154円)。 またまた行列が出来ているお店を発見。美味しそうなソーセージやハムが並んでいます。こちらは、「最もキレイな店鋪」という賞を受賞した、市場でも評判の人気店でした。「この賞を取れたのは、売場をキレイにして衛生面に気を遣ったからよ。受賞はお客様から選ばれたことだから、常に心がけていたことが認められて嬉しかったわ」と店のご主人。お客さんが並んでも買いたい人気の品が、自家製のサラミソーセージ。有機農法の餌を使った安全安心の逸品です。 オーストリアでもポピュラーなものを見つけました。ザウアークラウト、キャベツの酢漬けです。1kg1.5ユーロ(約231円)から。酸っぱいけれど天然発酵だから、体にはよいそうです。売り場のなかに、オーストリアを代表するものが並んでいます。オーストリアは、品質の高いワインの生産国で、なかでも80%が白ワインなんです。グリューナ・フェルトリーナは、白ワインの代表的な品種です。ワイン愛好家たちからは、現代的な白ワインの理想像と称されています。白ワインには甘いものもあるけれど、オーストリアの白ワインはさっぱりしています。ワイン作りを見たければポイスドルフに行くとよいとのこと。せっかくなので、明日、ワイン作りを見学することにしました。 ![]() ■ボリュームたっぷりの「ノイハウザーの秘密」 のんびりと市場の散策を終えたお昼過ぎ。みなさん早々に店じまいを済ませ解散。市場は、跡形もなくなってしまいました。ちょうどお腹もすいたことだし…。市場から程近い場所にある、ショッピングモールに人気のレストランがあるというので行ってみました。家族連れから、若者同士、お年寄りまで、幅広い年代の方が食事を楽しんでいます。これは期待できそうです。レストラン「ノイハウザー」のオススメは、「ノイハウザーの秘密」。料理が出てきて納得。一人前でこのボリュームは、秘密にしたくなりますよね。ワンプレートに4種類のお肉、揚げ物、バターライス、野菜炒めまで。お腹いっぱいです。御馳走さまでした。13.9ユーロ(約2,140円)。 ![]() ■シェーンビュール城 ランチの後、車で30分程の場所にある、メルクにやって来ました。人口約6,000人のドナウ川沿いの町です。ザンクト・ペルテンと同じく、15?16世紀のバロック調の建物が美しく、静かな町並みが広がります。ここでのお目当ては、ドナウ川で最も美しい世界遺産のヴァッハウ渓谷を楽しむドナウ川クルーズ(メルク?デュルンシュタイン)。さっそくチケット(16.5ユーロ=約2,549円)を買って出発です。シェーンビュール城、「銀色に輝く帯」と呼ばれるヴァッハウ渓谷、アックシュタイン城、デュルンシュタインの聖堂参事会修道院教会など、見所いっぱいの約1時間半の遊覧でした。 ![]() ■22ヘクタールという、広大なブドウ畑 翌朝。ドームプラッツマルクトのワイン店主から教えてもらった、白ワインの生産者の元へ向かいました。その町は、ガイドブックには登場していない、地元のひとだけが知る穴場だそうです。期待に胸が膨らみます。首都ウィーンから車で1時間。ポイスドルフに到着。のどかな田舎町ですが、実は人口の8割がワイン作りを行う、いわば町全体が「ワイン工房」のような場所。さっそく町一番の生産者を訪ねました。快く出迎えてくれたのは、ウォルフガング・リーダーさん(43歳)。22ヘクタールという、広大なブドウ畑のオーナーです。 ![]() ■白ワイン用のブドウ、グリューナ・フェルトリーナ 栽培されているのは、市場で見かけた白ワイン用のブドウ、グリューナ・フェルトリーナでした。さっそく、収穫を見学させてもらうことに。畑にはご近所さんが手伝いに来ていました。ワイン農家が多いこの町では、それぞれ助け合いながら、作業を行うのが当たり前なんです。ポイスドルフはオーストリアの北に位置し、朝晩の気温の差が南ほど大きくないから、ブドウがよく熟し味が濃いものになるのだそうです。 ![]() ■伝統的なブドウの絞り方 リーダーさんの家は、1746年から代々続く、伝統のワイン農家。子供の頃から当たり前のように畑仕事を手伝い、大学で専門知識を習得。17年前に畑を受け継いでからも、無理な品種改良などはせず、この地に適したブドウを育て、ワインを作ることをモットーとしているそうです。1995年に結婚、子供は3人。丹精込めて作られたブドウは、まさに太陽と大地の宝石。美しい…の一言です。摘みたてのブドウを、傷付けないように運びます。 「これから伝統的なブドウの絞り方を見せるよ。こちらのふたりの娘さんと私の子供たちが足で踏むんだ」とリーダーさん。本来は機械でブドウを絞るのですが、私のために伝統的な衣装を着て、今ではめったに行わないという昔ながらの作業を見せてくれるのです。踏む時は互いに手を組んでダンスを踊るかのように踏みます。協力して仕事を行うことに意味があります。ワイン作りは、ひととの絆も深めてくれるんですね。爽やかな香りを放つ果汁が絞れました。 ![]() ■絞り汁をタンクに入れ、12℃の温度で2〜3週間発酵 リーダーさんの自宅は、ロッジ風の温かな雰囲気。キッチンでは奥さんのヒルデツレトさん(50歳)が、ランチの準備をしています。今からお昼ご飯が楽しみです。そんな自宅のお隣に、工房とセラーがありました。絞った果汁は、ここのタンクに入れ、徹底した温度管理のもと、発酵させていきます。発酵具合を見せてくれました。もうワインになっているんでしょうか?「まだ糖分が完全には分解されていないから少し炭酸が入っているよ」とリーダーさん。まだまだ、途中なんですね。お味の方は、満足できるよい味だそうです。 充分に発酵が進んだら、いよいよ樫の樽に入れ、2週間から6ヵ月熟成。そうして、ワインが完成するんだそうです。14種類の白ワインを生産していますが、ポイスドルフの白ワインはドライでフルーティー、酸味と甘味の調和がとてもよいそうです。ピュアゴールドの優しい輝きを醸し、思わず見とれてしまうほど美しい白ワイン。大地と伝統の恩恵…。時間と手間と愛情をかけてこそ誕生する逸品です。ワインセラーも見せていただきました。ここには、およそ800本が今も大切に保管されています。一番古いものは1948年物とのこと。 ![]() ■ホイリゲ「フェルトリーナーホム」でランチ お昼過ぎ。リーダーさんの経営するホイリゲ「フェルトリーナーホム」で、ランチをいただきます。ホイリゲとは、ワイン農家が経営する、小さな居酒屋。新酒のワインと、ちょっとした料理が楽しめるお店です。奥さんが先程作っていた料理がテーブルいっぱいに並んでいます。豚肉のワイン焼き、スープ、サラダ、ポテト、これぞまさにオーストリアの家庭料理。作業を手伝ってくれたご近所さんと、家族と、もちろん御自慢のワインも忘れずに。ホッと心が安らぐ、団欒のひとときです。「これはポイスドルフ全体が思っていることになるけど、1870年にはイギリスでも、ここのワインは認められたよ。私たちも頑張って有名にしたいよ」とリーダーさん。 午後5時。牛肉、ジャガイモ、スープ、茹でカボチャで夕食です。「子供たちは仕事を受け継がせる対象でもあり、成長させていく楽しみもあるよ。どんなことを考えても常にひとつだと思うよ。辞めようと考えたことは一度もないよ。今、とても満足しているからね」とリーダーさんは言います。リーダーさんの未来を語る、キラキラとした笑顔を見ていると、ふと一瓶のワインの中には、すべての書物よりも多くの哲学が詰まっている…という、先人の言葉を思い出しました。ワインが持つ多様な味や香り。それは、たくさんの人々の人生や、笑顔、愛情がぎゅっと詰まっている証しなのかもしれません。ザンクト・ペルテンの市場は、確かに素敵な素敵な「美味しい場所との出会い」をもたらしてくれました。 |